このページの本文へ

無料タクシー「ノモック」は大都市圏限定!?公共交通無料化の理想と限界

2019年05月02日 06時00分更新

文● 松嶋千春(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
エストニアの首都・タリンでは、住民は公共交通機関を無料で使えます。
住民に対して公共交通機関を無料化したエストニアの首都・タリン。交通の無料化というのは、決してありえない話ではなく、実現しているケースもあるのだ Photo:PIXTA

九州のベンチャー企業「nommoc(ノモック)」が、無料配車サービスを開始する予定で実証実験中だ。単なる配車アプリや無料の移動手段としてではなく、「移動する広告媒体」というノモックのサービスについて、モビリティジャーナリストの森口将之氏に国内外の交通事例を交えた意見を聞いた。(清談社 松嶋千春)

交通の無料化が目的ではないノモック
活躍の場は大都市圏か

 週刊ダイヤモンド2019年2月16日号の配車アプリ特集では「nommoc(ノモック)」の吉田拓巳社長に同社のビジネスモデルについてインタビューを敢行。そこで吉田社長は「目指すところは無料タクシーではなく、あくまで新しい広告媒体を作ること」というスタンスを示した。

 モビリティジャーナリストの森口将之氏は、これを「昨年末、DeNEの配車アプリ『MOV(モヴ)』が、日清のどん兵衛とコラボレーションして0円タクシーを走らせました。『移動が無料になる』というフックは一緒ですが、ノモックはアピールのポイントを変えてきましたね」と見る。

 ノモックの主な媒体は、タクシーを貸し切って車両内にディスプレイを設置し、ユーザーに合わせた広告を流すというものだ。登録時に得られるユーザーの年齢・趣味嗜好と、移動時の目的地情報などを組み合わせることによって個人情報の厚みを増し、広告のターゲティングに生かす。こういった展開の実現性について、森口氏は次のように指摘する。

「細分化したターゲット広告を打つとなると、需要のパイが大きくないと難しいと思います。大都市以外では成り立たせるのは難しいかな、という印象です」

ヨーロッパで盛んな「公共交通無料化」
日本で実現しづらい理由とは

 ノモックの「移動を無料に」というコンセプトを聞くと、交通網が張り巡らされている大都市圏よりも、地方の過疎地が脳裏に浮かぶ。実際のところ、こういったサービスを本当に必要としているのは、移動手段の少ない地方の過疎地ではないだろうか。

「地方はやはり広告を見る人は少ないので、広告出稿も見込めないでしょうね。たとえば、ふるさと納税のように、大都市で稼いだ広告収入を使って地方の移動手段を無料にするような、福祉的な発想のサービスが出てきたら画期的だと思います」

 ヨーロッパの都市では、公共交通無料化の動きが進んでいるという。森口氏が昨年秋に訪れたエストニアの首都・タリンでは、リーマンショックの影響で困窮する住民のために公共交通を無料化したところ流入人口が増え、無料化した分の交通料金を上回るプラス税収があったそうだ。このような事例が日本で見られないのは、いったいなぜなのか。

「私が見てきたヨーロッパの都市では、公共交通を自治体主導で管理しています。だから福祉的な発想にシフトしやすいのでしょう。日本の場合は民間業者が運営している場合が多いため、自治体が主導して交通を無料化するというのは、仕組みの違いから変えていかないと厳しいでしょうね」

交通の点を線でつなげる
伊豆で始まる「観光型MaaS」

 無料ではないものの、目新しい取り組みが、この春から静岡県伊豆エリアで始まろうとしている。MaaS(マース、「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略)はICT(情報通信技術)によってマイカー以外のすべての交通手段による移動をシームレスにつなぐ概念を指す。ユーザーはスマートフォンのアプリを用いて、複数の交通の予約・運賃決済が一括で可能になるそうだ。

「伊豆のモデルでは『観光型MaaS』と称し、東急・JR東日本・伊豆急などが事業者の垣根をこえたモビリティ(移動)を提供する予定です。交通手段が不足していて、せっかくの観光資源が生かしきれていない地方を活性化する活路になるかもしれません」

 観光型MaaSとノモックの広告媒体を組み合わせれば、相乗効果で「移動の目的化」が地方でも図れるような気もしてくる。

「地域密着型企業の広告収入はあまり期待できないかもしれませんが、もし地方の観光地で広告を打つなら、地域限定の情報こそ生きる気がします。ラーメン好きの人に向けて、車でしか行けない店をサジェストしたり、クーポンを出したりするとか。そういった、地域経済に目を向けた方向性だと好感が持てますね」

 博多の土地から始動するノモックが、広告媒体としての価値をどこまで高めていくのか。引き続き注目していきたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ