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サントリーが「天然水」のお茶投入、ペット緑茶戦争・春の陣

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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消費者にシールを貼ってもらう様子
2017年春に続き、リニューアル日が全く同じになったキリン「生茶」とサントリー「伊右衛門」。同日リニューアルをネタにした店頭キャンペーンで量販店はにぎわった Photo by Yoko Suzuki

ここ数年、出荷量で最高記録を更新し続ける緑茶市場だが、2019年は金額ベースで過去最高を上回ることが確実視される。だが、大手が全戦力を投じる熾烈な競争は過熱する一方だ。沸き立つ緑茶市場の春の陣を追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

 3月5日。緑茶飲料業界で“2年ぶり2度目”の直接対決があった。サントリー食品インターナショナルの緑茶ブランド「伊右衛門」とキリンビバレッジの「生茶」が同日にリニューアルしたのだ。

 春先のリニューアルは、小売店の棚割り見直しで自社製品を売り込むために飲料メーカーが毎年行う風物詩。とはいえ、全く同じカテゴリーの競合製品が、2回も同日にリニューアルすることは珍しい。「大型量販店でのサンプリング(試飲)の主導権を争う営業合戦が両社間で繰り広げられた」と流通関係者は話す。店頭では来店客が投票で雌雄を決するイベントが首都圏各地で催された(写真)。

 2018年は生茶と伊右衛門の明暗が分かれた年だった。

 生茶は2000年の発売後、一時は国内の清涼飲料の新製品販売最高記録を更新した栄光の過去もあるが、最近10年間は地滑り的凋落が続いていた。

 転機となったのは16年だ。それまで生茶は、急須で入れた緑茶の味を再現する競合製品の中で唯一、淡泊で清涼飲料的な味を維持してきた。だが、16年のリニューアルで大きく方針転換し「急須のお茶の味わいを大事にしながら、微粉砕茶葉を入れるなどして、進化した緑茶文化を提案した」(伊原綾乃・キリンビバレッジマーケティング部主任)。パッケージも高級瓶のようなデザインに切り替えた。

 飲料総研の調査によると、リニューアルにより16年の販売ケース数は前年比33%も増加。その後も17年は5%、18年は7%と市場全体の成長率を大きく上回る勢いで伸び続けている。

 一方、伊右衛門は特定保健用食品(トクホ)「特茶」の大失速により、18年はブランド全体で同5%ものマイナスとなった。挽回を期し「最高品質だけではなく顧客に寄り添うブランドイメージを新たに打ち出す」と多田誠司・サントリー食品インターナショナルブランド開発事業部課長は言う。

 宮沢りえ、本木雅弘が演じる“伊右衛門夫妻”の元をザ・ドリフターズのメンバーが訪れ、頭上にタライが落ちるというドリフコント風のものや、松坂大輔に本木が「妖怪か」と呼び掛けるものなど、由緒正しい京都のお茶というこれまでのスタンスとは大きく異なる新テレビCMは「腰を抜かした」(飲料メーカー関係者)と業界をざわめかせた。

 サントリーが起こすざわめきはこれだけではない。4月には本格的なお茶の味わいと違う形でごくごく飲める茶系飲料として、なんと「天然水」ブランドから“お茶”が発売されることが本誌の取材で明らかになった。

「液色も緑で、水と茶とどちらの棚に陳列すべきか迷っている」(別の流通関係者)と販売現場では戸惑いがあるものの、晴れて18年に日本で最も売れた飲料ブランドの座を獲得した天然水が緑茶市場にも触手を伸ばしてきた格好だ。

大手4社が全力投球
緑茶を制す者が清涼飲料市場を制す

 緑茶は清涼飲料全体の14%を占める巨大市場だが、11年から毎年出荷量を伸ばし続けている市場でもある。無糖飲料のブームや健康志向などの追い風も受け、金額ベースでも19年はこれまで過去最高だった05年の4475億円を14年ぶりに上回るとみられている。

 だが、緑茶は他のカテゴリーと異なり、同一市場に飲料大手が4社もしのぎを削る。どの企業にとっても中核商品として経営を左右するボリュームを持つからだ。だが「消費者は複数のブランドを買い回るのが通常で、コーヒー等と比べてもブランドロイヤルティーは低い」(井上元作・日本コカ・コーラ緑茶グループシニアマネージャー)という特徴がある。

 原材料は水と茶葉しかなく、差別化して“浮気性”の消費者の心をつかむためには商品開発や広告宣伝への投資が欠かせない。飲料市場の中でも最も厳しい戦場だ。

 18年末時点では年8990万ケースを売る巨人、伊藤園の「お~いお茶」をトップに、2位5700万ケースの日本コカの「綾鷹」、3位5370万ケースの伊右衛門、そして4位2940万ケースの生茶と続く。2位以下は乱戦模様で、毎年順位は容易に入れ替わる。

 首位の伊藤園は国内総流通量の4分の1の茶葉を調達する原材料調達力と、30年の歴史で築いた高齢者層からの圧倒的な支持で他を寄せ付けない。

 日本コカは18年に「茶葉のあまみ」「ほうじ茶」、トクホの「特選茶」という綾鷹のサブブランドを計3品も追加。女性・高齢者層など、これまで取り切れていなかった顧客層の奪取を狙う。出荷量、金額とも過去最高記録の更新を目前に、市場は過熱する一方だ。19年の初戦である春を迎え、メーカー側は到底「お茶でほっと一息」つけそうにない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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