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10連休でGDP押し上げ効果、「カネのかからない景気対策」定着の予感

2019年05月08日 06時00分更新

文● 熊野英生(ダイヤモンド・オンライン

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「10連休」でGDP押し上げ効果、「カネのかからない景気対策」“定着”する予感

「改元」に伴って、2019年のゴールデンウィークは「10連休」となった。

 その効果は、経済全体にプラスだったと見られ、筆者の計算では、国内外への旅行関連だけで3323億円の追加需要となり、4-6月期の実質GDPを+0.2%ポイントほど押し上げることになる。

 昨年秋以降、中国の成長減速などの影響で、1-3月期の成長率が前期比マイナスに落ち込む予想もある中で、政府にとっては「旱天の慈雨」になる。

「カネのかからない経済対策」ということが認識され、来年以降も、祝祭日に平日を組み合わせるなどで「大型連休」作りが行われる“予感”がする。

「大型連休」の経済効果
生産減より消費増が上回る

 筆者は、長期休暇が経済にはある程度プラスだと考えてきたし、今回の「10連休」では、旅行関連支出のほかにも、行楽地でのレジャー消費や飲食・娯楽、読書などの教養需要も高まるとみている。

 4月末と5月初めは結婚式も増えて、それが消費拡大に寄与することも予想される。

 ただ一方で、こうした見解とは反対の見方も少なくない。

 例えば、年間3営業日を休日にすると、2019年の営業日は1.2%ほど減って、労働時間(労働投入量)が減る。すると、生産量も減って成長率はダウンするという見方だ。

 しかし、筆者は、休日が増えると、需要が増えるのだからと生産はむしろ増えると考える。

 だから、旅館・飲食店などでは収益機会を失わないために、人員確保をしっかりしたいと考える。人手不足は、その副作用なのだ。

 また、休日の増加によって、雇用者の給与が減るわけではない。

 パートタイムなど時給の仕事は休日増で給与が減るが、正社員はそうではない。

 製造業の生産活動も、納期があるので、休日にならない日に生産を多くする体制にシフトすると考えられるから、休日が増えても、生産が落ち込む影響は少ないのではないか。

 マイナスがあるのは、個人向けでなく、企業向けのBtoBのビジネスでだろう。商談や営業の機会が減って、売り上げ・収益を下押しする。

 このマイナスを個人消費のプラスが十分に吸収するかどうかにかかっているのだが、個人消費のプラスの方が大きいと思われる。

 今回のように、あらかじめ長い休みになることがわかっている場合は、旅行などの計画も立てやすいから、景気へのプラス効果が出やすい。

4‐6月期のGDPプラスに?
「景気減速」回避したい政府に“恩恵”

 こうした「10連休」の恩恵を最も受けたのが、政府かもしれない。

 政府は、今年10月に消費増税を控えていて、4-6月期の成長率が悪くなることは絶対に避けたいと思っているからだ。

 6月に、日本で初めて開かれるG20サミットを成功させることを考えても、「景気減速」となれば、議長国として難しい状況に置かれる。

 G20では、その時点で米中間の協議がどういう状況になっているかにもよるが、米中貿易戦争のことが論じられると予想される。

 貿易戦争などの打撃が世界経済に広がらないように、各国からは米中首脳への厳しい意見も出そうだ。

 そのとき、日本が景気後退の瀬戸際になっていれば、安倍首相としても議長として、「盟友」のトランプ大統領の立場を厳しくするような議論をリードせざるを得ない状況になる心配がある。

 だからこそ、4-6月の成長率が「10連休」効果で上向くことは政府にとって都合がよい。

 政府が改元に伴って超「大型連休」を作ったことは、景気押し上げにプラスだったという「成功体験」として残るだろう。

「成功体験」が残り
今後も「大型連休」作り?

 古来、政府(朝廷)は、改元などのお祝いごとの時に、恩赦を繰り返してきた。

 それを考えれば、今回の「10連休」も、国民に休暇を与え、お祝いムードを盛り上げたいという、政府の思惑によって生まれたように思える。

 少し前には、「プレ金」(プレミアムフライデー)というのがあった。

 金曜日の働く時間を減らすと、週末に食事をしたり、買い物をしたりする消費の時間が増えて、経済的にもプラスという触れ込みだったと思う。

 働く時間を減らしても、それが消費に結びつかないかもしれないし、筆者も、労働時間の短縮が常に経済にプラスとは考えていないが、前述のように、「10連休」のポイントは、あらかじめ長い休みになることで人々が旅行の計画を立てやすかったことだ。

 秋にシルバーウィークがあるが、毎年、曜日の構成が変化するから、いつも長期休暇になるとは限らない。

 そういうこともあって、秋の休日が続くときに旅行を計画する人は夏休みなどに比べ相対的に多くないことが、アンケート調査などでもわかっている。

 しかし、今回の「10連休」が経済的にプラスだったという「成功経験」ができたことで、筆者は、将来の政権が再び大型の連続休暇を人為的に増やそうとするだろうと考える。

 それが人気取りにもなり、経済的にプラスと考えるからだ。いわば、政府にとって「カネのかからない経済対策」だと考える人もいるだろう。

 例えば、毎年、曜日構成によって長期休暇になったり、ならなかったりする9月の休日(敬老の日、秋分の日)は、その候補として操作されやすいのではないか。

 2020年の9月は、今のところ、4連休の予定だが、3営業日を休日にすると「9連休」になる。

 また、ゴールデンウィークの間の平日を、今年だけでなく将来も休日にすることも、検討される可能性はある。

 筆者は、今年の「10連休」は特別だという思いがあるので、政府が自分の都合で休日を増やすというのは賛成しない。

 だが休日を増やして景気拡大というアイデアは、とてもわかりやすいし、「人気取り政治」に便利な経済政策として活用されることはおおいにあり得る。

(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト 熊野英生)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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