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米国初のCRISPRによるがん治療、ペンシルベニア大で始まる

2019年04月18日 19時24分更新

文● Antonio Regalado

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遺伝子編集ツール「クリスパー(CRISPR)」を用いて、2人のがん患者の血液細胞を強化する治験が実施されている。

ペンシルベニア大学で進行中のこの研究は、ヒトのT細胞の遺伝子を改変してがん細胞を攻撃させ、破壊しようとする試みだ。現在、肉腫患者と多発性骨髄腫患者の合わせて2人をこの方法で治療中であることを大学の広報担当が認めた。

この先駆的な研究の計画が最初に報じられたのは2016年のことだ。だが、研究が始まったのは遅かった。一方、中国の病院では、類似の取り組みが何例も始まっている。米国の高名ながん専門医であるペンシルべニア大学のカール・ジューン教授は、CRISPR利用における中国の先行を、遺伝学におけるスプートニク(史上初の人工衛星)にたとえている。

患者にCRISPRの手法を適用するためには、体内から取り出した細胞を使うのがより安全で簡単だ。今回の新たな研究でもこの方法が採用された。医者が患者から血液を採取し、免疫細胞の遺伝子を編集した後、患者の体内に戻している。

遺伝子編集では、T細胞にがんを攻撃させる遺伝子を1つ加え、免疫システムの防御を止める可能性があるPD-1と呼ばれる別の遺伝子を取り除いた。

PD-1の働きを抑制する医薬品は、免疫療法として知られており、いくつかのがんの治療で画期的な効果を上げている。これと同じ効果を、T細胞のDNAに直接導入しようというアイデアだ。

ペンシルバニア大学のがん研究は、CRISPRを使って現在実施されている多くの医学的治療の1つである。たとえば欧州では今年、ベータサラセミア(地中海性貧血)と呼ばれる遺伝性疾患の患者が初めてCRISPRによる治療を受けた。

今回の研究は、ナップスター共同創業者でフェイスブックの初期投資家でもあるショーン・パーカーが創設したパーカーがん免疫療法研究所と、Tミュニティ(Tmunity)というスタートアップ企業の資金提供を受けている。 パーカーはT細胞を、再プログラミング可能な「小さなコンピューター」になぞらえている。

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