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「マジックナンバーの3」 横浜F・マリノスのデジタルマーケティング戦略

2019年06月06日 06時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木/ASCII編集部

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 2つ目の調査は試合後となり、年間チケット所有者、ファンクラブ会員、何も入っていない人と各セグメントからランダムに抽出してウェブ上で実施する。ここでは満足度、不満点、改善案などを入力してもらっているという。

 2つの調査を掛け合わせて見ていくと、面白い不満要素が出てくると永井氏はいう。負けた試合は不満要素が出ると考えがちだが、実はグッズを買う、入場などで待つことに対することへの不満のほうが高い、などだ。これを受けて、待つことへの対策を考え始めたという。「せっかく新規来場者が6%あっても、待つのが嫌だからと6%が離脱してしまっては積み上がっていかない」と永井氏。

 西井氏の「離脱ではなく、継続している要素は?」という問いに対しては、一定数いるという”スーパーファン”20人ぐらいに集まってもらい、どうしてマリノスのファンになったのかのきっかけを聞くなどのことを行なっているという。

シンクロの代表取締役社長、西井敏恭氏

 話を聞いた西井氏が、「誰か一人のファンになると離脱がしづらくなる」という仮説をたて、「F2やF3からF10までの間に、特定の選手のファンになってもらうための取り組みがあれば……」とアドバイスすると、永井氏は「好きな選手を登録できる機能を活かして、誕生日に好きな選手からメッセージが届くようなことをやりたい」と述べた。

 西井氏は自身が執行役員兼チーフマーケティングテクノロジストを務める「オイシックス」(食品の定期通販サービス、オイシックス・ラ・大地)で得たこととして、「オイシックスを好きになってくれることが最終的には大切だが」としながら、「顧客が好きになるタイミングやきっかけは個別の商品や体験」と明かす。

 しかも、定着のきっかけになるものは、広告で目立つものとは違うことが多いという。「目立って買ってくれるのはトマトかもしれないが、実際に使ってみると小松菜が美味しくて、小松菜で定着するような感じ」と西井氏。サッカーなら、「(ヴィッセル神戸の)イニエスタ選手が見たいから来たお客さんが、イニエスタじゃない選手を好きになって定着する」と例えた。

 最後に西井氏は、「顧客IDを使ってデータ分析ができる環境ができてきた後、次にやることは、データからは実際には読み取れない時にもう一歩踏み込むこと。成功の再現性を作ること」と助言する。ファンになった人の再現性を作るために、「初めて見た人に対して、あの選手のパスの精度は高いとか、左サイドバックは足が速いなどの面白さや見どころをコンテンツで伝えることなどが考えられそうだと考えを述べた。

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