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山谷剛史の「アジアIT小話」 第163回

タピオカミルクティーが推進させたベトナムのシェアエコノミー

2019年04月07日 12時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII編集部

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ライドシェアからの発展でのフードデリバリーはベトナムでも
タピオカミルクティーブームで同時に認知度アップ

 さて、バイクがたくさん走っている環境ゆえに、それをシェアする配車サービスがあるわけだが、バイクを使ったサービスはそれにとどまらない。バイクを活用したフードデリバリーが一気に盛り上がっているのだ。

たくさんのドリンクを手にデリバリーするドライバー

 そしてフードデリバリー人気を後押ししたのが、タピオカミルクティー。日本の都市でもそうだが、このホーチミンでもこの2年ほどでタピオカミルクティー店が急激に増えて、オフィスワーク時に社内で飲む人が増えているという。バイク便によるフードデリバリーは相性が良く、バイクデリバリーとタピオカミルクティー店が同時に人気になったことにより、相乗効果でともに急激に認知度を高めている。

 実際タピオカミルクティー店で待機したときはこうだ。赤いスタジャンを着たGo Vietのライダーが次から次に店にやってきて、各人が数杯、ライダーによっては10杯以上頼む。タピオカミルクティー店のスタッフは2人しかいないので、できあがるのには時間がかかるが、作ってるうちにまた別のGo Vietのライダーがやってきて注文するものだからたちまち狭い店内は赤いスタジャンの人だらけになる。なかなか圧倒される。

そんなわけで店内には普通のお客さん以上にライダーが集まる結果に

 もちろんGo Vietだけでない。Grab、そしてこちらでの飲食店のクチコミサイト「Foody(now)」もバイクによるデリバリーサービスを提供している。タピオカミルクティー店以外でもさまざまなジャンルの飲食店が対応していることをアピールするように、フードデリバリーのシールを入口に貼っている。

レストランでは各種キャッシュレス決済やデリバリーに対応していることをアピール

 GrabもGo Vietもキャッシュレス決済を利用し、その場合は割引になるため、ベトナムでも利用者は統計によると急速に増えている。もっとも増えているといっても元々の数が少ないので、トータルではまだ普及しているとはいいがたく、ちょっと街歩きした程度では、キャッシュレス対応の店や実際に利用する人を見ることは難しい。

中国の後追いが基本のベトナムのネット文化だが
決済だけは現金やクレカもまだまだ使える

 またベトナムは、ネットにおいては以前から一貫して中国の後追いの国である。ネット規制が中国の後追いなら、ネットワークセキュリティー法も中国の網絡安全法の後追いだ。またPC時代もスマホ時代も中国のゲームが人気である。そんなベトナムのホーチミンで中国で人気のガラス張りの「無人カラオケボックス」や「シェアバッテリー」やマッサージ機がほぼそのまま中国から持ってこられている。

中国の製品のローカライズのような無人カラオケボックス

 ただし中国では支付宝(Alipay)や微信支付(WeChatpay)でしか利用できなかったシェアバッテリーはベトナムではクレジットカードでも可能となり、ひとりカラオケやマッサージ機は現金も利用可能である。ベトナムではキャッシュレス決済のスマホアプリを入れていなくても、中国的な新しいサービスをクレジットカードや現金で利用できるというわけだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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