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ルノー侵略を阻む最後の砦?日産「新役員体制」の隠し球

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西川廣人社長兼CEO
Photo:NISSAN

一時休戦かに見えた日産自動車と仏ルノーだが、経営統合構想の再浮上で情勢が緊迫化している。そんな中、日産は対ルノー布陣とも取れる新たな役員体制を発表した。そこには、意外な“隠し球”があった。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

  5月16日付で、日産自動車は「執行体制」を刷新する。それは、虎視眈々と日産との経営統合をもくろむ仏ルノーを迎え撃つ布陣でもある。

 6月末の株主総会で取締役が選任される前に、日産経営陣が新体制を築くことで先手を打った。

 かねて日産の企業統治は、「経営」を担う取締役会はカルロス・ゴーン氏が掌握してきた。その一方で、「執行」に関しては、ゴーン氏から役員への権限委譲が進められてきた。日産のエグゼクティブ・コミッティ(EC)は、最高意思決定機関として強い執行権限を有してきたといっていい。

 西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)ら日産上層部は、ECメンバーを刷新することで、ルノーの侵略に対抗できる布陣を敷こうと考えたのだろう。

 株主総会開催前の今のタイミングならば、筆頭株主であるルノーの支配力に左右されることなく、既存の取締役会決議だけでECメンバーを代えられるからだ。

 刷新のポイントは三つある。

 第一に、購買出身で無資格検査問題への対処に当たってきた山内康裕氏のCOO(最高執行責任者)への昇格である。

 日産社内の序列は独特で、副社長よりも「C(チーフ)」が付く肩書の方が格上だ。今回、2013年11月にゴーン氏により“解任”された志賀俊之氏が退いて以降、空席となっていたナンバー2のCOO職が復活した。山内氏は、ルノー出身のフィリップ・クランCPLO(チーフ・プランニング・オフィサー)を飛び越えて序列2位に躍り出た。日産は、ECメンバーのツートップを日本人で固めたことになる。

 第二に、新入りECメンバーを5人も入れて、ルノーの影響力を低下させたことだ。15日までに、ゴーン氏を含めて3人の退任が決まっており、2人の純増となる。日産から見れば、“数は力”である。ECメンバー12人中10人が日産出身者で占められるからだ。

 クランCPLOと同じくルノー出身のクリスチャン・ヴァンデンヘンデCQO(チーフ・クオリティ・オフィサー)には、日産はVice COO(副最高執行責任者)という新ポストを用意した。だが、それも「サブなのかチーフなのか分からない、ルノーへの配慮を見せるためのポスト」(日産幹部)であるといえそうだ。

 もっとも、一連の昇格人事について、「代わり映えのしない無難な昇格と、登用理由の理解に苦しむ昇格が多い。有事に、経営人材の枯渇を露呈している」(同)と日産社内からも手厳しい声が上がっていることも事実である。

 とりわけ、批判の矛先は、共に副社長に就任する星野朝子氏や川口均氏に向けられがちだ。

 星野氏については「偶然にも、国内担当役員に就任したときに、e-POWER(エンジンの出力を発電だけに使い、走行は100%電気モーターで行うパワートレイン)技術が『ノート』などに搭載されて販売がアップした強運の持ち主。今度も前任者退任でお鉢が回ってきた」(別の日産幹部)。

 渉外・広報担当が長い川口氏については、「ゴーン氏の不正問題への対処法に安定感があるという“論功行賞”で昇格したが、西川社長の“精神安定剤”にすぎない」(同)との見方が優勢だ。

長期政権を目指す西川社長ではなく
新入り専務に期待

 当初は出処進退を懸けて事に当たっていたように見えた西川社長だが、最近は長期政権の実現に意欲を燃やしているようだ。

 そんな西川社長の意図とは違っているのだが、にわかに社内で期待が高まっているのが、最後の第三の刷新ポイントである。

 新入りECメンバーである内田誠氏、関潤氏に、注目が集まっているのだ。内田氏は元商社マン、関氏は防衛大学校卒業という異色のキャリアだが、重要市場である中国事業の新旧の責任者だ。

 ゴーン氏訴訟やルノーとの提携交渉の行方次第では、経営上層部の地位が安泰とはいえないし、代わり映えしない人事では、交渉事では百戦錬磨の仏政府・ルノーに太刀打ちするのは難しい。そこで次の、あるいは次の次の経営者候補の“隠し球”として2人の存在がクローズアップされているのだ。

 とりわけ、関氏への期待は高まっている。関氏の新担当は「パフォーマンスリカバリー」。

 刷新人事を明らかにした翌日に、日産は業績の大幅な下方修正を発表し、19年3月期決算の営業利益が前年同期比45%減の3180億円となる見込みだ。

 要するに、関氏のミッションはこの長期低落傾向にある業績をV字回復させることである。そのためには、米国事業の再建のみならず、ルノーと利害が一致しない過剰設備問題の解消も急務。早速、その手腕が試されている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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