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東芝LNG売却破談へ、米中貿易戦争を口実にする中国企業の真意

文● ダイヤモンド編集部,堀内 亮(ダイヤモンド・オンライン

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東芝は4月11日、LNG事業売却についてENNから契約解除要求があったと発表。売却計画は暗礁に乗り上げそうだ Photo:PIXTA

 東芝の“負の遺産”であるLNG事業について、買収することに合意していた中国企業が破談を切り出した。理由の一つとして「米中貿易戦争の影響」を匂わせたが、それは“口実”。実際は別の損得勘定が働いた。

 東芝が中国の民間ガス大手ENNグループに譲渡予定だった、米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)プロジェクト「フリーポート」について、ENNはこのほど譲渡契約の解除を要求した。東芝は2018年11月、ENNとフリーポートの譲渡契約を結び、最大1兆円の損失に膨らむ可能性があったところを930億円の“出血”で抑えられるはずだった。

 ENNの解除要求により、東芝は19年3月期決算の損失額の取り扱いを再検討せざるを得なくなりそうだ。19年度からスタートする中期経営計画「東芝Nextプラン」で再建を目指すが、切り離せなくなった“負の遺産”はその足かせになりかねない。

 当初から市場関係者は東芝とENNとの譲渡契約を懸念していた。というのも、東芝がフリーポートの譲渡契約を発表した昨年11月は、米中貿易戦争の真っ只中。東芝がフリーポート売却に当たってENNに米国の子会社の株式を譲渡するには、対米外国投資委員会(CFIUS)から承認が必要だ。アナリスト向けの説明会では、承認が得られるのか疑問視する声が上がっていた。

 それに対し、東芝側は「ENNは過去にCFIUSを通っているので、成立の蓋然性は高い」と楽観視していた。

 結局、予定していた今年3月末までにCFIUSの承認が得られなかった。ENNは東芝に契約解除を求めた理由の一つに、CFIUSの承認がなかったことを挙げている。その点で、米中貿易摩擦は影響しているだろう。

 しかし、業界関係者の中には「ENNが米中貿易戦争を“利用”した」との見方を示す者もいて、「東芝より、ENNが一枚も二枚も交渉が上手だった」と言う。これはどういうことなのか。

東芝との契約より良い案件を物色

 前出の業界関係者は、契約が合意後に相手が再度検討しやすい内容になっていたと指摘する。

 東芝が2013年に米フリーポート社と結んだ契約は、19年から20年間、年間220万トンのLNGを引き取るもの。この契約価格は今のLNG取引相場に比べ「かなり高い」(市場関係者)ため、ENNは東芝との契約で現在の相場の差額を補塡する「一時金」を東芝がENNに支払うことを盛り込んだ。

 加えて、契約完了の時期を今年3月末とし、それまでにCFIUSや中国政府の承認を得るとすることを条件にしていた。ENNはこの条件を利用し、今年3月末までにさらに詳細な調査を進めて、東芝との契約より良い案件を物色。今のLNG取引相場を見ればより魅力的な案件は多く、東芝との契約にこだわる必要はないと判断したと思われる。

 米中貿易戦争の影響でCFIUSや中国政府の承認が下りなかったというのは、「体のいい断り文句」(業界関係者)に過ぎないというわけだ。

 そもそも東芝のフリーポートは、買い手にとって非常にハードルが高い案件だった。今のマーケットは市場の流動性を高めようと、伝統的な長期契約(15〜20年)から、より短期の契約にシフトして調達柔軟性を高めるのが主流だ。にもかかわらず、同プロジェクトの契約は20年と長い。

 ハードルはさらに上がっている。東芝が契約したのは「第3トレイン」と呼ばれる、3番目に建設される案件。17年にテキサス州を襲ったハリケーンや雇用問題の影響で、大きく工期が延びていて第1トレインの商業運転が年内にようやく始まる見込み。第3トレインの商業運転は遅れに遅れるのが目に見えている。

 再び譲渡先を探すとなると、昨年の譲渡交渉で登場した石油メジャーの米エクソン・モービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどの超つわものが交渉相手の候補に挙がるが、「買い叩かれても仕方がない」(業界関係者)状況にある。

(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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