このページの本文へ

米中貿易の25%関税、「全面対決」なら中国の成長率は1%低下する

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
トランプ大統領の本領発揮。お得意のツイートでの対中関税引き上げ表明は、市場を大きく動揺させた
トランプ大統領の本領発揮。お得意のツイートでの対中関税引き上げ表明は、市場を大きく動揺させた Photo:AP/AFLO

トランプ大統領のツイートが市場を大きく動揺させた。延期していた対中関税引き上げの唐突な表明で、主要国の株価は大きく下落した。中国からの輸入品全額への25%関税も示唆している。関税での全面対決となった場合、最も深刻な影響を受けるのは中国だが、米国が受ける打撃も決して小さくない。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)

 米国と中国が貿易協議でなんらかの合意に達するという市場の楽観的予測は裏切られた。

 中国との貿易摩擦をめぐる協議の進展の遅さに業を煮やしたトランプ米大統領は、5月5日、延期していた2000億ドルに上る中国からの輸入品への関税の10%から25%への引き上げを10日に実施し、輸入品全額(約5400億ドル)についても速やかに25%の関税をかけるとツイートした。9、10日と米ワシントンで米中の閣僚級協議が予定されているにもかかわらずである。

 当初は、トランプ大統領得意の駆け引きのための発言にすぎないとの見方もあったが、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表は6日、関税を10日に引き上げることを正式に表明した。

 4月末までは、米国政府の要人から合意に向けて協議が進展しているという発言が続いたこともあり、協議を楽観視し、上昇基調にあった株式市場は一転急落する。6日のニューヨークダウは前営業日比66ドル安、7日は同473ドル安と続落し、2万6000ドルを割り込んだ。連休明けの日経平均株価も7日は前営業日比335円安、8日同321円安と2日続けて下落し、2万2000円を切った。

 手のひらを返すような突然の関税引き上げ表明にもかかわらず、中国は7日に9、10日の協議に劉鶴副首相を予定通りワシントンへ派遣すると発表した。

 現時点(5月8日午後)で協議の行方は不透明だが、この協議で合意に至れば、株価も値を戻すだろう。むしろ、合意を好感してさらに上昇する公算さえある。

 ただ、合意に至らない可能性は低くない。対中強硬派のライトハイザー代表が「中国が約束を破ろうとしている」と中国を非難しただけでなく、対中融和派とされるムニューチン財務長官が「(対中協議で)大幅な後退があった。中国が協定の文言で態度を変えた」と発言している。協議が難航しているのは間違いない。

 米国が重要視する、外資の企業から中国企業への技術の強制移転や中国政府の先端技術分野の企業への産業補助金削減などの問題で溝が埋まっていないようだ。

 強制移転については、4月初旬まで否定してきただけに文言に入れることを渋り始めたと思われる。そして、先端技術分野での覇権を目指す中国としては、補助金削減、まして撤廃は受け入れ難い。

 米中が合意に至らず、10日またはそれ以降に中国からの輸入2000億ドル分に対する関税が10%から25%に引き上げられた場合の米中経済への影響はどうなるか。

 まず、現在の関税の状況について整理してみる。米国での中国からの輸入品に対する関税は500億ドル分については25%、2000億ドル分については10%である。一方、中国での米国からの輸入品については、500億ドル分に25%、600億ドル分に10%である。

 中国の対米輸入額は約1200億ドル。関税がかけられていないのは残り100億ドル前後しかない。その意味で、関税分野で、中国が対抗処置を取れる余地は小さい。

 米中貿易摩擦の世界経済、各国経済への影響については、IMF(国際通貨基金)が昨年10月に試算を公表している。

 まず、現状の関税が続いた場合、今回の追加の関税がないケースと比べて米国で0.15%、中国で0.56%、年間の経済成長率が押し下げられるとしている。

 そして、米中間の貿易全額に25%の関税をかけた場合、同様に追加の関税がないケースと比較して米国で0.2%、中国で1.16%成長率が押し下げられると予測している。

 この結果から案分して、米国が2000億ドル分の関税を10%から25%に引き上げた場合に、米国経済にはほとんど影響はないが、中国経済は0.2%前後、成長率が押し下げられることになる。

株価の大幅下落が
トランプ大統領の態度軟化を促す

 米中の協議が合意に至らなかった場合は、トランプ大統領がツイートしたように、 中国からの輸入品全額に25%の関税がかけられる公算が大きくなる。その場合、中国も米国からの輸入品全額に25%の関税をかけるだろう。

 関税引き上げで全面対決となれば、現実には関税だけの影響では済まない。株式市場をはじめ、金融市場の混乱は避けられない。

 IMFは、そのケースについても試算している。その結果は、米国0.91%、中国1.63%のマイナスである。現状と比較して、米国で0.71%、中国で1.07%成長率が押し下げられる。米中全面対決となれば、中国経済は6%台前半としている2019年の成長率目標の達成が厳しくなり、米国もかなりの返り血を浴びる。

 日本経済にも当然影響する。全面対決で金融市場が混乱した場合、日本の経済成長率も0.47%押し下げられる。

 全面対決は回避できないのか。

 トランプ大統領は昨年末以降、米中貿易協議の難航などを材料に株価が下落した際、対中国への発言のトーンを軟化させていった。今回の強硬な姿勢への変化も、ニューヨークダウが昨年10月に付けた最高値を更新する寸前まで回復したことが支援材料となっているのは確実である。

 その意味で、今回の関税引き上げ表明によって再び株価が今年1月の安値である2万1000ドル台まで大きく下落することが、トランプ大統領の態度を変えさせる最も効果的な材料だろう。中国と合意に至らずとも、少なくとも全面的な対中関税引き上げを思いとどまるきっかけとなる公算は大きい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ