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オーナーや不動産会社に寄り添ったスマートロック「NinjaLock」誕生秘話

不動産テックのイベント「Real Estate Conference 2019」が開催

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課題を解消しながら進化し続けたNinjaLockの軌跡

 こうした苦労の末、2015年2月にめでたくNinjaLockの1号機が1万9800円で発売になり、ヨドバシカメラでも取り扱われた。Bluetoothだけではなく、Wi-Fiも内蔵し、アプリからの遠隔操作を実現。合い鍵の発行がアプリでできるようになり、後付けで簡単に設置できるようになった。しかし、設置できる扉が限定されており、両面テープでの設置だったので付け外しが難しかった。また、Wi-Fiを搭載したため、電池の減りが早いという弱点もあった。こうした反省を踏まえ、2号機の開発が始まった。

2015年2月に発売されたNinjaLock1号機

 所有していたマンションを売りながら、手持ちの資金で作っていた1号機と異なり、2号機は外部からの出資を受けて、約1億円の費用をかけて開発された。2017年3月に発売されたNinjaLockの2号機は、さまざまな扉に取り付けられるよう、取り付け部分を可変させられる構造にしたほか、両面テープだけではなく、磁石やプレートも使えるようになった。日本製にこだわって作ったこともあり、価格は3万9800円となった。

日本製にこだわって作ったNinjaLock 2号機

 とはいえ、アプリで操作できるという点は制約でもあった。最新の総務省の調査では、日本でのスマホの普及率はまだ6割にしか過ぎない。つまり、スマホ前提としている段階で、4割近いユーザーが対象外になるということにこの時点で気がつき、数字キーやICカードでの開閉が可能なKeypadを2018年4月に発売した。これにより、スマホなしでも操作が可能になったほか、ワンタイムや期間を限定して数字でドアを開けることができるようになった。

 次々と課題を解決し、進化を遂げてきたNinjaLockだが、最後に残ったのは「後付け前提」という課題だ。「結局、空室から空室まで誰かが移動させなければならないもの。利用者が日常的に使うのであれば、後付けはどこか不安が残るのではないか」と滝沢氏は語る。発表会のときはNinjaLockの2号機を「完成版」と言い切った滝沢氏だが、「あきらめるな」という心の中の声に応え、いよいよ発表されたのが新商品の「NinjaLockM」になる。

不動産でのさまざまなフェーズをカバーする最強のスマートロック

 「すべてのシーンで使える最強のスマートロック」を謳うNinjaLockMは建設中、空室中、入居中というフェーズをカバーし、賃貸管理に必要な機能を盛り込んだ。

美和ロックと共同開発したNinjaLockM

 建築中を想定している工事中モードでは、工事業者、水道業者、壁紙業者など業者ごとに鍵を分けることで、どの業者がいつ物件に入ったのかの入退室管理が可能になる。また、空室中モードに移行すると工事中モードの鍵はすべてクリアされ、管理業者や仲介業者に管理権限が委譲。内覧の予約時のみ使える時限付きの数字キーを発行できるので、物理鍵を玄関の横に入れておくといった危ない運用、内覧した人に勝手に入れられるといったリスクを回避できる。

 そして入居中モードに移行すると、今度は空室中モードでの鍵がクリアされ、入居者がアプリ、数字キー、ICカードでドアの開閉を行なえる。近日中には自動的に施錠・解錠できる機能も実験提供される予定だ。もちろん、契約終了したら、空室中モードに移行すれば、入居中モードの鍵はクリアされ、以前登録した鍵情報が復活する。再度登録する必要がないので、スムーズに管理に移行できる。

 すべてのモードで便利な機能も満載している。たとえば、工事中モードでタイマー機能を用いれば、定時になったら自動的に施錠・解錠できる。利用者もオートロックを利用できるほか、夜になったらとりあえず施錠するといったことも可能になる。さらにコンビニの電池を使える緊急給電機能や、数字の入力を見えなくするのぞき見防止機能を搭載するほか、シリンダーキーでの解錠、最近の賃貸住宅に多いダブルロック対応なども実現した。部屋のインテリアに合うよう、カラーバリエーションも用意したという。

 NinjaLock自体もかなり強力な製品ではあるが、ライナフの強みはさまざまな不動産システムと連携できる点だという。たとえば、既存のエントランスに設置するだけで遠隔の開錠が可能な「Ninja Entrance」や内覧希望者に電子キーを発行する「スマート内覧」のほか、賃貸管理会社用の「NinjaLock for BIZ」とも連動する。滝沢氏は内覧の申し込みや電話番号での認証、さらには時限鍵をアナウンスしてくれる模様をデモで披露した。「スマートロックのみならず、不動産のサービスを持っているライナスならではの強みだと思っています」と滝沢氏はアピールした。

NinjaLockMの品質検査を手がける美和ロックのこだわりとは?

 ここまで機能面や連携をアピールしてきたが、NinjaLockM最強を謳う理由は、鍵メーカーの最大手である美和ロックと共同開発し、厳しい品質検査を受けている点にある。後半に登壇した美和ロック商品企画部部長 木下琢生氏が登壇し、美和ロックの会社概要やNinjaLockMでの役割について説明した。

美和ロック 商品企画部部長 木下琢生氏

 美和ロックは今年創立74年。鍵メーカーとして知られるが、もともとは軍需産業からスタートし、戦後は社名変更し、農機具メーカーになった。その後、現金を安全に運ぶための封印錠を作ったのを契機として、鍵メーカーに転身。1950年代には、日本住宅公団の指定メーカーとなり、かんぬきを付け、鍵のパターン数を増やすことで防犯性を高めたHM錠がヒットし、1970年だから電子錠の商品化を進めた。

 1990年からは約四半世紀かけて三重県の玉城工場を増築し続け、材料の調達、プレス、切削、鋳造、組み立て、検査、組み立てまで一貫して行なえる体制を構築している。現在、住宅での鍵のシェアでは約6割に達しており、その他ホテルのカードロック、非常口用ロック、ビルのオフィス電気錠なども幅広く用いられている。

 美和ロックの強みは品質。これを担保するため、強度、耐久、環境、開錠強度など100項目以上の品質評価を行なっており、今回のNinjaLockMも量産品に対してこの厳格な評価を施している。また、2万5000セット/1日という圧倒的な生産体制、日本全国で800もの代行店を介したサポート体制が大きな売りになっているという。

 滝沢氏は、「鍵のIT化が進むと、鍵が売れなくなるのでは?」という質問を投げると、木下氏は「人口減少で鍵自体の出荷数は減っているが、高付加価値のロックが増えているので、売上も利益はむしろ伸びている」と語る。IT化はこうした高付加価値化に寄与するものであり、「賃貸管理、入退室管理、介護、宅配、見守り、警備などさまざまなサービスとの連携」「生活のトリガーとしてのIoT鍵」「既存のラインナップに取り付けられるスマートロック」などの方向性を示す。

 その上で、十年後の鍵はAIやロボット、高度に進化した生体認証などのテクノロジーと切って切り離せなくなり、物理的な鍵を意識しなくなるという予想図を披露。「家に近づくだけで認証が走り、ロボットが家の中から開けてくれるようになったら、僕らはロボットのパーツを作っているメーカーになっているかもしれない」(木下氏)と語る。

 その後、イベントでは賃貸管理会社用のシステムやAIによる賃料査定、住宅ローンテックなどさまざまなサービスが紹介され、国内でも本格的なPropTechの勃興を感じさせた。業界の中の人たちが主催したテックイベントだけに、参加者の多くを占める不動産業者も納得する内容だったのではないだろうか。

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