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日の丸液晶JDIを沈めた「稚拙な財務」と「銀行の見限り」

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JDI「メインバンクを持っておけよ」と いう周囲のアドバイスにもJDIの幹部たちは全く耳を貸さなかった
Photo by REUTERS/アフロ

政府系ファンドがつくり出した「日の丸液晶」が、ついに台湾と中国の企業連合に身売りされることになった。その大きな原因の一つになったのが、首をかしげたくなるような財務運営だった。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

「あそこの財務戦略は当初から本当にひどかったですよね。ちゃんとしたCFO(最高財務責任者)がいたら、もう少し違っていたと思いますよ」

 台湾と中国の企業連合に身売りすることを決めた、中小型液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)について、ある金融機関の幹部はそう振り返る。

 確かに、JDIは出足からつまずきの連続だった。

 政府系ファンドの産業革新機構が主導するかたちで、東芝、ソニー、日立製作所の液晶事業を統合し発足したのは、今から7年前。その年に稼働した石川県の能美工場は、設備投資に必要な資金1000億円弱を米アップルから借り受けており、5年間で返済する契約を結んでいた。

 アップルへの返済は、原則ドル建てだ。当時の為替レートは1ドル=80円前後だったが、その後円安ドル高が進んだことで、返済するたびに多額の為替差損が発生。何ら為替ヘッジをかけなかったことで、差損はピーク時には200億円以上にも上り、営業黒字を達成しても経常損益、最終損益で大幅な赤字になるという財務上の大きな「欠陥」を、発足当初から抱え込んでいた。

 一方で、それが広く知れ渡ったのは、JDIの経営悪化が深刻化した2016年以降のこと。発足時や為替が円安方向にあった14年3月の株式上場時に、その欠陥について触れることは当然なかった。

 上場の局面においても、JDIの財務運営は終始泥縄式だった。上場してからわずか1ヵ月余りで、14年3月期の業績を下方修正したのだ。

 原因は、期末の3月になってアップルから一時的に液晶の出荷見合わせを言い渡されたり、中国の大口顧客から値下げ要求があったりという事態が重なったことにあった。

 だが、そうしたことは「3月19日の上場時には分かっていたはずだ」「あえて隠していたのか」と、投資家の不興を買うことになってしまったのだ。

 さらにその半年後には、上場前に処理しておくべきだった深谷工場(埼玉県)の閉鎖を決めたことで、15年3月期の黒字見通しはあえなく赤字に転落。見事なまでに、投資家の怒りの火に油を注いでみせた。

「今はさ、やっぱり強いところについていかなきゃ」

 そうした心もとない状況でも、革新機構とJDIの幹部は確信したようにそう言い放ち、アップルから約1700億円を借り受け、白山工場(石川県)の建設に踏み切ってしまう。

 経営が急速に暗転し始めたのは、このころからだ。工場の高稼働を期待していたものの、実際に稼働を始めた16年末にはすでに、iPhoneの販売は大きく減速し、さらにアップルはディスプレーの軸足を、JDIの液晶から韓国サムスン電子の有機ELに大きく移そうとしていたのだ。

 売上高の4割をアップルが占めるという依存体質にあって、受注減が業績を直撃したのは言うまでもない。納入した液晶パネルがなかなかはけず、ピーク時に1400億円あった運転資金が加速度的に減少する事態に直面し、JDIは慌てて銀行に駆け込むことになった。

延滞前提で設定された
銀行の融資枠

 それまでほとんど借り入れをせず、関係をつくってこなかったJDIが、突如として融資枠を求めてきたことに、銀行側の警戒はかなり強かった。

 そのため、融資枠を設定したみずほ、三井住友、三井住友信託の3銀行は、段階的に枠を広げるのと並行して、革新機構に追加の資金支援を実施するよう執拗に求めている。

 1年後の17年には、融資枠が初期の3倍近い1070億円にまで広がったものの、そこにはきっちりと革新機構による債務保証が付けられていた。

 さらに、この融資枠契約を子細に見ていくと、銀行側がJDIをかなり厳しい目で見ていた姿が浮かび上がってくる。

 なぜなら、革新機構が債務保証した金額は、実は1100億円だったからだ。にもかかわらず、融資枠をあえて30億円少ない金額に設定していたのは、融資に伴って「遅延損害金が発生することを、あらかじめ想定していた」(関係者)からだという。

 返済が遅れることを前提にして割り引いた融資枠を設定されるほど、JDIは銀行に見限られていたことになる。

 今後、台中連合からの支援が実現し、借金の返済が完了すれば、銀行側は完全にJDIから手を引く方針だ。

 そうした銀行の厳しい姿勢をあえて見ないようにしているのか、今後の借り入れについてJDI幹部が「銀行と協議する」と、当然応じてくれるかのようにのんきに語ってしまうあたりに、「日の丸液晶」を崩壊に至らしめた稚拙さが色濃くにじみ出ている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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