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コンビニ加盟店「反乱」の理由を読み解く7つの論点

文● ダイヤモンド編集部,岡田 悟(ダイヤモンド・オンライン

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セブンイレブンとファミリーマートとローソン
セブン-イレブンを模倣しながら成長してきたファミリーマートとローソンもまた、同様の問題を抱えている Photo by Satoru Okada

世界的に類を見ないサービスと商品力で高成長を誇ってきたコンビニエンスストア業界。だが、その陰で犠牲を強いられてきた加盟店オーナーがついに“反乱”を起こし、注目を集めている。過酷な深夜労働以外にも、問われるべき論点は数多くあるのだ。なお「週刊ダイヤモンド」編集部は、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)が昨年、東日本のある都市で開催したオーナー募集セミナーでの社員の説明時の音声を入手。そのうち、議論の対象となっている(1)24時間営業、(2)品揃え、(3)廃棄処分――の3点に付いての発言を編集し、プライバシー保護のため音声を加工したうえで、Youtubeにて公開している(4分46秒)
(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

 時代は変わった。従来、主要な経済ニュースにはなり得なかった「コンビニエンスストア加盟店問題」が、ここへきて注目を集めている。

 労働紛争の仲裁などをする国の中央労働委員会は3月15日、一部のコンビニ加盟店オーナーでつくる「コンビニ加盟店ユニオン」について、労働組合としての団体交渉を認めないと判断した。だが、今回の中労委の判断をもって、国内コンビニ業界に問題なしと考える人は、極めて少数であろう。

 経済産業省は昨年末から、全国の加盟店に対し、人手不足の状況や、本部とのフランチャイズ契約の在り方についてのアンケート調査を実施した。

 3月26日公表された結果によると、加盟店の6割が人手不足を訴え、半数が売り上げが減少したとし、4割が加盟したことに満足していないと回答。世耕弘成経産大臣は同日、大手4社の社長と4月初旬にも意見交換し、行動計画を策定させる方針を表明した。

 事の発端は、24時間営業を自主的に取りやめ、本部から違約金の支払いを求められたという、大阪府東大阪市のセブン-イレブンのオーナーの男性の訴えが2月に注目を集めたことだ。

 これにより、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は一部直営店での深夜営業中止の実験を始めた。だが、コンビニ加盟店をめぐる問題は、営業時間だけではない。業界最大手に敬意を表し“7つの論点”から説明しよう。

論点1 粗利分配方式の実態

 図(A)は、SEJが昨年オーナー募集セミナーの資料で示した月間売上高1800万円の店舗での収支モデルについて、都内の最新の最低賃金に基づいて本誌が試算し直したものだ。

 本部は粗利である540万円から、5割以上に当たる306万円を経営指導料(セブン-イレブン・チャージ)、いわゆるロイヤルティーとして徴収する。その料率は図(B)に示したように各社ともおおむね累進的で、店舗の粗利が増えるほど本部の取り分が増える計算だ。ただし「売上原価」には、売れ残りなど食品廃棄分を含まない。この是非はかつて最高裁判所まで争われ適法とされたが、後述するように加盟店の経営を苦しめる大きな原因となっている。

 いずれにせよ試算の結果、オーナーの最終的な収入である純利益はわずか21万3400円となった。ここからさらに税金を納め、社会保険料を支払うのだから、実際の手取り収入はもっと少ない。その要因も次の項目以降で解説する。

論点2 上がり続ける人件費

 人手不足によって、図(C)のように足元の最低賃金は上がり続けていて下がる気配がない。

 そして図(A)からも分かるように、従業員の雇用は加盟店の役割であり、その人件費を負担する。ところがロイヤルティーの料率は、人件費の上昇に合わせて緩和されたわけではない。

 かつて、安い労働力を活用できた時代はよかった。だが今では、多くの加盟店が人件費の上昇に苦しみながら、従来と変わらず高いロイヤルティーを本部に払い続ける状況に追い込まれている。

 また加盟店オーナーには、アルバイトなどの一定数の従業員が基準以上の労働時間まで働くと、社会保険料の支払い義務が生じる。従来“お目こぼし”されてきたコンビニ加盟店に対しても、日本年金機構はここ数年、未加入対策に力を入れており、保険料負担で一気に経営が悪化したり、義務を逃れるために法人を解散する加盟店が続出している。

論点3 売れ残っても潤う本部

 売れ残って廃棄される弁当などの食品が近年「フードロス」として問題視されているが、これも前述のように、独特の会計方式に原因がある。詳しく説明しよう。

 図(D)をご覧いただきたい。加盟店が原価400円の商品を1000個、40万円分仕入れ、500円の売価で900個、45万円分売れたとする。コンビニ会計でいう粗利は、その差額である5万円ではない。原価の総額から売れ残り100個分の原価計4万円を除いた36万円を売上原価とし、売上高45万円との差である9万円を粗利と見なす。

 ロイヤルティーの料率を便宜上一律で66.6%とすると、粗利9万円のうち本部の取り分は6万円、加盟店は3万円だ。ただし、売れ残り100個分の仕入れ原価計4万円は、加盟店が営業費用として負担する。よって加盟店は1万円の赤字となってしまう。すなわち、本部は仕入れさせた分だけロイヤルティーを稼ぐことができ、売れ残り分の損失を加盟店に押し付けることができるのだ。各社とも廃棄費用の一部を本部が負担する仕組みはあるが、廃棄される総額のごくわずかだ。

 商品の仕入れについて、本部は表向き、商品を「推奨」しているにすぎず、種類や量の決定権は加盟店側にあると説明する。

 だが、例えばSEJではオーナー募集の際、本部社員が「仕入れる商品を絞り込むと、売り逃しにつながります」「1店舗当たりの廃棄は、月平均で65万円程度です」と述べ、むしろ大量の仕入れと廃棄を“推奨”しているほどだ。

論点4 恐怖の契約更新

 コンビニ加盟店ユニオンは、本部側との契約更新の基準が明確に示されず、もし本部の意に沿わない行動を取れば、更新してもらえないなど不利な扱いを受ける恐れがあると訴えてきた。更新されなければ、オーナーは生活の糧を即座に失うこととなる。

 例えば、あるセブンの現役オーナーは「商品の仕入れが少ないと、本部社員が『ハードルが高くなりますね』などと、暗に契約更新との関連をにおわせる発言をする」と打ち明ける。

 加盟店が、消費期限が近い食品を値下げする「見切り販売」をすれば、売れ残りを減らして利益を増やすことができる半面、本部の取り分は減る。2009年の公正取引委員会の命令で、本部が加盟店にこれを禁じることはできなくなったが、実際、コンビニの店頭で値下げされた商品を見掛けることは非常にまれだ。

 コンビニ加盟店ユニオンの酒井孝典執行委員長は見切り販売について、「本部からは明確に禁止とは言われないが、『推奨しない』と言われる」と指摘する。契約更新で事実上、本部に生殺与奪の権を握られていると考える加盟店にとって、「推奨しない」は事実上の禁止に聞こえる――というわけだ。

論点5 ドミナント出店の功罪

 業界最大手であるSEJのホームページには「ドミナント方式(高密度多店舗出店)」を説明する箇所がある。同じエリアに何ヵ所も集中的に出店することで、消費者の認知度がアップして来店頻度が向上するほか、物流効率も良くなる――といったメリットがあると説明している。とりわけSEJがこれを盛んに進めている。

 SEJの古屋一樹社長は昨年6月の国内2万店記念パーティーで「半径5キロメートル以内でシェア70%とした結果、5年で1店舗当たりの売上高は55万円から69万円超に増えた」と、ある地域の事例を挙げて力説した。

 全国的にこんなバラ色の事例ばかりなら、加盟店から不満も出るまい。ところが同年5月、親会社のセブン&アイ・ホールディングスの株主総会では、株式を持つ加盟店オーナーが「近隣に別オーナーのセブンが開店した結果、1日の売上高が80万円から65万円に下がった」と訴えていた。契約更新と同様に「近くにドミナント出店されたら大変だ」と不安を募らせるセブンのオーナーは多い。

論点6 24時間営業の実態

「24時間営業は、ホスピタリティ。病院などと同じで、当たり前だと考えています」――。SEJのオーナー募集セミナーで、本部社員はこう強調した。なお病院では昨今、救急外来を中心に医師の非常に深刻な長時間労働が問題視され、見直しが議論されているところである。

 今年2月以降、コンビニ各社の幹部は、深夜の営業をやめることで「開店前と閉店後の準備と片付けが大変で、むしろ店を開け続けた方がオーナーの負担は少ない」「日中の売り上げも減少する」などと“デメリット”を盛んに喧伝するようになった。

 一方で、東大阪のセブンで深夜営業をやめたオーナーの松本実稔さんは本誌の取材に「売り上げは減ったが、深夜の人件費が浮いた分、最終的な利益は増えた」と話す。深夜、おにぎりが1個でも売れれば、売り上げと粗利が増え、本部は間違いなくロイヤルティーを得て潤う。だがその間の人件費は加盟店側の負担なのだ。

 また、各社とも本部は自社や取引先の投資によって、24時間営業に最適化した食品の製造や物流網を構築してきた。「店舗ごとに営業時間が異なれば、商品の配送は事実上不可能になる」(あるコンビニ首脳)との声もあるが、ある経産省幹部は「外食産業も時短に踏み切った。コンビニができないとは思わない」と意に介さない。

論点7 法令違反率95%

 表(E)をご覧いただきたい。東京労働局が17年度に都内のコンビニ269店を対象に実施した監督指導の結果、95.5%で法令違反が見つかった。従業員への残業代の未払いは3割を超える。他産業と比べても極めて高い数値であることは明白だ。

 雇用主である加盟店オーナーの労働法制に対する認識不足もある。ただ、人件費の上昇が続いて収入が減る中、残業代などを十分に支払えないケースも多いとみられる。こうした実態について、本部は加盟店側の責任との主張を貫いており、抜本的な対策を講じていない。論点2で指摘した加盟店従業員の社会保険の未加入についても、実態調査すらしようとしない。

* * * * *

 以上7つの論点で示した内容は、経産省のアンケートの自由回答欄にも同様の内容が書き込まれていると公表された。これまで本部はひたすら、新商品やサービスのPRに努めてきたが、加盟店や、そこで働く従業員の窮状が、広く国民や政府の知るところとなったわけだ。

 立場の決して強くない人々の犠牲の上に成り立ったビジネスが、これ以上の成長はおろか継続する保証などないことを、本部も消費者も心すべきである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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