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王者セブンに先んじてファミマが「本気の時短実験」に踏み切る理由

2019年04月12日 06時00分更新

文● ダイヤモンド編集部,岡田悟(ダイヤモンド・オンライン

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大胆な時短実験を打ち出したファミリーマートの澤田貴司社長。9月から親会社と統合し、その社長となる Photo by Satoru Okada

24時間営業問題に手をこまねいているセブン‐イレブンを尻目に、業界2位のファミリーマートが大掛かりな深夜営業中止の実証実験に乗り出す。結果次第では、フランチャイズ契約を見直す可能性にまで言及した。なぜセブンよりも思い切った手が打てるのだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

 24時間営業問題で揺れるコンビニエンスストア業界。2番手が、より踏み込んだ対応に乗り出す。

 国内コンビニ2位のファミリーマートが4月10日、深夜閉店してその影響を調べる実証実験を6月から行うと発表した。対象となるのは都内と長崎県、秋田県の一部のエリアで、約270店に上る。

 今年2月、大阪府東大阪市で独自に時短営業を始めたセブン‐イレブンの加盟店オーナーと本部との対立が明らかになって以降、加盟店に24時間営業を事実上強制しているコンビニ本部への批判が集中。経済産業省も負担軽減を求めている。

 業界最大手のセブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)は、3月から10店舗で時短営業の実験を始めている。だが新たに就任した永松文彦社長は記者会見で、実験の最中であるにもかかわらず店舗の売り上げが下がるとの見通しを示し、「それを明確にするためにやっている」と明言。“結果ありき”であることを社長自ら暴露してしまった。

ファミマは「加盟店の利益も検証」

 ファミマが始める実証実験は、希望する加盟店を募り、参加する店舗数が約270店になるなどSEJよりも規模が大きい。

 加えて、実験の条件も細かく設定。東京都文京区と長崎県の約120店では日曜日のみ、東京都豊島区と秋田県の約150店では毎晩、深夜営業を中止する。また、閉店する時間帯も2~3パターンに分けて加盟店が選択するなど、検証項目も実践的だ。

 立地や雇用環境にもよるが、時短営業によって、店舗の売り上げや粗利益が減って本部が徴収するロイヤルティーが減る一方、加盟店側の利益が増える事態が想定される。実際に前出の東大阪のセブンオーナーは、「深夜閉店で店の利益は増えた」などと話している。

 結果如何では本部の利益減につながりかねない今回の実証実験について、ファミマの澤田貴司社長は、「日商(店舗の1日当たりの売上高)と加盟店の利益への影響を検証し、結果には真摯に向き合って対策をとる」と明言。親会社であるユニー・ファミリーマートHDの髙柳浩二社長は、「結果によっては、フランチャイズ契約の見直しに踏み込むこともないとは言えない」と言及した。

 SEJ首脳が記者会見で加盟店の利益への影響について問われ、言葉を濁した姿勢とは対照的だ。

 またファミマの実験では、一定のエリアで複数の店舗が異なる時間帯に閉店することで、物流や配送への影響も調べる。コンビニ各社の物流網は現在、24時間営業に最適化して構築されているが、これを見直す余地についても検証する狙いがある。

 他にも澤田社長は、本部が加盟店に無理な発注を強いた挙げ句、大量の廃棄が起きていると指摘される「季節商品」について改善策を発表。おせち料理とクリスマスケーキは完全予約制とし、土用丑の日のうなぎや恵方巻きも予約販売の割合を増やすことで、加盟店が大半を負担している廃棄を減らす方針だ。

 一方、業界3位のローソンも41店と少ないながら加盟店に時短営業を認めているうえ、9月末までに国内全店でセルフレジを導入する計画だ。セルフレジの全店導入を年内としているSEJに先行している。さらにローソンは、加盟店がなるべく食品を売り切り、廃棄負担を減らせる方策も今後発表する予定だ。

 なぜ業界下位2社の方が、SEJよりも先んじて対策が打てるのか。

政界、経産省に太いパイプ持つ商社の影響

 あるコンビニ大手幹部は、「ファミマとローソンのバックに商社がいることが大きい」と話す。現在、ユニー・ファミマHDは伊藤忠商事、ローソンは三菱商事が親会社となり、社長や幹部を送り込んで経営を主導している。また商社は、政界や経産省に太いパイプを持つことでも知られる。

 世耕弘成経済産業大臣は、フランチャイズ規制法の制定については否定的で、コンビニ各社に策定を要請している行動計画についても「あくまでも各社にお任せをしたい」と述べている。

 とはいえ、各社のトップを経産省に呼び出し、本部への不満があらわになった加盟店向けアンケートの結果を突き付けて対応を迫っているわけで、「経産省には相当強くネジを巻かれている状況だ」と前出のコンビニ幹部は話す。伊藤忠や三菱商事が、こうした意向を敏感に感じ取っていることは想像に難くない。

 一方でSEJは、イトーヨーカ堂が主導していた時代は三井物産との距離が近かった。しかし、“商社嫌い”の鈴木敏文・セブン&アイ・HD名誉顧問がSEJを率いて台頭して以来、両者は疎遠になった。

 現在、セブン&アイ・HD取締役の大半をSEJ出身の“鈴木チルドレン”が占めており、彼らに商社並みの人脈を期待することは難しいのかもしれない。

 もちろん経産省をここまで突き動かしたのは、社会の変化と世論の影響が大きい。

 変化に対応しろ――。鈴木氏が在任時に繰り返し強調していた言葉だ。24時間営業をめぐる社会の変化を、王者SEJはどう受け止めているのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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