このページの本文へ

セブン永松新社長が断言、「ニーズがなければ24時間はやらない」

2019年05月22日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
永松文彦セブンーイレブン・ジャパン社長
インタビューに答えるセブンーイレブン・ジャパンの永松文彦社長 Photo by Toshiaki Usami

24時間営業など加盟店の負担が注目されているコンビニエンスストア業界。4月に就任した最大手・セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長が週刊ダイヤモンドのインタビューに応じた。24時間営業について、加盟店の減収リスクに触れながらも「お客様のニーズがなければやらない」と明言した。一方、ドミナント(集中出店)方式による既存店への影響は「瞬間的、短期間」だとして今後も必要だとし、加盟店から徴収するロイヤルティーの料率見直しは否定した。週刊ダイヤモンド6月1日号(5月27日発売)の第1特集「コンビニ地獄 セブン帝国の危機」では、コンビニ業界が抱える構造的な課題にメスを入れる。(ダイヤモンド編集部 岡田悟)

――コンビニエンスストアの24時間営業などによる加盟店の負担について、本部が十分に対応しているのか、社会的な批判が強まっています。業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)のトップとして考えを聞かせてください。

 コンビニという形態がスタートした四十数年前とは時代背景が違います。わが社は当時から「変化への対応」と「基本の徹底」というスローガンで取り組んできました。

 しかし今では、少子高齢化による人手不足という課題があり、今後は1店ごとの商圏に合わせたやり方で商売ができるように加盟店を支援すべきだと考えています。24時間営業も、「お客様のニーズがあればやる、なければやらない」が基本的な考え方です。

時短希望オーナーへの
“門前払い”は撤回させる

 ただ、ニーズがあっても人手不足で24時間営業ができない、といった事態もあるでしょう。そのための加盟店のためのセーフティネットの整備をしないといけません。省人化して業務ができる仕組みの開発もやり続けます。

――24時間営業をやめ、深夜に閉店する「時短実験」に対する考え方を教えてください。

 すでに加盟店の20店が実験を始めており、さらに(5月20日時点で)150店が実験参加を希望しています。実験では、深夜の閉店による加盟店の売り上げや利益への影響、従業員のシフトの組み方、開店と閉店の作業、これまで深夜にやっていた作業を日中にどうするのかなどを実験において検証したいと考えています。

――4月4日の就任会見後の囲み取材で、「時短営業がうまくいかないことを明確にするためにテストをやっている」と発言されました。真意を教えてください。

 そういう主旨で言ったつもりはありません。私が言葉足らずであったとすれば、明確に否定します。

――本部に実験参加を希望すると伝えても、まともに取り合ってもらえず、事実上の門前払いをされたと複数のオーナーが証言しています。

 もしそれが事実なら、次回のOFC会議(加盟店に経営指導する本部社員を一堂に集めた本社での会議)で明確に否定します。もし当社の社員が、本当に加盟店にそう伝えていたなら、上司に訪問させて撤回させます。

――時短実験に参加できると決まった加盟店でも、深夜に納品される商品の荷受けのために従業員を1人置くよう本部から要求されるケースがあります。すると、従来ワンオペの店にとっては時短のメリットが出ません。その一方で、発言力の強いオーナーがすんなり参加を認められるケースもあり、本部の対応に統一感がない印象を受けます。

 商品配送の順番を変えることで時短実験に対応できる店と、そうでない店があるので、精査しているところです。店ごとに差をつけているわけではありません。加盟店と協議のうえ、実験に参加していただくか判断していただきます。発言力の強い店だから参加を認めるといったこともありません。もしあるとすれば、OFC会議でやめるよう言います。
 
 ただ、事業意欲が旺盛な加盟店もたくさんいます。深夜に閉店すると売り上げが減るわけですから。事業家として苦渋の決断でしょう。それでもいいですか、ということはしっかり確認しないといけません。

見切り販売の制限は
「一切ない、明確に否定する」

――今後、長い視点で考えると、実際に時短する加盟店が広がれば、物流のあり方を根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

 店舗に合わせて物流を変えていくのは当然で、物流ありきではありません。時短実験の開始に合わせて、物流やそれ以外も含めて、毎週のように社内で協議しています。

――加盟店が時短営業に踏み切れない要因として、ロイヤルティーが24時間営業の時と比べて上がってしまうことがあるのではないですか。

 24時間営業でロイヤルティーを2%減らしたのは、その分だけ負担がかかるためです。それは今も変わらないでしょう。同じ料率にしたら、公平感がなくなるでしょう。

――消費期限が迫った食品を購入する消費者に3~5%のポイント還元する仕組みを、今後全店で広げる方針です。加盟店にとって、廃棄ロスを減らす効果は十分ですか。

 ポイントをつけてお客様に優先的に買っていただければ、廃棄ロスが減り、オーナーにとっても収益面でメリットがあるでしょう。今は試験段階で、店による差がありますが、効果は出ています。

――2009年に公正取引委員会はSEJに対し、消費期限直前の加盟店独自の値下げ、いわゆる「見切り販売」を禁じてはいけないと排除措置命令を出しました。しかしその後もセブンの加盟店では、ほとんど行われていないのはなぜですか。

 なぜ、と問われましても、われわれが価格を拘束しているわけではありません。オーナーのみなさんが、もし値下げをすれば、同じ商品を定価で買ってもらえなくなることへの不安感があるからではないでしょうか。

――複数のオーナーからは、排除措置命令の後でも、本部から見切り販売をはっきりとやめるようには言われないものの、「禁止はしませんが推奨しません」「上司がいい顔をしない」などと暗に不快感を示され、見切り販売をしないよう示唆されるとの証言が出ています。本部と加盟店との力関係からすれば、加盟店は大きな圧力だと感じているのではないですか。

 それは明確に否定したいですね。実際に見切り販売をしているオーナーはいらっしゃいます。地域を担当する幹部も把握していますし、それが問題だとは言っていません。もし仮に、見切り販売によって加盟店の利益が悪化しているようなら、本部社員が指摘するかもしれません。

 しかし、それ以外で(見切り販売をやめさせるよう言うことは)絶対にありません。明確に否定します。店の経営にとっていいことを本部の経営指導員(OFC)は言いますから。暗に(やめるように)も言いません。価格をいくらにしろとは、我々からは言えないわけですから。(本部が価格を指定するとの認識は)大いなる誤解ですよ。もし、言っていたら、とんでもないことです。

“仕入れ強要”との加盟店の受け止めは
コミュニケーションの問題

――見切り販売をする際、原価割れの値引き分が加盟店負担になることに同意させる書面にサインさせていませんか?サインしなければ、同意せずに原価割れ分を負担しなくてもいいという状況です。

 サインしていない加盟店が若干名おられますが、同意していただけるよう協議をしている状況だということなんじゃないですか。オーナーは原価で仕入れているわけだから、そこからの値引き分はオーナーに負担していただくことで、公正取引委員会も了解の上、99%超のオーナーが賛同しています。

――今後始まる予定のポイント還元と、加盟店の自主的な見切り販売は両立しますか。

 ポイント還元は価格とは直接関係ありませんし、あくまでも本部負担の販売促進です。なので、併用されても問題ないと思います。

――仕入れについても見切り販売と同様、本部から増やすよう強く迫っている実態はありませんか。月次引出金(オーナーの手取り)を増やすため、月末に商品在庫を減らしたところ、本部から減らさないよう強く指導されたという話を、あるオーナーから聞いています。

 一般論として、在庫を絞ったことで「機会ロス」(欠品や品不足による売り逃がし)が起きていれば、在庫を増やしましょうというアドバイスはします。

 月末在庫を一時的に減らしても、その月の月次引出金は増えますが、翌月以降、仕入れる量が増えるので、月次引出金は増えなくなります。機会ロスにもつながるので、得策ではないと本部は言います。そうした言葉が独り歩きしたのではないでしょうか。コミュニケーションの問題ではないかと思います。

――しかし、弁当やおにぎりといった消費期限の短い商品についても大量の仕入れをさせているから、売れ残りにより、加盟店の廃棄ロスも多くなるのではないですか。

 機会ロスと廃棄ロスは裏腹の問題で、オーナーには身の丈に合った経営をしていただくことが重要です。オーナーの資金力を考え、その範囲で予算を組むべきです。私自身も現場にいて、そういう考えでやってきたつもりです。機会ロスありきではない。でも、お客様にご迷惑をおかけしない限りで品ぞろえし、努力していくということではないでしょうか。

――しかし本部のOFCにも、加盟店にいくら仕入れさせるかといったノルマが課せられているのではありませんか。

 ノルマはありません。OFCはオーナーとの人間関係が重要です。例えば暑い日には「梅干しのおにぎりが売れるから、仕入れを増やしましょう」とは言いますよ。でも、コミュニケーションがうまくいかず、「増やしたと言われた」という印象が残ったのかもしれません。

――しかし、OFCは既存店の売り上げをアップさせなければならず、現状、加盟店にたくさん仕入れさせても本部は廃棄ロスの一部しか負担しない仕組みだからこそ、そうした問題が起きるのではないですか。

 もし、OFCが発注を勧めた商品が売れ残れば、次から発注してもらえなくなります。OFCもアドバイスに失敗して悩むんですよ。もし、数字ありきだと加盟店に受け止められているとすれば、真摯に反省し、OFCの力量を上げていかないといけません。

 現在の仕組みは、オーナーが地域のお客様の事情を一番よく知っていて、本部が市場全体の状況を知っている、互いに得意分野があるという前提で成り立っています。だからこそ、オーナーの権限で発注をする今の仕組みがベターです。本部も廃棄の15%を負担しています。それ以上負担割合を増やす考えは、現時点ではありません。

ドミナント方式の既存店への影響は
「瞬間的、短期間」で今後も必要

――ドミナント方式(特定地域への集中出店)について、永松社長は既存店を重視し、新規出店を抑制する方針を示していますが、今なおこうした出店が続いており、不満の声を上げる加盟店もあります。

永松文彦
ながまつ・ふみひこ/1980年3月セブン-イレブン・ジャパン入社。2004年5月業務本部長代行、執行役員、05年5月業務本部長、12年1月営業本部オペレーション本部千葉ゾーンマネジャー、17年12月執行役員人事本部長、18年3月取締役、19年3月取締役副社長営業本部長、オペレーション本部長、4月社長就任 Photo by T.U.

 ドミナント方式を当社は「まちづくり」と呼んでいます。地域のセブンーイレブンが1店舗では売り上げは上がりませんが、複数あればお客様の認知度が上がる。専用工場を近くに作り、いい商品を供給できるほか、他チェーンが進出しにくくするといった長期的なメリットがあります。

 店を増やすだけでなく、既存店のより良い立地への移転や、駐車場の拡大などを含めて進めます。今のやり方が必要だと思います。

――しかし、消費者の間でのセブン-イレブンの認知度はすでに十分です。例えば、東京・東日本橋のセブンの元オーナーの妻が4月に記者会見し、自店の目の前のローソンの閉店後、他のオーナーがセブンを出店して売り上げが下がったと訴えました。同様に、近隣へのドミナント出店で自店の売り上げが減ったとの訴えを、取材で多く聞いています。

 瞬間的に、短期間に売り上げがマイナスになったケースはあります。しかし、まず契約期間の15年というスパンで加盟店の繁栄を考えれば、商圏を守る必要があります。もし売り上げが下がれば、何らかのフォローをします。

 私がかつて、初めて赴任した福島県会津若松市では、当時三十数店だった店舗数が今は70店を超えています。売り上げが伸び、セブンのシェアも維持されています。私の実家がある東京都国分寺市では、40年前にあった店舗がなくなっています。加盟店のみなさんの安心感のために、そうした投資が必要だと思います。

――会津若松市は面積が広く、三十年数年前と比べて消費者のセブン-イレブン、コンビニそのものへの認知度ははるかに上がっています。そうした地域ではなく都心において、それこそ目の前に同じチェーンが出店するようなやり方が、加盟店にとって将来の安心につながりますか。

 ですから、今まで以上に新店が出店する条件を精査していきます。今期は前期より出店数を減らしています。

ロイヤルティー料率は下げない
投資の原資として必要

――4月25日に加盟店の負担軽減のための行動計画を発表されました。その後開かれたオーナー募集の説明会で、本部社員が参加者に対し「ほとんどの店は従業員がそろっている」「たくさん品ぞろえをすることが、従業員の採用に関わる」と説明しています。こうした説明は、問題ではありませんか。

 説明内容については事実かどうか確認できていませんが、「ほとんどの店が」という個所については、事実には当たらないと思います。実際には、従業員の退職しやすい店としにくい店があるのは確かですので、加盟店に対して定着のためのアドバイスは今後していきます。

 品ぞろえについては、店頭の商品があまりにも少なくて売り上げが低ければ、間接的に採用が難しくなることはあるかもしれませんが、採用と直接関係するとは思いません。

――加盟店の負担軽減のために、現在、粗利額に応じて累進的に5~7割を徴収しているロイヤルティーの料率を引き下げるべきではないか、との指摘があります。なぜ下げないのですか。

 今期(2020年2月期)は1450億円の投資をしますが、うち8割は既存店に充てます。今後継続して伸び続けるための投資は必要で、その原資として今の料率でのロイヤルティー収入は重要です。

 これまでも17年9月からのロイヤルティーの1%特別減額や、廃棄ロスの15%負担などの加盟店支援をしてきました。現時点でロイヤリティーの料率を下げる考えはありませんが、さまざまな形で加盟店支援は続けます。

――今後は人口減少によって市場が縮小し、従業員の不足も深刻化するでしょう。加盟店側が持たなくなり、店舗規模を縮小するという選択肢はありませんか。

 それは、増やすか減らすかよりも、お客様のニーズがあるかないかに尽きます。

 数十年前は、自動車で遠くから来た若者がコンビニで買い物するのが一般的でした。今では主要な顧客は50代で、家の近くのコンビニまで歩いて行って買い物するので、立地も過去とは全く違います。

 新たなニーズが見つかれば店は増えるし、見つからなければ店は減るということです。

批判的なオーナーとのひざ詰め対話は
まずは手順が大事

――行動計画では、永松社長ら幹部が加盟店オーナーとひざ詰めで対話をすると表明していますね。

 会社の方針を決めるのは役員ですから、毎月、全店は行けませんが、いろいろな意見をいただき、生のオーナーの声を聞き続ける。そうすることで情報への感度が上がると思います。今すぐやろうと、先週から行っています。ここが原点だと思います。

――大阪府東大阪市の加盟店オーナーで自主的に時短営業を始めた松本実敏さんが、永松社長と対話したいとツイッターで表明しています。コンビニ加盟店ユニオンに加盟しているオーナーなど、本部に厳しい声を上げているオーナーと対話する意向はありますか。

 条件がそろえば、ですね。まずは地域の担当者や担当幹部が話をして、円滑にやるのが手順として大事だと思います。意見が対立することがあっていいと思います。話し合いをすることが大前提です。

 団体交渉は、リーダーシップのある人物の声に意見が引っ張られる傾向があるため、1人の意見に集約するのは正しくありません。個店ごとに対話をするのがよいと考えます。

 間違えてはいけないのは、社会で言われている本部への批判は、加盟店の間では必ずしもマジョリティではないということです。批判的でないオーナーもすごくたくさんいるんですよ。

 ある一部分のオーナーの声がクローズアップされると、それは違うものになってしまいます。加盟店に個別に柔軟に対応しつつ、全体がよくなるように手を打つことも重要です。

――例えば、深夜ワンオペで店に出ているようなオーナーとも今後お会いになりますか?

 もちろん。それをやらないと意味がありません。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ