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マイナス金利の「金利水没国」拡大、債券投資のフロンティアはあるか

文● 高田 創(ダイヤモンド・オンライン

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マイナス金利の「金利水没国拡大」
Photo:PIXTA

 年初来、すでに世界的な金利低下局面に入ったとの問題提起をしてきたが、実際に、その後3ヵ月余り、世界的に長期金利が低下した。

 その結果、日欧中心に国債利回りがマイナス(水没)になる状況で、世界の投資家の多くが運用に窮する「運用難民」と化している。

 2018年末にかけ米国の金融政策の利上げ休止観測が高まったことで、世界的な金利サイクルが再び低下に転じた可能性が高い。

 世界の金融政策を先導する米国の「次の一手」も、利上げより利下げに傾いていると、筆者は考えている。

世界は再び金利低下局面に
米国の「利上げ休止」で潮目が変わる

 世界の金利の「水没マップ」を改めてみると、日本も今回の金利低下で10年金利が再びマイナス金利になった。
 ほかにスイスやドイツ、オランダ、北欧諸国などにマイナス金利が目立っている(図表1)。

 日本の場合、振り返れば、金利低下がピークに達した2016年7月、「水没」は20年ゾーンにまでおよんだ。

 2016年9月、日銀は異次元緩和策の総括的検証をし、10年ゾーンをゼロ近傍に誘導するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を導入。その結果、10年ゾーンは長らくゼロ近傍の状況が続いた。

 その後、2018年にかけ日銀は正常化に向けた対応に舵を切り、2018年7月にはYCCの弾力化を行い、10年金利は0.1%台まで浮上した時期もあった。

 だが、米国の「利上げ休止」で、潮目は変わったようだ。

「金利水没」のもとでは
「LED戦略」しかない

 筆者は過去4年余り、「水没マップ」を用いながら、マイナス金利の状況のもとで投資家が資産運用を行うには「LED戦略」、つまり、「(1)長く(Long)、(2)外に(External)、(3)多様な(Diversify)なリスク」の3分野しか選択肢はないと言ってきた。

 今回、金利水没下のフロンティアを改めて考えれば、「L」、長期化については、従来以上に超長期債券の分野にフロンティアを考えることだ。

「E」の海外については、まだプラス金利でマイナスに沈んでいない国を探して投資せざるをえない。さらに「D」の多様なリスクということでは、新たな運用の次元をオルタナティブとして考える必要があるだろう。

利回りがプラスで
債券発行が最も多いのは米国

 いまだ金利がプラスで水没していない国を示したのが、以下の図表2だ。

 世界で利回りがプラスで残るフロンティアのトップが米国であることがわかる。

 次は中国になるが、資本規制があるなかでは、実務上、容易ではない。その他では、英国、カナダ、イタリア、フランス、ドイツなどを順に投資対象に含めるという流れになるだろう。

 図表2から債券で運用を行うとなれば、米国を中心に考えざるをえないのが、今日の運用環境の現実だ。

 金利があって正常の金融活動が続くという観点からも投資先は米国を中心に考えざるをえない。

 世界全体の債券発行の1/3以上は米国であり、それに中国を加えると半分を占める。

 世界のなかでは比較的、経済のパフォーマンスがいいアングロサクソンの国々、英国、カナダがそれらに続き、欧州ではイタリア、スペイン、フランスなどが中心になる。

 今年度は改めて欧州、なかでも南欧への対象拡大が注目されやすいだろう。投資家はまだ沈んでいない地域をフロンティアとして探していかざるを得ない。

フロンティアの一つは
インドなどの新興国

 今年3月に、筆者は新興国の雄とされるインドと中国を訪問し、両国の金融当局の関係者と意見交換をした。

「水没マップ」で両国は最も下、すなわち主要国のなかで最も金利が高い状況にある。

 日本を始めとしたマイナス金利下の「運用難民」にとっては、イールド確保の観点からは高金利であるインドや中国の債券市場に注目が向きやすい。

 しかし現実にそうした動きがまだ高まっていないのは、インドや中国の市場流動性を中心に投資家を受け入れるインフラが整備されていない面があるからだ。

 金融当局の関係者との意見交換で、筆者は資本市場の整備とそれに伴う海外からの投資資金受け入れの重要性を指摘したが、一方で、インドなどへの投資がそれほど増えていないのは、日本の投資家側の習熟度が不十分という面もある。

 しかし、今の運用の課題を考えると、投資家は従来もっていた運用範囲を拡大して対処せざるを得ない。インドなどの新興国への運用拡大は、新たなフロンティアを目指す「LED戦略」の一つの帰結である。

超長期債を取り込むことは
避けて通れない

 またリスク管理の視点を持ちつつも、「LED戦略」の「L」の超長期の取り組みは避けられない。

 すでに金利低下局面になったとすれば、超長期の取り組みは、第一に視野に入る分野でもある。

 日本における国債の最長期は40年債だが、海外ではでは50年債を含め超長期の国債の発行が行われ、100年債が発行された国も増えている。

 日本でも今月、三菱地所が50年債発行を発表したが、グローバルな低金利の長期化のもとでは超長期分野の債券をどう取り込むかも運用上の重要な課題になるだろう。

 運用者によっては内部規定で、超長期への運用を控えるところもあるが、今のような環境では超長期ゾーンをポートフォリオに取り込むことは避けて通れないように思う。

 2019年は昨年とは金利局面が大きく次元が転換したと考えるべきだ。金利水没国が拡がる状況では「LED戦略」の意義は一層、高まる。

(みずほ総合研究所 副理事長/エグゼクティブエコノミスト 高田 創)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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