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セブン、「24時間営業死守」の本音を見せつけた新社長の就任会見

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

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セブン‐イレブン・ジャパンの永松文彦新社長 Photo by Yoko Suzuki

24時間営業は死守したいという本音が“見え見え”。それどころか、注目の新社長自身が、深夜閉店の実験の目的はそのデメリットを明確にすることだと記者会見で認めてしまった――。国内コンビニエンスストア最大手、セブン‐イレブン・ジャパンの突然の社長交代劇は、現状維持に汲々とする同社の姿勢を見せつけた。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

 唐突の感を拭えないセブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)の社長交代劇。24時間営業問題などで大揺れの同社が大変革に乗り出すと見る向きもあるが、期待しない方がいい。

 古屋一樹前SEJ社長に代わって4月8日付で昇格するのは永松文彦副社長だ。入社以来、フライチャイズ契約先の加盟店対応に当たるオペレーション部門を歩んだ。2014年からは、親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のカタログ通販会社・ニッセンに副社長として出向し、立て直しに成功。その後はHD人事本部長として社員の「働き方改革」に取り組んだ。だから、「労務管理にも精通している」というのが井阪隆一HD社長の見解だ。

 4日の記者会見で、井阪氏は永松氏について、「加盟店オーナーの悩みにこたえられる十分な資質を持っている」と持ち上げた。

 永松氏自身も「国内コンビニ業界は非常に苦しく、根本的な変化の渦中にある」と現状認識を示したうえで、「今まで以上にきめ細やかに、個店の経営環境に合わせたサービス、商品、営業時間にする」と考えを述べた。

 24時間営業問題の詰め腹を切らされた形となった古屋氏は、会見に出席しなかった。

実験は“結論ありき”と認めた新社長

井阪隆一HD社長 Photo by Y.S.

 当然ながら、24時間営業の可否について会見では質問が集中。永松氏は、「個店に合わせた柔軟な対応をやる」と述べた。一方、井阪社長は、本部の直営店で深夜閉店の影響を調べる実験中であることを前置きした上で、「深夜営業によって生活基盤を得ているオーナーがいる。拙速に深夜営業をやめて、オーナーの生活やブランドを棄損してはならない」などと、慎重な考えを何度も強調した。

 そして極めつけは、新社長である永松氏の発言である。以下に引用しよう。

「私どもが30年くらい前、16時間営業から24時間営業に切り替えた時、2割ほど(店舗の)売り上げが増え、それに従って利益も増えた。オーナーからも『もっと早くやればよかった』との声が出た。午前7時開店だと、午前6時には(開店の)用意をし、閉店時刻が23時なら、閉店作業が(翌日の)午前0時過ぎに終わる。(閉店している)時間中に何もやらなくてもいいわけではない。だが24時間営業なら、オーナーは店の開け閉めをやらなくてもいい。その状況を(自分は)当時目の当たりにしている。(深夜営業の取りやめで)逆のことが起きると(売り上げなどが)かなり厳しくなるというのがある程度読めているので、それを明確にするためにテスト(直営店での実験)をやっている」

 なんと、現在の時短営業の実験があくまで、その“デメリット”を明確にすることが目的なのだと、新社長自らはっきり語ってしまったのだ。それも、昨今とは雇用環境がまるで異なる30年ほど前の実感に基づいて。

 いずれフランチャイズ加盟店の店舗でも行うとしているこの実験の“本当の結果”を語ることができるのは、もちろん日々現場で汗を流すオーナーだ。

 セブン‐イレブンや他チェーンなどのオーナーで作るコンビニ加盟店ユニオンの副執行委員長で、現役のセブンオーナーでもある吉村英二氏は、消費期限が迫った食品を閉店前に値下げして売り切る「見切り販売」が、時短営業の鍵になるとの認識を3月のユニオンの会見で示している。

見切り販売の質問には答えず退室

 実際に見切り販売をしている吉村氏によると、商品の種類や値下げを始める時間帯などを分析したうえで行わないと効果は出ないといい、「見切り販売のテクニックがない本部社員の指示で店のシャッターを閉めるだけでは、(廃棄の発生によって)赤字になるのは当たり前だ」と話す。

 この指摘について、井阪社長は会見後の囲み取材で、「そんなことはないですよ。ないと言えます」と強く否定。「商品の鮮度を延長する……」などと語り始めた時点で、広報担当者が「時間ですので申し訳ございませーん」と割りこみ、井阪氏を体ごと抱えて退室させてしまったので、詳細は不明だ。

 そもそもSEJの実験について、オーナーの反応は冷ややかだ。ユニオンの執行委員長で、ファミリーマートの現役オーナーである酒井孝典氏は、「今は世論に動かされて、実験を形だけやっているようにしか見えない。ほとぼりが冷めたら『深夜閉店は失敗だった』と言って終わるのではないか」との見方を3月の段階で示していた。そして、実験の最中であるにもかかわらず、新社長が4日の就任会見で予定調和の結論を暴露してしまった。

 社長交代会見という重要な場を“スルー”した古屋氏は、SEJ社長から代表権のない会長となる。もともと古屋氏は、日本のコンビニの“生みの親”と称されるセブン&アイ・HD名誉顧問、鈴木敏文氏の薫陶を受けており、“ミニ敏文(ビンブン)”とも呼ばれていた。自身の社長就任後も、鈴木氏にならって上意下達を徹底した経営方針を貫いたが、その結果、「鈴木氏時代の成功体験に強く囚われた古屋氏の下で、SEJは時代の変化に合わせた改革が遅れた」(あるコンビニ大手幹部)と言われている。

 今回、中核子会社のSEJ社長の首をすげ替えたのは、鈴木氏時代の旧弊を取り払うためだというトーンを会見中ににじませた井阪氏と永松氏。店舗規模拡大のスピード鈍化や、既存店への設備投資の増加などといったオーナー重視への方針転換をそろって強調した。

 だが、社会の大きな注目を集めている24時間営業については、「むしろ死守したいという本音が強固に感じられる」(あるセブンの現役オーナー)。一体、何のための社長交代なのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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