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「新卒の3割が3年で離職」に歯止めをかける、日本型インターンの真価

2019年06月03日 06時00分更新

文● 小林祐児(ダイヤモンド・オンライン

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インターンシップ
インターンシップは「入社後の活躍」に繋がっているのでしょうか? Photo:PIXTA

 6月となり、経団連の「就活ルール」のもとでの2020年卒業生を対象とした選考が解禁された。昨年からの「就活ルール」廃止の議論に揺れた学生の就職活動だが、今年はスケジュールも維持され、特に大きな混乱はなく就職活動が行われている。そうした就活業界で、近年、最も明確に変化したものといえば「インターンシップ(以下、インターン)」だ。つい10年前にはかなり意識の高い学生が参加するイベントだったが、今では学生の約半数以上が参加する。多くの学生にとって、3年時に何かしらのインターン選考に参加することが就職活動のスタート、という流れがここ数年で一気に定着し始めた。

独自進化を遂げる日本のインターンシップ

 日本企業が実施するインターンは世界の先進各国と大きく異なり、独特の発展を遂げていっている。欧米型インターンでは、半年から1年以上にわたる有償のものが主流であり、明確に「就職のための経験」を積む機会である。海外の多くの国では未経験の新卒を一括に大量採用する習慣はなく、あくまで空いたポジションに経験者を雇うのが基本だ。そこで、海外の大学生はリアルな業務経験を積むために、学生時代にこぞってインターンに参加する(その報酬があまりに薄給であるがゆえに、しばしば社会問題化するのだが)。企業サイドから見れば明確に「採用活動兼、入社前教育」という位置づけだ。

 一方で、日本のインターンは、採用活動の解禁日を定めた就活ルールとの整合性をとろうとする関連省庁の指針の元、「採用活動」ではなくあくまで学生のための「就業体験」の場である、とされている。また、経団連は5日間以上のものだけをインターンと呼ぶルールを提示していたが、2017年からその日数制限が廃止され、実質的な企業説明会であるワンデー・インターンが激増した。こうした「表向き」と「実質」の乖離もあり、日本型インターンは「ただの説明会にすぎない」「就業体験にもならず、役に立たない」「入社後の仕事とひも付いていない」としばしば批判されている。

日本型インターンは「役に立たない」のか

 とはいえ、学生生活から社会人へのトランジション(移行)において、日本型のインターンが全く機能していないということではない。「日本型インターン」と一口で言ってもこの数年で多様化が進んでおり、大手企業を中心に相当の人手とコストをかけて、いくつかのタイプのインターンを同時に実施しているのが現状だ。大手企業は、少人数に対して数ヵ月の実務型インターンを実施し、ワンデーの説明会タイプのインターンを全国各地で数十回行い、その中で数十人規模の企画プロジェクト型インターンも行う…といった具合に、複数同時並行でプログラムを走らせている企業が多い。新卒採用は職種非限定が中心であり、インターン内容と入社後の業務がほとんど結びつかないという意味では確かに日本独特のスタイルではあるが、参加者の増加とともに、多様化と発展の渦中にある。

 パーソル総合研究所が昨年行った調査データから、2018年卒の新入社員が参加したインターンのタイプを見てみると、次のようになった。(パーソル総合研究所 「企業インターンシップの効果検証調査」、新卒入社後3年以内の者10750人、就業継続者1998人に対するインターネット定量調査。2018年10月実施)

 実質的な企業・業界説明の座学のみのものが34.0%、企画・提案タイプが29.7%、業務のシミュレーション・実習などが37.3%と、バランスをとりながら多様化していることがわかる(どのインターンでも多少の企業説明が入ることを考えれば、「企業の説明」が8割近いのは当然である)。

 こうした日本型インターンに課題があるとすると、多大な負荷の割に、企業にとって「なんのために行うのか」がクリアになっていない点だ。「採用のため」のインターンは表立って明示されないものの、先述の調査では、ここ3年間の新卒入社者のうちインターン参加企業に入社した者は20%を超えた。すでに相当数がインターン参加企業へ入社しているのが現実だ。こうした日本型インターンの今後を占う意味でも、インターンが学生と企業双方にとってどんな意味を持っているのか、クリアにしておくべきだろう。そこで今回は、先程の調査データを用いてインターン参加者の「入社後」の効果を分析してみた。ここでの問いは、「インターンは、入社後の離職防止につながっているのか」、さらには、「入社後の活躍につながっているのか」だ。

離職率が低く、入社後の評価も高い
インターン参加者

 分析の結果、インターンの入社後の「定着」、そして「活躍」の実態が見えてきた。まず、「定着」の側面から見てみよう。大卒入社者の3割が3年以内に辞める、というのは長い間知られている事実だ。昨今、労働力不足による売り手市場を背景に、企業人事の課題としても急浮上している。

 下図に示したとおり、確かに「インターン非参加者」は3年以内に34%が退職しており、“3年3割離職”が裏付けられた。その一方で、「インターン参加した企業への入社者」の離職率は16.5%。およそ半数にとどまる。また、インターン参加した企業ではないものの、「同じ業界」の企業への入社者では23.1%と、やはり離職率が低めのであることが明らかになった。

 もちろん、インターンに参加する学生のほうがそもそも優秀だ、ということは考えられる。そのため、新入社員を対象に大学偏差値や成績、志望度などの影響を取り除いた上で、就業継続の意志を分析したが、やはりそこでも人材定着の効果は確かめられた。

 また、定着だけではない。入社後の人事考課(人事評価)を見てみても、1~3年平均を100としたとき、インターン参加者のほうが3年で平均11%ほど高く、目標達成度合いなどのジョブパフォーマンスの面でも統計的に有意な差が見られた。

 どうやら、インターン参加者のほうが企業に定着し、さらにはパフォーマンス、企業での評価も高くなっている。なぜこのような差が現れているのだろうか。

なぜインターン経験が定着・活躍を導くのか

 多くの新卒社員を待ち受ける「わな」として、入社後に判明する「こんなはずじゃなかった」というギャップ=リアリティ・ショックがある。インターン経験後の入社者は、そうでない新入社員と比べて、このリアリティ・ショックが明確に少なかった(下図)。インターン参加者は、その企業における自分の適性や、必要なスキルのほか、社風などについて、非参加者よりもずっと理解できている。つまり、組織や業務について入社前に正確なイメージがつかめる。つmり事前準備(学術的には「予期的社会化」と呼ばれる)が整っていることが確かめられた。こうした事前イメージのすり合わせの程度が高いほど、定着と活躍につながっていたのだ。

「人」によって入社し、「人」によって辞めていく若者たち

 この話題を、「人」の側面からもう少し掘り下げよう。さきほどのリアリティ・ショック=「こんなはずじゃなかった」の中でも、早期離職において最も影響するものが「人」、端的にいえば「上司や同僚との人間関係」である。このことは国内でも幾つかの研究で指摘され、私の経験的にも納得度が高い。日本企業では、学生時代の専攻と仕事がほぼ結びつかず、仕事内容が配属されるまでわからないことも多い。そうしたとき、入社後にスムーズに働けるか否かを分けるのは、具体的な業務内容よりも「配属先の上司と馬があわない」「同僚とうまくコミュニケーションがとれない」「会社の飲み会についていけない」など、上司・同僚といった職場での「人」であることが多いのだ。

 この「人」の問題に対して、インターンは、どのように機能しているだろうか。インターンでは、当然ながら、参加中に既存社員と多く接することになる。企業内の若手の優秀層がインターンに協力することも多い。また、参加学生にはその後数ヵ月にわたり企業からのフォローアップが行われる。特に企業から目をつけられた学生には、積極的に連絡がとられ、社員やリクルーターとの人脈もでき、コミュニケーションを重ねていく。そのフォローアップ期間が、「どういう人たちと働くことになるのか」「職場の雰囲気はどうなのか」といった、パンフレットやHPでは伝わりにくい、総合的な事前イメージのすり合わせとして機能し、入社後のリアリティ・ショックを防いでいると考えられる。インターン参加者と非参加者の「離職理由」データで最も差が出たのも、「人間関係」の項目だった。インターン参加者は、「人」を原因とする早期離職が、特に少なかったのだ。

 同時に、そうした入社前の人とのつながりは、その企業への「入社意欲」そのものも左右している。インターンを通じて「(その企業の)社員が優秀だと感じた」学生が、最もその会社への入社志望度を向上させていた。つまり、日本においては、離職の鍵を握るのも、入社志望度を高めるのも、ともに「人」の要素が重要であり、日本型インターンは入社後の仕事との結びつきは希薄だが、その代わり、「人」を通じて学生と社会人へのトランジションをスムーズにすることに寄与していると考えられるのだ。

 このように、「人」を通じて入社し、「人」を要因として辞めていく、独特の日本型雇用のあり方が、インターンの発展においても独特の色をつけ始めている。売り手市場が続き、こうした入社後の効果が各企業でも認識されるにつれ、企業はますますインターンを通じた採用に力を入れていくだろう。しばしば「ガラパゴス」と揶揄される日本の雇用慣行下では、やはりインターンも特殊な発展を遂げていくのか。今後も動静を注視する必要がある。

(パーソル総合研究所 主任研究員 小林祐児)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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