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セブン、オーナー反乱のなか幹部が語った「今後の課題」の中身

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オーナーの反乱に揺れるセブンで 古屋社長の“代打”が語った対応策
Photo:DOL

元々予定されていた3月6日の講演を“都合により”急きょ欠席したセブン‐イレブン・ジャパンの古屋一樹社長。オーナーが24時間営業の見直しなどを訴える中、代わって登壇した幹部が「語ったこと」と「語らなかったこと」から、セブンの今後の対応を占う。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

「セブン‐イレブンとフランチャイズの歩み」――。3月6日から東京都江東区の東京ビッグサイトで始まった「フランチャイズショー2019」(日本経済新聞社主催)のオープニングセミナーに6日、冒頭のテーマで講演する予定だったセブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)の古屋一樹社長は、当日になって会場で「ご都合により」欠席とアナウンスされ、参加者から「え?!」との声が漏れた。

 無理もない。大阪府東大阪市で、本部とのフランチャイズ(FC)契約でセブン‐イレブンを営んでいるオーナーが、深夜営業の中止を決断。本部側から、契約違反であるとして違約金の支払いを求められたと訴えるなど、対立している。

 オーナーの男性は、共に店に出ていた妻をがんで亡くして精神的に苦境にある中、アルバイト従業員の確保にも支障を来たし、やむにやまれぬ決断だったという。

 この問題が2月に報じられて以降、世論の盛り上がりもあり、SEJのFC本部もついに、深夜営業の休止を一部店舗で実験すると3月4日に発表したほどだ。

 そんな中で、古屋氏に代わって急きょ講師を務めたのは、野田靜真・SEJ取締役常務執行役員リクルート本部長だった。その講演内容を基に、加盟店の“反乱”に見舞われたSEJの姿勢や今後の方針が垣間見える。

24時間営業の是非には言及せず

 結論から言うと、野田氏は、東大阪のオーナーをめぐる問題について、直接的には一切言及しなかったばかりか、24時間営業の是非、すでに発表している実験についても何も言わなかった。

 野田氏の“ボス”である社長の古屋氏の、24時間営業に対するこだわりは、強い。

 SEJに次ぐコンビニエンスストア業界2位のファミリーマートは、澤田貴司社長が就任以来、「過剰出店により、コンビニ市場は飽和状態」と発言し、SEJに先駆けて深夜営業休止の実験を行うなど、業界の常識にとらわれない姿勢を見せている。

 だが、業界の圧倒的な最大手であるSEJの古屋社長はこれまで、各メディアのインタビューで「24時間営業を見直す考えはない」とたびたび強調してきた。その上、SEJに限らずコンビニ各社の商品の製造・物流体制は、24時間営業を前提に構築されている。古屋氏の意向に関わらず、即座に営業時間を変更するのが難しい事情もあるにはある。

 一方で野田氏が強調したのは、FC加盟店との関係性についての考え方だった。

「オーナー様との対等なパートナーシップを実現するため、粗利分配方式により、加盟店は経営に専念し、本部はそれをサポートする。これまでも加盟店をサポートする数々の施策を行ってまいりました」

「粗利分配方式」とは、「週刊ダイヤモンド」が3月1日にダイヤモンド・オンラインで独自試算を交えて報じたように、加盟店の粗利のうち、本部が金額に応じて一定額をロイヤリティーとして吸い上げる仕組みだ。SEJでは「セブン‐イレブン・チャージ」と呼ばれる。

 アルバイト従業員などを雇う人件費などの経費は、店舗の粗利から本部にこのチャージを払った残りから加盟店が負担する。なお人件費は、人手不足によって近年上昇を続けており、その分、加盟店の収益は圧迫されている。「対等なパートナーシップ」との言い分に納得するオーナーがどれだけいるかは不明だ。

 もっとも、SEJは2017年にロイヤリティーの料率を1%減額してはいる。だがあるオーナーは「わずかな減額幅で、人件費の上昇分すら賄えない」と指摘する。

「近くて便利」は、商品あふれる店舗

 また野田氏は「近くて便利」という現在のセブン‐イレブンが掲げるコンセプトの“意味”を説明。「近く」とは、単に店舗が消費者の物理的に近くにあるばかりではなく、心理的にも近いものでなくてはならない、との意味だそうだ。そして、「便利」の定義が以下だ。

「『便利』とは、商品が欲しいときに、欲しい分だけそろっている、お客様から常に頼りにされる、ということ。これを、便利さの定義にしています」

 ここでも、前出の粗利分配方式についての説明が有効であろう。本部がチャージを徴収するのはあくまで、粗利からである。人件費だけでなく、売れ残った食品の廃棄コストの大半(SEJの場合は85%)も、加盟店の負担となる。

 そのため本部は、廃棄の量とは無関係に加盟店に食品を仕入れさせても、懐が大きく痛むことはなく、逆に粗利から高いチャージを徴収できる。

 この計算方法こそ、弁当やおにぎりだけでなく、恵方巻やクリスマスケーキなど季節商品の大量廃棄の温床だと指摘されているのだが、これも消費者の「便利さ」を維持するための方策だということになってしまう。

なぜか「ドミナント方式」に言及せず

 逆に、トップの“代打”を務めた野田氏が、なぜか言及しなかったポイントがある。SEJの出店戦略の説明は、

「まずは、駐車場が確保しやすいなど、一番立地への出店。すでに立地している店舗の駐車場の拡充などの活性化、そして既存店の場所を移すスクラップ・アンド・ビルトに取り組んでいます」

 というものだった。郊外や地方の店舗では、駐車場は必須で、自動車の停めやすさは、とりわけ女性や高齢者に選ばれる大きなポイントになる。

 だが、SEJ自慢の出店戦略と言えば「ドミナント方式」であるはずだ。高い売り上げを計上する店舗があれば、2店目、3店目と同じエリアに集中的に出店させる。普通に考えれば1店当たりの売り上げが下がりそうだが、これが総じて上昇するのだと、社長の古屋氏はインタビューや講演などでしばしば、誇らしく語っていたものだ。

 ところが、親会社であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)の18年の株主総会では、株を持っているオーナーが出席し「別の加盟店オーナーにセブン‐イレブンを近くに出店され、自店の売り上げが下がった」と訴えたことがある。ドミナント方式が実際にどの程度奏功しているかは、SEJが子細を公表していないので不明だ。

 だがいずれにせよ、ここでも粗利分配方式がものを言う。加盟店1店舗の売り上げが下がっても、複数店で売り上げと粗利が確保できれば、本部の取り分は増える。一方で人件費や廃棄費用の大半は加盟店の負担であるから、やはりドミナント方式は、本部に優しく、加盟店には厳しいという側面は否定できない。

 この日の野田氏はなぜか、従来の古屋氏のように、ドミナント方式の“メリット”について言及しなかった。

食品廃棄は「喫緊の課題」と明言

 そして野田氏は、SEJの今後の成長戦略にも言及したのだが、その内容が実に興味深い。

「成長戦略として、サステナブルな成長に取り組んでいます。持続可能性や環境に配慮し、ESG投資に見合う取り組みを強化していきます」

 ESG投資とは「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の3つの頭文字をとったもので、この3点に取り組んでいる企業を選別して投資していこうという世界的な潮流だ。SEJ、ひいては親会社のセブン&アイHDも含めてこうした投資対象に選ばれるよう取り組んでいくと宣言したわけだ。

 具体的には、店舗での太陽光パネルやLED照明の設置などの取り組みを説明。SEJの場合、店舗の光熱水費の8割が本部負担であるため、これらのコスト面での中長期的なメリットは、むしろ本部にあるようにも思えるが、それはさて置く。

 加盟店向けにも、従業員の負担軽減策として、手前にスライドする商品棚や、レジ袋を取り出しやすい装置の設置、検品作業を簡略化できる仕組みの導入を進めていると語った。さらには、前述の食品廃棄について、

「フードロス対策として、消費期限の長期化に向けた容器の研究開発を進めており、不良品(廃棄)を減らしながらデイリー商品(弁当など)の売り上げを伸ばしています」

 と語った。そして「日経ESG経営フォーラム」が行った「環境ブランド調査2018」の中で、「効率的な資源利用や廃棄物の量・処理法などに課題がある」と題した企業のランキングにおいて、SEJが東京電力、日本マクドナルドに続くワースト3位に選ばれたことを挙げ、

「非常に問題で、喫緊の課題だととらえています」

 と語気を強めた。

 もちろん、コンビニの食品廃棄問題を根本的に解決するには、商品を仕入れさせるほど本部がもうかる現在の仕組みを改めるとともに、消費期限が迫った商品の加盟店判断での値下げ、いわゆる「見切り販売」を大々的に認めるが早道である。

 さすがにこうした手法には言及しなかったとはいえ、野田氏が食品廃棄問題の解決に強い意欲を示した意義は大きい。古屋社長や親会社のHD幹部に、それだけの覚悟があるだろうか。

コンビニの“持続可能性”とは何か

 折しも野田氏の講演と同じ6日、本部との契約関係の見直しを求める一部オーナーで作る「コンビニ加盟店ユニオン」は、SEJ本社に対して申し入れを行った。

 そこでは、SEJが深夜営業休止の実験店を、本部が運営する直営店だけでなく、FC契約先の加盟店に広げるとしたことについて「一定の評価をする」としながらも、実験と同時に見切り販売を行うことや、店舗の立地や客層に応じて営業休止の時間を変えるなどの工夫をしなければ、実態に近いデータは得られないのではないかと訴えた。前述の粗利分配方式についても、見直しの必要性を指摘した。

 同ユニオンの酒井孝典執行委員長は、申し入れ後の記者会見で「多くの加盟店は精神的にも肉体的にも限界だ。このままでは、コンビニというシステム自体が持続可能なものにならない」と語った。

 奇しくも同じ日に、SEJ幹部と、事態の改善を訴えるオーナーの双方の口から出た「持続可能性」という言葉。その意味するところが、両者で重なり合う日が来るのかどうかは、日々コンビニを利用するわれわれ消費者にとっても、実に重大な問題なのである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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