このページの本文へ

セブン-イレブン社長交代の裏にあった「持ち株会社との確執」

文● ダイヤモンド編集部,田島靖久(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
セブン-イレブン
Photo:DOL

セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブンの古屋一樹社長を退任させ、後任に永松文彦副社長が昇格する人事を決定した。古屋社長は代表権のない会長に就く。突然の社長交代の裏に何があったのか。(ダイヤモンド編集部編集委員 田島靖久)

表向きには70歳定年制と
24時間営業問題の引責が理由

「24時間営業の見直しはきっかけにすぎない。そもそも、経営トップに情報が迅速に伝わらない体制を変える必要があった」

 セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)傘下のコンビニエンスストア、セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)の社長交代人事を受けて、セブン&アイ関係者はこう語る。

 セブン&アイは、セブン-イレブンの古屋一樹社長を退任させ、後任に永松文彦副社長が昇格する人事を決定した。古屋社長は代表権のない会長に就く。

 社長交代劇の表向きの理由は、「70歳定年制」と「24時間営業問題」。古屋社長は69歳。定年が迫る中で、人手不足を原因としたフランチャイズチェーン加盟店(FC)から24時間営業の見直しを求める問題が起きたため、「その責任を取っての交代」というわけだ。

 24時間営業問題は、大阪府東大阪市のFC加盟店オーナーが、本部の合意がないまま営業時間の短縮に踏み切り、契約違反を主張するセブン-イレブンと対立。他の加盟店オーナーからも、24時間営業を見直すべきとの声が上がり、問題は深刻化している。これに対しセブン-イレブンも、一部の直営店で時間短縮の実験を始めるなど対応に追われている。

経営トップに情報が上がらないと
井阪セブン&アイ社長が不満

 しかし、FCオーナーの“反乱”は過去にもあった。24時間営業問題を始め、賞味期限切れで廃棄される商品にまで本部へのロイヤルティーがかけられるのはおかしいという声がFCオーナーから上がった「廃棄ロス問題」など、FCオーナーとセブン-イレブン本部との“戦い”は頻繁に起きていた。

 これまでであれば、こうした問題が発生すると、セブン-イレブンを2万店を超えるチェーン店に育て上げ「コンビニの生みの親」と呼ばれる鈴木敏文元会長(現名誉顧問)にすぐさま伝えられて迅速に対応、上手に“火消し”していた。

 ところが、2016年に鈴木元会長が突然退任。カリスマなき後、セブン&アイの井阪隆一社長や、セブン-イレブンの古屋社長などによる“集団指導体制”へ移行してから、グループ内に不協和音が生じ始める。

「今回の24時間営業問題もそうだが、現場のトラブルや問題、課題などが経営トップに伝わらず、勝手に対応していることに対し、井阪さんはかなりの不満を持っていた」

 あるセブン&アイ幹部はそう明かした上で、社長交代の理由について次のように続ける。

「古屋さんは 、鈴木元会長の経営哲学を始め、FC運営のノウハウなどを踏襲し、“ミニ鈴木敏文”と呼ばれるほど。豪腕で親分肌なところがあり、セブン-イレブンの中では信頼も厚かったが、それだけに持ち株会社とのコミュニケーションや意思疎通が図れていない面は否めなかった。そこで井阪さんは、定年までは1年あったものの、24時間問題をきっかけとして交代させたのだろう」

加盟店と経産省対応をこなし
新たなビジネスモデルが構築できるか

 では、後任の永松氏は、そうした問題点を解決できる人材なのだろうか。

「加盟店オーナーとやり取りをするオペレーションを経験、その後は本部の人事畑が長く、人事や労務に関する知識や経験が豊富な人物。また、2014年にはニッセンホールディングスの副社長として企業を再建した経験もあり、セブン-イレブンだけしか知らないという“井の中の蛙”が多い中で珍しいタイプだ」

 別のセブン&アイ幹部は“永松評”についてこう語った後、セブン-イレブンのチェーン運営については次のような見方を示す。

「これまでのような『どのコンビニよりも日販(1店舗の1日当たりの売上高)は高いのだから、本部の言うことは絶対に聞け』といった強引な運営から、対話型の運営になる可能性もある。店舗は飽和状態でしかも人手不足と、コンビニを取り巻く経営環境は厳しくなってきており、新たなビジネスモデルを構築できるかが問われることになるだろう」

 折しも、24時間営業問題に関して、世耕弘成・経済産業相などが強い関心を示しており、「人手不足で困っているなら、みんなが24時間営業をやることはない。地域の各チェーンが“輪番制”でやればいいじゃないか」といった“トンデモ発言”まで飛び出している。

 こうした政治の圧力をかわしながら、時代に対応した新たなビジネスモデルを構築することができるのか。就任早々、永松新社長には重責がのしかかる。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ