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Google Cloud Next’19レポート:GCPにマルチクラウドプラットフォーム「Anthos」が登場

「マルチクラウド」と「エンタープライズエコシステム」、Google Cloud 新CEOのトマス・キュリアンの戦略

2019年04月11日 14時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 Googleは2019年4月9日(米国時間)、サンフランシスコで開幕したGoogle Cloudの年次イベント「Google Next Cloud 2019」で、マルチクラウドプラットフォーム「Anthos」を発表し、同日から一般提供を開始したことをアナウンスした。

マルチクラウドプラットフォーム「Anthos」が登場

 Anthosは、昨年7月の「Google Cloud Next 2018」で発表した、Kubernetesによるコンテナアプリケーションプラットフォームをハイブリッドクラウドに展開して統合管理するビジョン「Cloud Services Platform」をリブランドしたもの。GKE(Google Kubernetes Engine)、オンプレミスのGKE On-Prem、およびAzureやAWSなどの他社クラウドにまたがって、コンテナアプリケーションをデプロイ、実行、管理することができる。

 Anthosのコンポーネントには、サービスメッシュIstioやサーバーレスフレームワークKnative、マルチクラウド環境でアプリケーションのポリシーを管理する「Anthos Config Management」などが含まれる。また、アプリケーションのパフォーマンスをモニタリングする「Stackdriver」、信頼されたコンテナのみをデプロイする「Binary Authorization」、CI/CDサービス「Cloud Build」などのGCPのサービスと統合されている。

 AnthosのGAにあわせて、VMをオンプレミスや他社クラウドからGKEへ簡単に移行するサービス「Anthos Migrate」が発表された。Google Cloud Director of Product Management Jennifer Lin氏のデモでは、Anthos Migrateを使ってVMにあるアプリケーションに変更を加えずGKEへ移行する様子と、GKEへ移行したアプリケーションが、GKE On-Prem、AWSに点在するコンテナアプリケーションとIstioで接続され、そのサービスメッシュの状態がGCPの管理コンソールからモニタリングできる様子が紹介された。

「Anthos Migrate」を使ってオンプレミスのVMを簡単にGKEへ移行

AnthosではGKE、GKE On-Prem、他社クラウドにに点在するコンテナアプリケーションのサービスメッシュがモニタリングできる

オンプレ側もマネージド型で利用可能

 Anthosのオンプレミス側の環境は、GKE On-Premソフトウェアの動作に必要なVMware vCenterが入った汎用サーバーと、F5 BIG-IPロードバランサ―があればユーザー自身で構築できる。

   より簡単に導入してマネージド型で使いユーザー向けに、AnthosのハードウェアパートナーであるCisco、HPE、Lenovoが、各社のハイパーコンバージドインフラストラクチャにGKE On-Premを搭載したアプライアンスを提供する。ハードウェアパートナーにはVMware、Intelも名を連ねており、各社がGKE On-Premの動作保証や運用保守を行うようだ。アプライアンスを使えば、クラウド側のGKEと同様にオンプレミス側の環境も自動で機能アップデートやセキュリティパッチの適用が行われるマネージド型で利用できる。

Anthosのハードウェアパートナー

 また、CitrixやVMware、NetApp、F5、MongoDB、Elastic、Neo4j、Confluent、DataStaxなど20社が、ISVパートナーとして自社ソフトウェアをAnthosに統合することを表明している。「Anthosと提携するISVは、自社ソフトウェアがAnthosによって様々なプラットフォームを移動しても、GCPの管理コンソールから課金のためのデータを収集したり、製品がどのように使われているかの統計データを得ることができる」(Google FellowのEric Brewer氏)。Anthosでは、GCP MarketplaceからISVパートナーの製品を含むコンテナアプリケーションをマルチクラウド環境へデプロイできる。また、顧客が自社で構築したアプリケーションをマルチクラウドへ配布するためのプライベートなマーケットプレイス「Private Catalog」も提供する。

パートナーが商売しやすいマルチクラウド環境へ

Google CloudのCEOに新任したThomas Kurian氏

 今年Google CloudのCEOに新任したThomas Kurian氏は、今回のGoogle Cloud Next 2019で、Google Cloudの新しいビジョンとして「ハイブリッドクラウド、マルチクラウドソリューション」、「エンタープライズエコシステムパートナーズ」を打ち出した。

Kurian CEOが示したGoogle Cloudのビジョン

 イベントの会期中、Anthosのほかにもハイブリッドクラウド、マルチクラウドに関連したGCPの新サービスがいくつも発表されている。新登場の「Cloud Run」はDockerイメージを持ち込むだけでステートレスなコンテナアプリを作成して、サービスURLを発行してくれるKnativeをベースとしたサービス。あらゆる言語で書かれたカスタムアプリケーションをマルチクラウド環境でサーバーレス運用できるようになる。「Traffic Director」はIstioをベースにしたサービスで、グローバルのGCPリージョンに分散するコンテナアプリケーションに対してポリシーやアップデートを一斉配布できる。ロードマップによれば、近い将来にAnthosのマルチクラウド環境でも利用可能になる予定だ。

 そして、Anthosを核としたマルチクラウド環境で、エンタープライズソフトウェアを提供する企業とのパートナーシップを強化していこうというのがKurian氏の戦略のようだ。今回のイベントでGoogleは、クラウドベンダーと対立していたビジネスOSS開発企業7社とのパートナーシップを発表した。7社のうち、MongoDB、Elastic、Neo4j、Confluent、DataStaxの5社とはAnthosのISVパートナーとしても協業している。GoogleはAnthosに関しても、課金のためのデータ収集、GCPからの一括料金請求といった点を挙げて、「パートナーがビジネスをしやすいマルチクラウド」を強調していた。

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