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東京五輪、当選確率&お手頃価格で考えた「穴場チケット」はどの種目?

2019年04月26日 06時00分更新

文● 小林信也(ダイヤモンド・オンライン

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東京五輪
5月9日から東京五輪の入場券の抽選申し込みが始まります Photo:DOL

 2020東京五輪の詳しい競技日程が発表された。インターネットによる入場券の抽選申し込みも5月9日から始まる。

 開会式が行われる2020年7月24日まで、まだ1年3ヵ月あるが、こうした発表に接して、多くの人がいよいよオリンピックを迎えるという実感を持ったことだろう。

 大半の報道は、「楽しみですね!」という明るいトーンなので、無邪気に東京五輪に思いを馳せれば、期待に体が熱くなってくる。だが、冷静に考えると、そうばかりも言っていられない。

 私の正直な印象は、「本当にこの猛暑の季節にやるんだな」「招致演説で首相は『この時期の日本は温暖で』と言ったが、世界はこの『温暖』の意味をどう解釈するだろう」などといったもので、想像するだけで背筋に寒いものも感じる。

 お祭りムードの一方で、東京五輪の表と裏で何が起こっているのか、画策されているのか。核心を見つめる冷静さも携えておきたい。そうでないと、復興はなかなか進んでいないのに、『復興五輪』のキャッチフレーズに惑わされ、復興の遅れを東京五輪がうやむやにする役割を担ってしまうからだ。

序盤から日本のメダルラッシュに期待
外国人選手のスターも誕生か

 とはいえ、まずは楽しい話題から紹介しよう。

 多くのテレビ番組やスポーツ新聞が、「序盤から日本のメダルラッシュが期待できる」と報じている。確かに、開会式翌日には柔道が始まる。次いで、水泳、新種目のスケートボード、体操と、いずれも日本選手がメダルを争う競技が続く。中盤からは卓球シングルス、テニス、バドミントン、レスリング。終盤には空手、スポーツクライミング、そしてサッカーと野球の決勝が待っている。

 大きな枠組みで見れば、五輪の日程は従来からこのような構成で、大きな変化はない。日本のメダルラッシュを演出するため、日程を大きく変えたわけではない。それだけ多くの種目でメダルを狙える実力を日本選手が身につけた証というべきだろう。

 東京五輪が盛り上がるには、日本選手のメダル獲得が大きなスイッチになると誰もが考えている。逆に、期待の種目でつまずくと、予想外の低迷が続く場合もある。各競技、各選手、それぞれ個々の存在だが、案外、日本チームの連鎖反応はよくも悪くもある。そんな観点からすれば、伏兵がいきなりメダルを獲る効果は大きい。

 全競技中、金メダル第1号となるのは射撃だ。男女の10mエアライフル。まだ代表は決まっていないが、実はこの種目、日本選手も男女ともメダルの可能性がないわけではない。思いがけないメダリストが誕生すると、ボルテージは一気に高まるだろう。

 そしてもう1つ、盛り上がりに重要な、忘れてはならない要素がある。それは、外国選手の中からスターが生まれること。何より世界の祭典だ。日本選手の活躍ばかりでは足りない。

 過去の五輪を遡れば、東京五輪で日本中を魅了した1人は、女子体操で「名花」と謳われたベラ・チャスラフスカ(旧チェコスロバキア)だった。札幌五輪では女子フィギュアスケートのジャネット・リン(アメリカ)。転倒して尻餅をついたときの笑顔が日本人の心をつかんだ。リンは銅メダルに終わったが、札幌五輪の記憶は金メダリストではなく、銅メダリストとともにある。

 そして、メダリスト以外にドラマチックなヒーローやヒロインが生まれることも特別な昂奮を触発するための大切な要素だ。予測できないドラマが生まれ、思いがけないヒーローが出現してこそ、後世に語り継がれる伝説を共有できる。

 日本開催ではないが、初めて女子マラソンが実施された1984年のロス五輪、スタジアムにふらふらになって現れたガブリエラ・アンデルセン(スイス)が、トラックを一周し、ゴールした姿は世界中に強い印象を与えた。

開会式の最上席は30万円!
当選確率と価格から“穴場”を狙え

 さて、せっかくの東京五輪、一度だけでも会場で生観戦したいと思ったら、現実的にどのチケットを入手すればいいだろう?

 果敢に人気種目を狙うのもよいが、抽選に当たる確率は高いとはいえない。しかも安くない。何しろ、開会式の最上席は30万円だ。野球とサッカーの決勝戦も高い席は6万7500円。通常のプロの試合でも経験のない高値。むしろ、抽選に当たる確率とリーズナブルな価格を考慮して、穴場狙いもいいだろう。

 大穴狙いなら、金メダル第1号に日本人が輝く可能性のある射撃。2500円から5500円と他の競技に比べるとずいぶんリーズナブルだ。

 私自身が買いたいと思うのは、水球男子の予選リーグと準々決勝。水球男子日本代表は、リオ五輪で32年ぶりに五輪出場を果たした後、メキメキと実力を伸ばし、「超攻撃型でフェアな水球」を徹底し、いまや世界の強豪からも一目置かれる存在になっている。今年3月に行われたワールドリーグ2019インターコンチネンタルカップでも決勝に進出、オーストラリアに惜敗したが準優勝に輝いている。

 メダルにはまだ少し距離があるが、次の1年でさらに実力を伸ばす期待も込めて、水球男子日本代表がメダルを目指す闘いを目撃したい。ということで、予選リーグと準々決勝、最も燃えるところ、昂奮できるところを押さえたい。料金も3000円からとなっている。

 水球同様に実力を伸ばし、厳しい条件をクリアして東京五輪出場にこぎつけたバスケットボール男子にフォーカスを当ててもいいだろう。アメリカのドリームチーム出場が期待されているため、決勝の高い席は10万8000円の設定だが、予選は3000円で買える。

 他の人気競技に比べたら倍率がそれほど高くなく、しかも日本選手のメダル獲得が期待できる競技は、フェンシング、カヌー、重量挙げなどもある。

 タイガー・ウッズや松山英樹が出場するのかどうか現時点で確約はないけれど、7000円から1万円と案外安い価格設定になっているゴルフも狙い目だ。

 あとは、マラソンを沿道から応援する方法がある。料金はいらない。ただし、猛暑が心配されるので、対策と覚悟が必要だ。

 マラソンのスタート時間は朝6時、ゴールは男子が8時すぎ、女子は8時20分前後になるだろう。猛暑対策で当初の予定よりさらに早い時間に繰り上げられたが、朝だからと楽観するのは早計。男子マラソンが行われるのは8月2日。昨年のその日、朝8時にもう30度を超える暑さだったというから日中と変わらない。

東京五輪が福島での
女子ソフトボールから始まる事情

 最後に1つ、冷静な視点も加えておこう。

 今回の日程発表に際して、メディアでは『東京五輪はソフトボールで開幕。先発・上野由岐子投手を宇津木監督が明言!』といった見出しが躍った。開会式に先立ってサッカーなどの予選ラウンドが始まるのは過去の五輪でもよくある。今回は開会式の2日前、7月22日に福島県立あづま球場で行われる女子ソフトボールが最初の競技になる。

 対戦相手は決まっていないが、開幕試合に日本が登場する予定だという。宇津木麗華監督は、北京五輪で日本中を感動させた上野由岐子投手が開幕試合で先発すると早々に発表した。こんな威勢のいい宣言が飛び出したら、いやでも盛り上がる。1年3ヵ月後が待ち遠しい。胸が高鳴る演出だが、これがスポーツの厄介なところ。無邪気にソフトボールのことだけを思えば楽しみだが、その背景に、見逃してはならない動きや思惑があることも、胸にとどめておきたい。

 野球・ソフトボールの福島開催のアイディアが浮上したのは、2016年だ。IOCのトーマス・バッハ会長が来日し、安倍晋三首相を訪問した。その際バッハ会長から、「福島で野球とソフトボールを開催してはどうか」と打診があった。復興五輪のかけ声をかけながら具体的な策もあまりなかった安倍首相がこの申し出に乗った。

 その背景には、とくにヨーロッパの国々の原発事故に関する不安と拒否反応があったといわれる。この年、野球のU15ワールドカップ世界野球大会が福島(いわき)で開催された。結果的に出場国は12ヵ国。本来ならもっと多くの国が参加する予定だったが、原発事故の影響を心配したいくつかの国が参加を取りやめたと新聞で報じられた。ヨーロッパからの参加はチェコだけだった。

 IOCは、こうした不安ムードを払拭する必要があった。そのため、福島県から放射線量の報告書を提出させるなど、改善を証明してとくにヨーロッパ諸国に対して「安全」をアピールする狙いがあったと見られている。

 こうした政治的思惑を背後に忍ばせ、スポーツ選手が光の部分を請け負う図式が、残念ながら東京五輪でも存在する。スポーツが政治家や事業家に利用されているともいえるし、そのおかげでスポーツは成り立っている、トップ選手たちの生計も支えられているというカラクリもある。

 スポーツファンとしては、複雑な現状もきちんと把握しながら、選手たちの輝きを応援したい。

(作家・スポーツライター 小林信也)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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