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8K技術とVR AR 3Dの時代が見えた「NHK技研公開2019」

2019年05月31日 12時00分更新

文● 折原一也 編集●南田ゴウ

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2030~2040年ごろのテレビ放送は
ARとVR、インテグラル3D技術を活用するものに

 技研公開2019で最も力を入れていたテーマが「2030~2040年ごろのメディア技術 ダイバースビジョンだ」。現在は8K放送の普及など高画質化の進化が続いているので、「次は16K? 32K?」と予想する方もいるかもしれない。NHK技研が想定しているのは、テレビ放送のまったく違う方向の進化。それがARとVR、そしてインテグラル3D技術を用いたテレビのワクに収まらない視聴体験だ。

2030~2040年ごろのメディア技術「ダイバースビジョン」

 NHKがダイバースビジョンを構成するのがドーム型ディスプレーやヘッドマウントディスプレー(HMD)、さらにARグラス、そしてインテグラル3D(裸眼3D)の技術。ただし、“2030~2040年ごろのメディア技術”なので、基本はイメージの展示だ。

 たとえば、ドーム型ディスプレーやヘッドマウントディスプレー(HMD)では高精細VR映像コンテンツの制作として、3台の8Kカメラによる180度映像を撮影し、没入感と臨場感を感じる広視野の映像を体験できるようになる。ただし、出展では来場者向けの疑似体験として、8台の4Kプロジェクターによる巨大スクリーンで上映されていた。

2030~2040年ごろのドーム型ディスプレーや、ヘッドマウントディスプレー(HMD)による視聴を想定

8台の4Kプロジェクターによる180度の広視野の映像を再現

 ダイバースビジョンではARグラスも活用される。出展では、ARグラスを装着した状態でテレビ画面を見ると「チコちゃんに叱られる!」でチコちゃんが画面から部屋の中に出てきたり、「みんなで筋肉体操」の武田真治さんが部屋でスクワットをしたり、同じ番組を見ている家族がARで部屋の中に現れたりと、未来的な体験がステージデモと画面を通して解説されていた。

ARグラスを通した映像の見え方を画面でデモ

 唯一、具体的な製品に近い形で出展が行われているのがインテグラル3Dだ。3Dと聞くとすでにブームが去ったというイメージがあるかもしれないが、NHKが研究を進めているのは、裸眼3D技術のインテグラル3Dだ。VRもARもゴーグルが必須と考えると、裸眼のインテグラル3Dにかかる期待は大きい。

 今回出展された新技術は「視点に追従するインテグラル3D映像」で、ウェブカメラで視聴者の瞳の位置をトラッキングして3Dの要素画像を合成。これにより、水平領域の視野角は従来比約3.3倍(81.4度)、垂直を約6.6倍(47.6度)に拡大。

 457.7ppiの高画素と焦点距離の長いレンズアレイにより、3D映像の光線密度を水平・垂直とも従来の約2倍になり高解像化が行われた。インテグラル3Dは視野角の位置に向けた光線が必要なため画質を落とすほかなかったが、1人用に特化することで画質を向上させる研究というわけだ。

「視点に追従するインテグラル3D映像」では、視点追従による裸眼3D映像の画質を向上

 今回はテレビ放送の未来に絞ってレポートしたが、NHK技研による研究内容はほかでは見ることができない、テレビ放送の未来を垣間見ることができる貴重なものだ。「NHK技研公開2019」は6月2日まで一般公開されているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてほしい。


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