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モバイルアプリのノンコード開発機能など備える“Madrid”、国内市場は案件急増で「人材育成が急務」

ServiceNow「Now Platform」最新版と顧客DXの支援戦略を説明

2019年03月19日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ServiceNow Japanは2019年3月18日、クラウドプラットフォーム「Now Platform」の最新バージョン“Madrid”の提供開始を発表した。モバイルデバイス向けの自社独自ネイティブアプリをノーコード/ローコードで開発できる機能をプラットフォームに組み込むなど、合計で600以上の機能強化ポイントがある。

Now Platformの最新版(Madrid)では、モバイルネイティブアプリをドラッグ&ドロップで開発できる機能が追加された(画像は開発したアプリのイメージ)

 同日行われたメディア向け説明会には同社社長の村瀬将思氏が出席し、Madridリリースの特徴のほか、日本データセンターの開設など、今年の“戦略市場”として注力している日本市場での取り組みについて説明した。

記者説明会に出席したServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏

モバイルネイティブアプリのノンコード開発など、600以上の新機能を追加

 Now Platformは、ServiceNowが展開する各種業務ワークフローSaaS(ITサービス管理、人事、カスタマーサービスなど)の提供基盤であると同時に、顧客企業やSIパートナーが独自機能/アプリケーションを実装するPaaSとしても提供されている。これにより、企業内のユーザーは単一のポータルからログインし、単一のユーザーエクスペリエンスで各種業務ワークフローを利用することができる。

ServiceNowでは「NowPlatform」をPaaSとして提供すると同時に、この単一プラットフォーム上に構築した各種業務ワークフローをSaaSとしても提供している

 ServiceNowでは、この単一プラットフォームを中核に据えたアーキテクチャ戦略を一貫して維持してきた。たとえば企業買収によって新たなアプリケーションや機能を獲得した場合でも、そのまま(別基盤のまま)連携させるのではなく、必ずNow Platformに統合するための再実装を行っている。

 今回リリースされた最新バージョン、Madridで追加されたモバイルアプリ開発機能「Mobile Studio」も、昨年ServiceNowが買収したスカイジラフ(SkyGiraffe)社の技術をNow Platformに統合し、プラットフォームの組み込み機能として提供するものとなる。

 Mobile Studioは、あらかじめ用意された画面テンプレートやコンポーネントを使い、Web GUI上のドラッグ&ドロップだけで誰でも簡単にiOS/Androidのネイティブアプリケーションが開発できる機能。これにより、カメラやGPS/地図といったモバイルOSの標準機能、フリック操作などに対応した自社独自のモバイルアプリを開発し、社内ユーザーに配布することができる。

モバイルネイティブアプリの開発機能「ServiceNow Mobile Studio」が追加された。昨年買収したスカイジラフ(SkyGiraffe)社の技術をNow Platformに組み込んだもの

 村瀬氏は、今回のMadridリリース開発においては「特に、ユーザーエクスペリエンスを左右する『デザイン』に力を入れた」と説明する。上述のMobile Studioもそのひとつだが、そのほかの新機能例として村瀬氏は、ITサービス管理(ITSM)アプリケーションの「Agent Workspace」機能を取り上げて紹介した。

 Agent Workspaceは、ITSMのサポート窓口(ヘルプデスク)担当者が利用するダッシュボード画面で、現在発生している問い合わせやインシデントの一覧、ユーザーや関連スタッフとのチャット、AIによる自動レコメンデーション機能も備えた関連ナレッジ(過去インシデントの情報など)の検索といった機能や情報を一画面に統合したもの。これにより、担当者の業務を効率化し、生産性を向上させることができるとした。

ITSM向けの新機能「Agent Workspace」。社内のITヘルプデスク担当者がインシデントを受け付け、関係者に問い合わせ、また過去のナレッジを参照するという一連の業務を単一画面にまとめ、効率化する

 そのほかにも、今回のMadridリリースでは「Slack」や「Microsoft Teams」「Workplace by Facebook」などからのサポート依頼(チケット起票)機能、ITオペレーション管理において過去のインシデント対応履歴に基づきアラートの優先順位付けを行う機能(Alert Intelligence)、ITSMにおけるDevOpsツールとのAPI連携や自動承認機能などが追加されている。

Now Platform Madridリリースでは750社のアーリーアクセス顧客がテストに参加したNow Platform、および各アプリケーション(SaaS)における主な新機能の概要(同社公開のインフォグラフィックより)

生産性向上につながっていない「働き方改革」を変えるDXプラットフォームへ

 村瀬氏は、ServiceNow Japanのビジネス戦略についても説明した。

 ServiceNow Japanでは昨年から、国内におけるプラットフォームビジネスの展開に注力している。今回の説明会でも村瀬氏は、ITSMのツールとしてよく知られるServiceNowだが、実際には「デジタルワークフロー」を実現する単一のプラットフォーム(=Now Platform)こそが本質であることを強調した。

 それではServiceNowは、Now Platformを通じて顧客企業に何を提供しようとしているのか。村瀬氏は、日本市場における企業の「働き方改革」の実態と関連づけて説明した。

 この数年間、政府が主導するかたちで「働き方改革」の必要性が叫ばれ、大企業を中心にその取り組みが進められてきた。今年4月には「時間外労働の上限規制」や「有給休暇の消化義務」なども罰則付きで定めた「働き方改革関連法」も施行される。しかし、日本企業における「働き方改革」は、「長時間労働の是正」や「柔軟な働き方」は実現している一方で「生産性向上」にはつながっていないと、村瀬氏は指摘する。

 「昨年10月に開催した『Now Forum Tokyo』の基調講演で、1300人の来場者に『働き方改革に取り組んでいるか』と尋ねたところ、ほぼ100%の方が手を挙げた。続けて『それでは生産性向上につながっているか』を聞くと、手が挙がったのは1300人中、わずか3人だった」(村瀬氏)

「1人あたりGDP」で日本の順位は大きく後退している。しかも「時短を進めようとしている一方で生産性が落ちている。将来どうなるのか」(村瀬氏)

 生産性を向上させるためには、一人ひとりが同じ労働時間の中でより多くの利益を生まなければならない。村瀬氏は、「働き方改革」で労働環境の改善を進めるのは「大賛成」だが、そこにとどまらず「ビジネスにおいて付加価値を創造する」取り組みにまで拡大しませんか、というのが顧客やパートナーに訴えているメッセージだと語る。それこそがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。

 付加価値創造を考えるうえではこの10年間、コンシューマー市場における変革を牽引してきた“デジタルディスラプター”、たとえばAmazon.comや楽天、Uber、Netflixといった企業の動きから学べばよい。こうした企業のサービスで提供されるものは、従来と同じコンテンツ(書籍や音楽、映画、タクシーなど)だ。ただし、従来とは違う消費プロセス、違うユーザーエクスペリエンス(UX)で提供することによって、新たな付加価値を生み出している。

 こうした付加価値を創造したのが、彼らのデジタルプラットフォームである。こうしたプラットフォームは一連の業務フロー(たとえばAmazon.comならば商品検索から購入、決済、配送まで)を管理しており、エンドユーザーは常に同じUXで利用できる。外部プラットフォームとも連携し、コンテンツ提供者ごとの違い、カード会社(決済手段)や配送会社ごとの違いはこのプラットフォームが吸収するため、エンドユーザーは常に同じUXが享受できる。こうした仕組みによってユーザーに対する付加価値を生み、プラットフォームへのエンゲージメントがより高まっていく。

 「過去の時代は人がテクノロジーに合わせていたが、DXの時代にはテクノロジーのほうが人に合わせてくれる。ユーザーから見れば、あるプラットフォーム上で“自分仕様”の便利な環境が実現している。安いから使うのではなく『便利だから使う』という付加価値が創出されている。われわれは、企業の中でDXを行う際もここを狙いましょうと言っている」(村瀬氏)

Amazon.comのような“デジタルディスラプター”は、これまでと同じコンテンツを、これまでとは違う消費プロセス/ユーザーエクスペリエンスで提供することで「新たな付加価値」を創出した
「この10年間はコンシューマー体験における変革が進んだが、それと同じように、今後3~5年間で業務体験を変える『ワークレボリューション』が起きる、と当社のCEOは言っている」(村瀬氏)

 こうしたDXを推進していくためには、企業自身やパートナーの中でServiceNowを理解し、Now Platform上でアプリケーション開発を手がけられる人材が必要となる。村瀬氏は、ServiceNow Japanやパートナーでは人材確保と育成に努めているが、それを上回るペースで開発案件が急増しており「人的なリソース育成が急務となっている」と説明した。

 「わたしがServiceNow Japanの社長に就任した2016年から、社員数は4、5倍に増えている。顧客数もほぼそれに比例している」「パートナーのリソース(開発人材)をどう増やしていくか、というのが今年の至上命題になっている。定期的に開催しているトレーニングもずっと満員で、やってもやっても追いつかない。裏を返せば『うれしい悲鳴』でもあるのだが……まだまだ足りないのが実情」(村瀬氏)

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