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すてきナイス、怪情報飛び交う創業家トップ「即」辞任の波紋

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新たに社長に就任した杉田理之氏
5月20日、新たに社長に就任した杉田理之氏。粉飾決算疑惑を問い詰める記者たちを前に「当社としては正常な取引だった」と主張。就任の抱負にあたって、難局を「誠心誠意で乗り切っていく」と述べた Photo by Rika Yanagisawa

建築資材流通大手のすてきナイスグループで粉飾決算の疑いが明らかになり、創業家のグループCEO、平田恒一郎氏が辞任した。問題の全容判明を待たずして、30年にも渡ってトップに君臨した平田氏が突然、辞任したことに、社内は動揺。取引先からは怪情報が流れるほど波紋が広がっている。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

「当社としては問題があったとは認識していない」――。建築資材流通大手であるすてきナイスグループ本社に5月16日、横浜地方検察庁と証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反の疑いで強制調査に入った。4日後の同月20日、同社はトップ交代を発表し、社長に就任した杉田理之氏は粉飾決算疑惑を問い詰める記者たちを前に一貫してこう主張した。

 一部報道によると同社は2015年3月期の有価証券報告書においてペーパーカンパニーを使って架空の不動産取引を行い、業績を水増しした疑いが持たれている。杉田社長は「関係資料が押収されて手元になく確認できない」と繰り返すばかりで、全容は未だ分かっていない。

 連日の報道で取引先や株主、従業員やその家族にも動揺が広がっており、「一日も早い解決に向けて、経営体制を一新するのが賢明だと判断した」と杉田社長。創業家出身の2代目トップだった平田恒一郎会長兼CEOと、日暮清副会長は全ての役職を辞任し代表権を返上した。前社長の木暮博雄氏は代表権を返上したが取締役に残った。

 同社は一風変わった社名だが、住宅・建設関連業界では優良企業として通ってきた。1950年に関東で先駆けて住宅用木材の市場取引を始めた後、建築用資材全般を展開し、大手の地位を築いた。その後、建材流通に次ぐ2本目の柱として住宅事業を展開。マンションや戸建て住宅の分譲、管理やリノベーションなど幅広く手掛けるようになる。

 建材流通ではジャパン建材を中核事業会社に持つJKホールディングスが売上高3589億円の最大手で、2位にナイスグループ、3位にジューテックホールディングス(同1598億円)が続く。

 直近の19年3月期決算は売上高2492億円、営業利益14億円、経常利益8億円、最終利益3億円。セグメント別に見ると売上高は建材事業が1714億円、住宅事業が637億円。営業利益は建材事業が28億円、住宅事業が3億円である。

 問題視されている15年3月期では、売上高2357億円、営業利益10億円、経常利益4億円、最終利益4億円。売上高のうち建材事業が1729億円、住宅事業が545億円。営業利益は建材事業が29億円、住宅事業は3300万円にとどまっている。その他の資本や負債、キャッシュフローに特段、怪しげな点は見当たらない。

 ただ、「近年は第3四半期まで赤字、通期で黒字化するパターンを繰り返していた」と複数のアナリストが指摘する。実際、15年3月期から19年3月期まで、第1、第2、第3四半期は営業利益、経常利益、純利益とも赤字で、第4四半期に多額の利益を計上することで通期の営業利益、経常利益、純利益とも黒字を確保している。捜査当局もこの点に着目しているもよう。これに対してナイス側は「住宅、特にマンションは年度末に完成してお客様に引き渡す案件が多く、どうしても計上時期が3月末に集中する。それが第3四半期までと第4四半期の差だ」と説明する。

 しかし住宅開発・販売に関わる企業が皆、そのような決算かというと、首を傾げざるを得ない。ナイスではそうした業績の波を平準化するため、住宅事業の中でも戸建て注文住宅を伸ばす方針だが「まだ道半ばである」(幹部)のだという。

創業家2代目トップに問われる説明責任

 強制調査の一報以降、株価は大幅下落。株主や取引先からは、「平田(前)会長は何をしているのか」との声が相次ぐ。創業者の長男で、1988年に社長に就任して以来、30年にも渡ってグループを牽引してきた平田氏は、従業員の前にも姿を見せず、沈黙したままだ。

 そもそも住宅事業は、祖業に続く新規事業を育てようと平田氏の肝いりで始まった。

 業界の中でも先駆けて免震あるいは国の規定を上回る強耐震マンションの開発に取り組んだ。これが東日本大震災以降、東北や首都圏で完売が続くヒット商品となり、このノウハウを生かした戸建ても展開。同社は建材・住宅設備機器メーカーの売れ筋を知り尽くしており、それらを組み合わせて設計、大量購入することで最高級性能ながら低価格な住宅を売りにしてきた。

 平田氏は2012年に弊誌のインタビューで「主婦が冷蔵庫にあるもので手早く美味しい料理を作るように、良い家をいかに賢く作るかは工夫次第である」と、流通から製造小売りへ拡大展開する独自戦略に自信を見せていた。

 さらに東北や九州で地産地消の復興住宅も展開。地元の材木店などと合弁で販売会社を設立し、資材は地元のものを優先して扱ったり、各地で施行勉強会を開き、中小工務店をサポートする体制を整えたりもしていた。

 平田氏といえば、都内ホテルの大宴会場で毎年開催してきた「新春経済講演会」が名物となっていた。LIXILやTOTO、パナソニックなど資材・住宅設備メーカー大手の社長をパネリストに招き、平田氏自ら経済情勢と業界動向を講演するもの。有力工務店の幹部なども集結し、業界でも最大規模の会合である。

 目下、同社の株式時価総額は株価下落により約66億円(5月21日時点)に大幅縮減し、残された幹部の間では、「このままではどこかに買収されてしまうのではないか」と不安視する声が漏れ伝わる。また、新卒採用の時期であることから、幹部は「競合に採用で負けることや、人材流出が心配だ」とこぼす。

 平田氏の突然の辞任で求心力がなくなることも懸念されている。平田氏の長男、潤一郎氏はかつて同社取締役に名を連ねていたが、17年にひっそりと辞任した。ある経営幹部によると、渡米や留学などが退任の理由で、現在はグループ経営に全く関与していないという。一方で、取引先の間ではもっぱら、「潤一郎氏がひっそりとグループを去ったのは、今回の件に何か関係しているのでは」とうわさされている。

 子息の怪情報が流れるのも、名実ともにグループ中興の祖であり、リーダーシップを発揮してきた平田氏の動きに業界が注目しているからだ。6月末に開催予定の株主総会に出席する予定もないという(2%強の株式を保有する大株主でもある)。このまま説明責任を果たさないつもりなのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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