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あのスタートアップは今:

うんことの戦いは続いていた 排泄予知デバイスDFree

2019年04月16日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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DFree Personal
5万3870円
トリプル・ダブリュー・ジャパン

 おなかに貼るだけで膀胱に尿がこれくらい貯まっているという情報をアプリに通知する排泄予知デバイス「DFree(ディー・フリー)」。超音波センサーで膀胱の変化をとらえることで排泄のタイミングを通知するヘルスケア製品だ。

 開発元のトリプル・ダブリュー・ジャパン中西敦士代表自身がうんこをもらした体験から開発をはじめた。2015年に排尿・排便予知デバイス開発のためクラウドファンディングを実施すると1200万円の開発資金が集まった。

 だがその後、DFreeは排尿・排便予知ではなく排尿予知デバイスとして、介護施設向け、また一般消費者向けに展開することになった。なぜうんこは消えたのか。中西代表にふたたび話を聞いた。


●うんこの壁は高かった

── READYFORのクラウドファンディングでは1200万円が集まった。

 当時としては大きかった。調達額は日本のクラウドファンディング市場トップ10に入っていたのではないか。ただ、クラウドファンディング以外で既に7700万円を調達していたので、お金というより利用者との接点ができたことがよかった。

トリプル・ダブリュー・ジャパン中西敦士代表

── どんな利用者が集まったか。

 想定よりニーズが大きかったのは介護事業者だった。それから介護施設におじゃまさせていただくようになった。介護現場でどんなことが困りごとがあって、何があれば助かるのか、夜通しいろいろな話を聞いた。介護資格や排泄の相談員の資格を取ったりもした。

── だがその後、DFreeは排便・排尿予知ではなく排尿予知デバイスとして展開した。当初のプロジェクトとしては失敗している。

 排便に期待していた方にはがっかりさせてしまう結果となった。はじめに一回リターンを延期していた。そのあと排尿予知だけできたところで「さらに延期するか」を検討し、全額返金した。「来年まで待ってくれ」といっても、介護現場では一年経ったら状況は大きく変わる可能性がある。場合によっては亡くなる人も出てくる。「しっかりしたものを作るので一回お金はお返します」という形にした。

── なぜうんこは消えたのか。

 実際に介護施設を見てまわると、困っている人数は排便より排尿のほうが多かったからだ。そして技術的にも排尿のほうが“取れ高”が多かった。

── 困っている人数が多いとはどういうことか。

 調査によれば、60歳以上では78%が何らか排尿の問題を抱えているという。また排泄介助については要介護3以上の人が対象だが、排便で悩んでいる人は、ほぼ100%が尿漏れでも悩んでいる。そして漏れた人からすれば、うんこでもおしっこでも嫌なのは同じだ。「尿ならいい」という人はいない。

※日本排尿機能学会による下部尿路症状に関する疫学調査(2002年)

── 技術的な取れ高が多いとはどういうことか。

 尿は便に比べてデータがとれる頻度が多い。また、膀胱は手前の方にあるが、便の予知で見る必要のある腸はその奥にあり、超音波で変化を捉える難易度も膀胱より高かった。当初は超音波センサーで直腸のふくらみを捉える方法を考えていたが、便が直腸にある段階だと「もうすぐに出てしまう」というレベルだった。

── 絶望しかない。

 介護施設では排便サポートのために下剤を投与することもあり、がまんするのも難しい。介護現場からは「本当は5分欲しいが、少なくとも1分は欲しい」といわれた。

── うんこの壁が高かったわけか。

 高かった。排尿については膀胱の大きさをはかる医療機器「ブラッダースキャン」があったが、便については前例がなかった。医療現場でも聴診器でおなかの音を拾って便秘症かどうか診断するとか、内視鏡を肛門に入れて腸が動いているかどうか確かめる方法しかないということだった。一から作らないといけなかった。開発も一度迷走した。「体に電気を通してデータを拾えないか」などの方法も試したがうまくいかなかった。「やはり超音波では?」と原点に戻り、昨年10月に「これならできそうだ」という、腸の動きを可視化する方法にたどりついた。

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