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国内ではNTT Comが専有型GKEサービスを提供

Googleは「Anthos」でどのようにマルチクラウドを実現し、普及させるのか

2019年04月18日 13時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 Googleは2019年4月9日~11日(米国時間)の3日間、サンフランシスコでGoogle Cloudの年次イベント「Google Cloud Next 2019」を開催した。今回の目玉となった発表は、コンテナベースでハイブリッド/マルチクラウドを実現するプラットフォーム「Anthos(アンソス)」のGA(一般提供)だ(関連記事)。

マルチクラウドプラットフォーム「Anthos」が登場

 Anthosは、昨年のGoogle Cloud Next 2018で初披露したGKE(Google Kubernetes Engine)とGKE On-Prem(オンプレミス版GKE)のハイブリッドクラウド構想「Cloud Services Platform(CSP)」に、AWSやAzureなど他社クラウドともアプリケーションのポータビリティを保証するマルチクラウドのシナリオを追加したものだ。GAにあわせてCSPをAnthosにリブランドした。

 コンテナ化したアプリケーションを、クラウドのGKE、オンプレミスのGKE On-Prem、AWSやAzureなどの他社クラウドにまたがってデプロイし、Google Cloud Platform(GCP)の管理コンソールから統合管理する。サーバーレスやマイクロサービスのアーキテクチャ、GCPのDevOps関連サービスと連携したCI/CDに対応し、アプリケーションや開発プロセスをモダナイズする。

 AnthosのGAにあわせて、オンプレミスや他社クラウドのVM(仮想マシン)にあるアプリケーションを、変更を加えることなくGKEへ移行するマイグレーションツール「Anthos Migrate」も発表された。Anthos Migrateを使うことで、アプリケーションのリフト&シフトとモダナイゼーションを一足飛びに実現できる。

NTT Comの「Enterprise Cloud」からGKE On-Premサービスを提供

 Anthosの実態は、GCPのマネージドKubernetesサービス「GKE」、GKEをオンプレミス環境に構築する「GKE On-Prem」、ハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境でコンテナアプリケーションのポリシーを管理する「Anthos Config Management」、サービスメッシュIstioのマネージドサービス「Istio on GKE」、サーバーレスフレームワーク「Knative」などで構成されるソフトウェアスタックだ。

 オンプレミス側の環境は、GKE On-Premソフトウェアの動作に必要なVMware vCenter Server 6.5が入った汎用サーバーと、F5 BIG-IPロードバランサ―があればユーザー自身で構築できる。また、Cisco、HPE、LenovoなどがAnthosのハードウェアパートナーとしてGKE On-Premを構築済みのハイパーコンバージドインフラストラクチャーを提供することを表明しているほか、AnthosのSIパートナー各社がマネージド型でGKE On-Premを利用できるソリューションを用意する。

 国内では、NTTコミュニケーションズがAnthosのSIパートナーとしてベアメタル上にGKE On-Prem環境を構築し、同社のクラウドサービス「Enterprise Cloud」から専有型クラウドの形態で提供する(2019年度中にサービス開始予定)。あわせて、同社のデータセンターサービス「Nexcenter」に顧客のGKE On-Prem環境を設置するコロケーション型サービスや、同社の閉域ネットワークサービス「Universal One」を使ったAnthosのハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境を提供していく予定だ。

NTTコミュニケーションズが「Enterprise Cloud」から提供するGKE On-Prem環境

Anthosが実現するマルチクラウドとは

 今回のGoogle Cloud Next 2019では、AnthosによるGKEとGKE On-Premによるハイブリッドクラウドが利用可能になったことがアナウンスされた。一方で、AWSやAzureなど他社クラウドをまたいでコンテナアプリケーションをデプロイしてGCPから統合管理するマルチクラウドのシナリオについては、構想の発表にとどまり、まだ詳細が明らかにされていない。

 GCPのGKEと同様に、AWSにはAmazon EKS、AzureにはAKS(Azure Kubernetes Services)というマネージドKubernetesサービスがあり、各社のプラットフォームはCNCF(Cloud Native Computing Foundation)による認定を受けてコンテナのポータビリティが保証されている(関連記事)。しかしながら、Google Cloud カスタマーエンジニア 技術部長の佐藤聖規氏は、「Anthosの思想は、マネージドではない環境をマネージド化していくというもの。Anthosによるマルチクラウドはすでにマネージドで提供されているEKSやAKSと連携するのではなく、“GKE on AWS”や“GKE on Azure”のようなAnthos専用の環境を他社クラウド上に用意する形で開発する予定だ」と説明した。

左から、グーグル・クラウド・ジャパン Google Cloud カスタマーエンジニア 技術部長の佐藤聖規氏、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の阿部伸一氏、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 ホスティング部門 部門長 角守友幸氏

日本市場でAnthosをどう普及させるのか

 前述のように、Anthosは、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドのシナリオに加えて、サーバーレスやマイクロサービス、CI/CDのシナリオを含む、コンテナベースでアプリケーションをモダナイズするプラットフォームだ。国内市場をみると、コンテナやサーバーレス、マイクロサービスへの技術的な関心は高まっているものの、企業が実導入した事例はまだまだ少ない。

 日本市場でAnthosは使われるのか――。これについてGoogle Cloud 日本代表の阿部伸一氏は、「5年後のビジョンがある企業であれば、単なるリフト&シフトではなくモダナイゼーションまで考えている。Anthosでは、マイグレーションツールを使って簡単にモダナイズができるのでユーザーの心理的な障壁は少ないのではないか。自動化、マイクロサービス化と難しく考えずに、Anthosによるコンテナ化は“サーバー仮想化の延長”くらいのイメージでとらえてもらえればいい」と語った。

グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の阿部伸一氏

 他社クラウドもハイブリッドクラウドやマルチクラウドの戦略を打ち出している中、Anthosはどのように勝負するのか――。「GCPはエンタープライズ市場で影響力のあるOSSとの親和性を全面に出して、Anthosをエンタープライズのお客さんに訴求していく」(阿部氏)。Google Cloud Next 2019では、MongoDB、Redis、Elasticなど基幹システムでも使われるデータベース関連OSSの開発元企業7社と、Googleがパートナーシップを結んだことが発表されている(関連記事)。

 また、阿部氏によれば、Google Cloudの新CEOとしてオラクルから移籍してきたトマス・キュリアンの方針で、目下、日本法人でもエンタープライズ営業の大規模増員を進めているという。「テクノロジーのバリューは大事だが、今Googleには、それがビジネスのバリューにどう変換されるかを語れる営業人材が必要だ」(阿部氏)。かつて、GCPといえば使いたければ使えば?のスタンスだったが、キュリアン新体制のGCPは、「顧客のニーズを聞く。このマインドセットを全社で加速する」(阿部氏)という方向に変化していく。

「Anthosが誕生したきっかけはシスコ」――Google FellowのEric Brewer氏

 Google Cloud Next 2019でAnthosが登場したが、昨年発表されたシスコとのパートナーシップによるCisco HyperFlexとGKEのハイブリッドクラウドソリューション(関連記事)はどうなったのだろうか。

 Google FellowのEric Brewer氏によれば、Anthosとは別に、シスコとのハイブリッドクラウド分野でのパートナーシップは継続しているという。

Google FellowのEric Brewer氏

 「昨年、シスコから相談を受けてGoogleはオンプレミスとGKEのハイブリッドクラウドソリューションに取り組みはじめたわけですが、シスコと何度も話し合ううちに、顧客がハイブリッドクラウドに対してより多くのことを望んでいることに気が付きました。マルチクラウドのニーズにも気が付きました。そこで、我々は(シスコとの取り組みよりも)広い枠組みでハイブリッドクラウド/マルチクラウドを定義し、そうして誕生したのがAnthosです」(Brewer氏)。


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