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エッジサーバー「ThinkSystem SE350」も披露、「Lenovo Accelerate '19」レポート

レノボ「Transform 3.0」ではエッジソリューションを強化へ

2019年05月17日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 レノボは2019年5月13日~15日までの3日間、パートナーと顧客を対象とした年次イベント「Lenovo Accelerate '19」を米国フロリダ州オーランドで開催した。今年のテーマは「Leading Intelligent Transformation」だ。

 レノボでエンタープライズビジネスを担うデータセンターグループ(DCG)は、今回のイベントを通じて「Transform 3.0」というビジョンを打ち出し、クラウドにつながるエッジにフォーカスしたビジネスを重視していく姿勢を明確にした。レノボ エグゼクティブバイスプレジデント兼DCG担当プレジデントのカーク・スコーゲン氏と、DCG チーフカスタマオフィサーのウィルフレド・ソトロンゴ氏が、その狙いなどを語った。

レノボ エグゼクティブVP兼データセンターグループ担当プレジデントのカーク・スコーゲン(Kirk Skaugen)氏。エッジサーバー「ThinkSystem SE350」を披露

過去2年間の“Transform 1.0/2.0”の実践で高いビジネス成長を実現

 Lenovo Accelerateは、昨年までパートナー向けイベントとしてオーランドやラスベガス開催していた「Accelerate」と、顧客向けイベントとしてニューヨークで開催していた「Transform」という2つのイベントを統合し、今年から新たなかたちでスタートしたイベントだ。基調講演のほか、多数のブレイクアウトセッション、展示エリアが設置され、レノボの最新技術と製品/ソリューションについての紹介と解説が行われた。

 イベントには、エンタープライズ事業を担うDCGとPC事業を展開するインテリジェントデバイスグループ(IDC)双方のパートナーと顧客が集まり、世界42カ国から1871名の参加者となった。日本からは約10人が参加したという。

 レノボDCGでは2017年に「Transform 1.0」を、2018年に「Transform 2.0」を打ち出していた。そして今年は「Transform 3.0」を新たに掲げる。

 「Transform 1.0では『ThinkSystem』と『ThinkAgile』という新たなサーバーブランドを発表し、市場平均の1.4倍となる成長を遂げることができた。続く2018年のTransform 2.0では、ストレージに関する大きな発表を行った。その最大の成果がネットアップとの戦略的アライアンスであり、これによりストレージ市場の92%をカバーし、市場平均5倍の成長を遂げた」(スコーゲン氏)

2017年のTransform 1.0、2018年のTransform 2.0に続き、今年は「Transform 3.0」を宣言した

 さらにスコーゲン氏は、過去2年間の“Transform”の成果をそのほかの観点からも示してみせる。

 たとえば第三者機関による顧客満足度調査では、パフォーマンス、TCO、顧客サポートなど22項目にわたる広範な調査において、北米では18項目でトップ、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ)およびAPAC(アジア太平洋)では22項目すべてでトップに立ったという。さらに22カ国750人を対象とするCIO調査でも、x86サーバーで最も信頼性が高いのがレノボだとする評価が上がっていると胸を張る。

 「(レノボのサーバーでは)99.999%の可用性を実現しており、年間ダウンタイムは2分以下にとどまる。他社のサーバーとは圧倒的な差があり、メインフレームに匹敵する可用性を実現している」「データセンターサーバーに求められているのは、高いパフォーマンスと、より多くのストレージ/コンピュート/メモリリソースの搭載、そして管理の簡便性であり、そうした要求に応えることができるのがレノボの強みだ」(スコーゲン氏)

 さらに「他社の2倍」という幅広いワークロードに対応していること、スーパーコンピューター領域ではTOP500ランキングのうち最多の140台にレノボサーバーが採用されており、2位のベンダーに56台もの差を付けていること、トップ25の大学、研究施設で稼働するサーバーのうち17組織がレノボサーバーであることなどを挙げた。

 「2年前、スーパーコンピューター領域でナンバーワンのベンダーになると宣言したが、その目標を前倒しで実現できた」(スコーゲン氏)

スコーゲン氏

 売上高については、2018年度の第2四半期(2017年7~9月期)までは前年割れが続いていたが、それ以後は前年実績を大きく上回っており、2019年度第1四半期(2018年4~6月期)には前年同期比68%増という高成長を遂げた。最新四半期(2019年度第3四半期、2018年10~12月期)も31%の成長となっており、Transform 1.0/2.0の実践がビジネス成長につながっていることを強調した。

 「DCGのビジョンは、最も信頼性が高いデータセンター製品プロバイダーになることである。質を重視するのがDCGの基本戦略だ。それに向けて、多くのパートナーとの協業も図っている。チャネルと競合せず、強い信頼関係を築いていることも、成長において欠かせない要素である」(スコーゲン氏)

サーバー、ストレージに続いて「エッジ」にフォーカス

 Transform 1.0のサーバー、Transform 2.0のストレージに続いて、今回発表された「Transform 3.0」とはどんなものか。スコーゲン氏は「Transform 3.0では、エッジへの取り組みを重視する」と説明する。これから数百億台規模のIoTデバイスが接続され、エッジ市場が大きく拡大していく中で、そこにしっかりとフォーカスしていく戦略だという。

 今回のAccelerateでは、エッジ領域における代表的製品として「ThinkSystem SE350」が紹介された。同製品は、今年2月にスペインで開催されたMWCの会期中に初めて映像が公開され、この間、その映像が65万回視聴されるなど大きな話題を集めたものだ。今回は実際の製品が披露された。

「ThinkSystem SE350」エッジサーバー

 ThinkSystem SE350は、1Uサイズの半分幅(ハーフラック)というコンパクトな本体サイズながら、エンタープライズサーバークラスのコンピュート能力やストレージ性能を実現したエッジ向けサーバーだ。小売店舗の限られたスペースや、工場の壁面などに設置ができる。6つのアンテナを搭載可能で、Wi-Fi/LTE回線との接続のほか、将来的には5G回線との接続も視野に入れている。そして「xClarity」によるリモート統合管理も実現している。

 さまざまな環境に設置されることを前提として、耐環境性能も強化されている。0~55℃までの環境で動作を保証しており、ホコリなどにも強い設計を採用。さらに地震や何らかの衝撃による振動を感知した際にはハードディスクにアクセスしないよう制御することでデータを保護する。

 スコーゲン氏は、ThinkSystem SE350は「エッジに求められる機能と信頼性を実現したサーバーだ」とアピール。さらに今後、同製品に続いて「エッジ領域におけるポートフォリオを拡張していくこと」と語った。

SE350は、ハーフラックサイズの筐体でエンタープライズサーバークラスの処理能力を持つとアピール

Transform 3.0ビジョンでは「3つのS」を重視

 Transform 3.0ビジョンに基づく施策においては「3つのS」を重視すると、スコーゲン氏は説明する。

 ひとつめは「スマートIoT」だ。IoTの世界ではPCやタブレット、スマートフォン、キオスク端末、POS端末といった多様なデバイスやセンサーがネットワークにつながるが、今後は特に「マシンとマシン」のつながりが増えていく。さらに5GやNFVともつながることで「新たなビジネスチャンスが訪れるだろう」と語る。

 2つめが「スマートインフラストラクチャー」である。病院や工場、街などをスマートな環境に進化させるため、エッジに最適なインフラストラクチャーを提供していく方針であり、その第一歩が今回発表したThinkSystem SE350だと語る。

 そして3つめが「スマートバーチカル」である。ヘルスケア、建築、製造、小売、物流、交通、教育といった業種ごとにエンド・トゥ・エンドのソリューションを用意する。ここにはレノボが新たに提供するエッジカメラなどのエンドポイントデバイス、POS、エッジサーバー、クラウドサーバー、ストレージなどを組み合わせて、業種ごとに最適なエッジソリューションを提供するという。

 さらに、もうひとつDCGの取り組みとして重要になるのが「Lenovo TruScale Infrastructure Services」である。顧客オンプレミス環境に設置されたハードウェアを“月額払い”で利用可能にするサービスだ。

 「使用したぶんだけ支払えばよいモデルで、初期投資額の最小化、ニーズ変動に基づくリソース拡大、投資リスク低減などが実現する。さらにはセキュリティコントロールやメンテナンス、管理のサービスもレノボから提供できる。競合他社の提案がリースモデルに近いものであるのに対し、TruScale Infrastructure Servicesは、Think SystemおよびThink Agileなどを利用しながら動的なリソース変更に対応でき、コストメリットと柔軟性において他に類を見ないものになる。これによって、CAPEXからOPEXへの移行を促進できる」(スコーゲン氏)

 レノボの調査によると、3分の1の企業がOPEXモデルに代えたいとしており、さらに3分の1の企業も、OPEXとCAPEXの共存モデルにしたいと考えているという。

 TruScale Infrastructure Servicesは、まだ採用実績は少ないが、南米の政府機関や欧州の大規模システムインテグレータに導入されているという。「TruScale Infrastructure Servicesのメリットを、いかに多くの顧客に認知してもらうかが、今後の鍵になる」とスコーゲン氏は語った。

データセンタービジネスの会社という認知を広め「市場平均の2倍」の成長を

 4月から始まった新年度においては、ハイパースケールやHCI、サービスなどの主要分野において「市場平均の2倍の成長」を見込むことも明らかにした。

 「レノボは、IBMからPC事業を買収し、PC市場において、ナンバーワンの位置を獲得した。これは、IBMの時代には成し遂げなれなかったことを、レノボは実現したともいえる。サーバーやストレージでは、まだそのポジションにまでは行っていない。しかし、この分野でも同じことが起きるだろう」と、業界平均を上回る今後の成長に強い意志を見せる。

同席したソトロンゴ氏は、「わたしはIBMから移籍した人間だが、当時は『安いPCを作るのではないか』とも言われていた。しかし、ThinkPadで品質の高い製品を開発し続け、市場の信頼を得ることでナンバーワンのPCメーカーになった。ThinkSystemやThinkAgileも高い品質が支持され、顧客満足度も高い。レノボの方向性に間違いはない」と補足する。

レノボ データセンターグループ チーフカスタマオフィサーのウィルフレド・ソトロンゴ(Wilfredo Sotolongo)氏

 「サーバーカンパニーとして、またストレージカンパニーとして、最も高い成長を遂げているのがレノボだ。課題は、PCの会社というだけでなく、データセンタービジネスの会社であるという認知をさらに高め、新たなブランドイメージを作ることだ」(スコーゲン氏)

 Transform 3.0によって、エッジという領域にも積極的に踏み出すことで、データセンタービジネスをさらに加速することを高らかに宣言したのが、今回のLenovo Accelerate '19におけるDCGのメッセージだったと言える。

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