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アマゾン、セブン銀行、スバル…企業が成長する儲け方

文● 株式会社タンクフル(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:iStock/gettyimages

ビジネスの成功は、「儲ける方法」がカギとなることはいうまでもない。この「儲ける方法」は近年、インターネット、スマホ、AIなど新しいテクノロジーの誕生によって、大きく変化してきている。これから先、何十年も継続して利益を上げていく企業になるには、時代の変化に合わせて柔軟に「儲ける方法」を変えていく必要があるだろう。そこで今回は、新刊『図解 うまくいっている会社の「儲け」の仕組み』(青春出版社)から、従来の売り方のセオリーから、あえてビジネスモデルを変えた企業の取り組みについて抜粋して紹介する。

ネット通販最大手「アマゾン」は通販で儲けていなかった!?

 前回は、「儲けの仕組み」を変えることで新たなビジネスモデルを構築し、成功した企業について述べてきた。仕組み作りも非常に重要だが、儲けるためには狙うマーケット、場所についても考える必要がある。今回は、そんな儲ける「場所」に注目して成功した企業の取り組みを紹介していきたい。

 まずは、いわずと知れたインターネット通販の世界最大手「アマゾン」。その品数は3億5000万点とも4億点ともいわれ、書籍や衣料品、食品などの定番商品から、棺桶まで、「売っていないモノはない」とまでいわれている。

 そんな、アマゾンは、いったいどれくらい売り上げているのか。2018年の年間売上高は、約2329億ドル(約25兆6000億円)。このうちネット通販に関する売り上げは、約1229億ドル(約13兆5000億円)に達する。ちなみに、日本のアマゾンのネット通販の売上高は、約1兆5000億円。これには、ざっくり日本人全員、子どもから100歳のお年寄りまで全員が「年間に1万円以上」も、アマゾンで何かを買っている計算になる。

 これだけ売りまくっているアマゾンだが、じつは、ネット通販はそれほど儲かってはいない。2018年には、全世界で約1兆3600億円の営業利益を出したアマゾンだが、この利益はネット通販で得られたものとはいいがたい。

 アマゾンは、ネット通販のほかにも、さまざまな事業を展開しているが、その一つが、企業などがインターネット経由でアマゾンが保有するサーバーなどのコンピューター、ソフトウェアを使えるようにするクラウドサービスだ。「アマゾン・ウェブ・サービス」(AWS)と呼ばれているもので、アマゾンでは今、このクラウドサービスの事業が年率50%もの勢いで急成長している。注目すべきはその利益。AWSの売上高は年間約257億ドル(約2兆8270億円)と、アマゾンの売り上げ全体の10%強にすぎないが、営業利益はなんと約8000億円にも達する。つまり、アマゾンは、AWSの事業で6割以上を稼いでいるのだ。

 今や、アマゾンの利益の6割という稼ぎ頭となったAWSだが、アマゾンがAWSの事業を開始したのは、今から10年以上前の2006年。じつは、「世界で最初にクラウドサービスを始めた会社」ともいわれている。インターネットなどのネットワークを経由して、コンピューターやソフトウェアを利用するという考え方そのものは以前からあったが、一つのサービスとして多く企業に提供したのは実はアマゾンが世界初なのだ。

 今や、世の中の企業のほとんどは、なんらかのクラウドサービスを利用しているとされている。そんな現状から今後もAWSの事業は成長を続けていくと予想される。ちなみに、企業の価値の指標に時価総額があるが、2019年1月7日時点でアマゾンは約7970億ドル(約88兆円)で世界トップとなった。ちなみに日本でトップのトヨタ自動車が約25兆円だから、そのすごさがわかるだろう。「地球上、最も豊富な品揃え」を実現した「ネット通販の大巨人」は、儲ける「場所」を変えることで、サーバーなどインフラも含めて提供する総合ネットサービス企業へ進化しつつあるのだ。

「セブン銀行」はなぜATMだけで儲かっているのか?

 次は、「セブン銀行」。街中や駅にあるセブン銀行のATMを利用する人も多いのではないだろうか。銀行の従来のビジネスモデルといえば、個人や企業から利子を払ってお金を集め、そのお金をより高い利子を取って個人や企業に貸し付けて利ザヤを稼ぐことだ。

 だが、セブン銀行のビジネスモデルはこの常識を大きく覆す。普通預金、定期預金、カードローンなど、「普通の」銀行と同じようなサービスはあるものの、支店がないセブン銀行は「金利○○%、ぜひ、セブン銀行の定期預金を」などというチラシを顧客に配布することもない。個人や企業からの預金の獲得に積極的に取り組んでいるようにも見えないし、企業に大型融資をするわけでもない。支店がないから人件費もほぼかからない。それが儲けの秘密ともされるが、それだけではないのだ。

 店舗の代わりにあるのが、全国に2万4756台設置された(2018年9月末時点)幅45センチメートル・奥行60センチメートルの「セブン銀行ATM」である。実は、セブン銀行の利益を稼ぎ出しているのは、このATMの利用手数料なのだ。

 セブン銀行と提携している銀行の中には、利用客が一定の条件を満たしていれば月数回まで手数料を無料にしているところもあるが、通常、利用者は時間帯によって1回の引き出しで108円や216円といった手数料を取られる。その手数料収入はいったん銀行に入り、その後一部がセブン銀行に戻される。それこそが、セブン銀行の収益の柱だ。

 全国に2万5000台近くあるATMの1台あたりの1日平均利用件数は94.1回、年間総利用件数はなんと 8億1500万件だ。そうした数字を掛け合わせた結果、セブン銀行単体の売上高にあたる経常収益1166億円のうち、約91%にあたる1059億円をATMが稼ぎ出しているのだ。

 そもそもセブン銀行は、セブン&アイ・ホールディングスのグループで、そのグループ内で利益の絶対額を比べると、セブン-イレブンに遠く及ばない。しかし、ATM1台が占める面積はわずか0.27平方メートルだ。セブン-イレブンの平均的な床面積の約100平方メートルと比べると、370分の1にしかならない。単位床面積あたりで比較すると、セブン銀行の利益はセブン-イレブンの約37倍にも達する。ATMを設置しておくだけで、「極めて高収益」を上げる仕組みであることがわかるだろう。

 では、セブン銀行の親会社であるセブン&アイ・ホールディングスは、なぜこのような「ATMを通じて入ってくる手数料で成り立つ銀行」という常識破りの銀行を始めたのか。それは、定期的に実施している顧客向けアンケートで、「セブン-イレブンで何ができたらうれしいですか」と尋ねたところ、「銀行取引」という回答が常に上位に入っていたからだという。まさに、顧客の声から生まれた“新たな儲けの場所”なのだ。

あのトヨタも勝てない、スバルの“本当の強さ”とは!

 最後は、有名自動車メーカーの「スバル」。日本の自動車メーカーのうち、乗用車を生産しているメーカーは現在7社。売上高の高い順から、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、スズキ、マツダ、SUBARU(以下スバル)、三菱自動車となる。1位のトヨタの売上高は約29兆円(2018年3月期)。2位ホンダの約15兆円の倍でダントツだ。対して、6位のスバルの売上高は約3兆4000億円(同)。じつに10倍近い開きがある。

 それでは、この2社の営業利益を見てみよう。トヨタの2兆3795億円(同)に対するスバルのそれは3794億円(同)。やはり6倍以上の差がある。世界販売台数はどうだろうか。トヨタ896万4000台(同)に対し、スバルは106万7000台(同)。やはり8倍以上の開きがある。これだけ開きのあるトヨタとスバルの実力差だが、じつはさすがのトヨタもスバルに敵わない数字がある。それは、売れた車1台あたりの営業利益だ。単純に前述の営業利益を販売台数で割り算してみると、トヨタは約26万5500円、スバルは約35万5600円と、ここで一気に逆転する。それどころか、じつはスバルは、販売台数1台あたりの営業利益で、ここ5年間、一度も他の国内自動車メーカーに1位の座を譲ったことはないのだ。

 では、なぜスバルは1台あたりの営業利益がそんなに高いのか。それは、わかりやすくいえば、「選択と集中」「差別化」という、ビジネスのセオリーを実直に実行しているから。そして、もう一つがブランド力だ。

 まず、スバル流の選択と集中とは何か。現在、スバルは「自社で生産した」軽自動車をラインアップしていない。販売している軽自動車はダイハツのOEM(相手先ブランドでの生産)のクルマのみ。自動車メーカーとしてのスバルの名を高めたのは、1958年に登場して一世を風靡した軽自動車「スバル360」だったが、2008年に軽自動車の開発から撤退すると発表し、2012年には54年にわたる軽自動車の生産を終了した。理由は、低価格なクルマでは、儲からないからだ。その結果、今、販売している自社製の車種で一番低価格のモデルは、1.6リッターエンジン搭載のインプレッサで、車両本体価格は約180万円(税抜)だ。低価格帯の軽自動車を捨て、中価格帯以上のモデルを「選択」し、そこに経営資源を「集中」している。

 また、スバルの「水平対向エンジン」も選択と集中、差別化のあらわれといえる。エンジンが平たく、車全体の重心も低くでき、スポーツ走行性能を上げられるなど数々のメリットを持つ水平対向エンジンだが、現在、世界中を見回してもこのエンジンを製造しているのは、ポルシェとスバルだけ。しかも、スバルは今や水平対向エンジンしか開発・製造していない。そこだけに資源を集中している。さらに、スバルのブランド評価が高い北米市場で集中して販売しているのだ。つまり、スバルは自分たちの「強み」にのみ徹底的に資源を投入して成功した例といえるだろう。

 今回紹介した3社に共通しているのは、従来のやり方でただターゲット層にモノやサービスを提供するのではなく、狙う市場を広げてみたり、自社の強みを活かして投資するなど「儲ける場所」を工夫しているのがわかるだろう。新元号「令和」となる新しい時代で企業が成長していくためには、このような「儲け方の工夫」が必須なのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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