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マイクロソフトがゴーグル型端末で狙う「スマホの次」の座

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マイクロソフトが発表したホロレンズ2の試遊風景マイクロソフトが発表したホロレンズ2は、空間に浮かぶCGに直接触れるような直感的な操作性が売りだ
Photo by Hiroyuki Oya

世界最大の通信関連展示会「MWC19バルセロナ」が現地時間の2月25~28日、スペイン・バルセロナで開催された。成熟したスマートフォン市場の次を見据え、米マイクロソフトが大胆な一手を打ってきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

 空中に浮かんだ画面をつかみ、好きな位置へと動かせる。端をつまんで引っ張れば画面は拡大され、ボタンを押すことだってできる。

 2月24日、スペイン・バルセロナで開かれた米IT大手マイクロソフトの発表会。世界最大の通信関連展示会「MWC19バルセロナ」に合わせてマイクロソフトが披露したのは、の新機種「ホロレンズ2」である。

 ホロレンズはゴーグルのレンズ越しに、立体的なコンピューターグラフィックス(CG)を現実世界に重ねて表示する装置だ。マイクロソフトは自らの技術を拡張現実(AR)より高度なものと位置付けており、「複合現実(MR)」と呼んでいる。

 発表会にはサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が自ら登壇し、「デジタルの世界と物理的な世界がつながることで、働き方や学習、遊びが変革する」と高らかに宣言した。

レンズ部分だけを持ち上げた様子
周囲の人と目を見て話せるよう、レンズ部分だけを持ち上げられる。日本の地下鉄でホロレンズの従来機を首に掛けている人を見て思い付いたという Photo by H.O

 2016年に登場した従来機と比べると、ホロレンズ2は視野角が約2倍に広がったほか、解像度も向上。さらに、数千人分の頭の形を調べたことで、着け心地もよくなったという。

 だが、それ以上にインパクトがあったのは、操作性が圧倒的に改善されたことだ。

 従来機でもジェスチャーを用いた操作はできたのだが、あらかじめ決められた動きを覚える必要があった。ホロレンズ2では、物を触る、つかんで動かすといった、より直感的な操作に近づいた。

「これまでは、端末に合わせて使い方が築かれてきた。これからの端末は、ヒューマンファーストへとシフトしていく」とナデラCEOは強調する。

 実際に記者もMWCの会場でホロレンズ2のデモを体験した。

 ゴーグル型端末では、眼鏡を掛けたままでは使い心地が悪いことも多いのだが、眼鏡を掛けた状態でも違和感なく画面が映し出されたことがまず意外だった。

デモを披露したジュリア・シュバルツ・シニアリサーチャー氏
発表会の壇上でデモを披露したジュリア・シュバルツ・シニアリサーチャー Photo by H.O

 机の上にあるCGの風力発電機に近づくと周囲に枠が表示され、指先でつまむしぐさをすると「カチッ」とクリック音が鳴る。CGを“つまめた”のだ。そのまま引っ張ると、手の動きに合わせてスムーズに拡大・縮小した。

 また、風力発電機を直接“つかむ”と、傾けたり移動させたりすることができ、本当に持っているかのように感じられた。

 個人的に面白かったのが、視線の上下で、画面に表示された文章をスクロールできるデモだ。寝転がってスマートフォンを使っていると、指先での操作がおっくうになることがあるが、それすら不要になりそうな機能である。

「SF映画『マイノリティ・レポート』の世界みたいだね」と声を掛けると、開発チームのジュリア・シュバルツ・シニアリサーチャーは、「もう映画の出来事じゃないわ。現実になったのよ」と誇らしげに答えてくれた。

アプリ開発のコストを低減し
クラウド収益を狙う

 今回のホロレンズ2の発表で見逃せないのが、マイクロソフトのクラウドサービスとの連携を強化したことだ。ホロレンズのMRのデータをクラウドと連携させることで、例えばパソコンやタブレットでもホロレンズ上の仮想空間を確認できるようになる。

 また、クラウド上で動作する、従業員の作業支援アプリなどのひな型を用意。従来は顧客ごとに専用アプリを開発していたため、導入までに数百万ドルの費用と数ヵ月の期間がかかっていたが、「われわれが用意したアプリを使うことで導入コストが格段に下がり、期間も月単位から分単位へと短縮できる」(グレッグ・サリバン・ディレクター)。

 実際、年内に法人向けに発売予定の端末価格は3500ドルだが、クラウドサービスとのセットで月125ドルのプランも用意。「収益は端末販売とクラウドの2本柱になる」とサリバン氏は説明する。

 クラウドサービスで先行する米アマゾンを追撃するため、将来データ量が伸びると目される、MRのクラウド市場をいち早く押さえることを狙っているのだ。

 マイクロソフトは基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を武器にパソコンの普及期に爆発的に成長し、いわば「マウスとキーボード」操作の時代の覇者だった。

 だが、米アップルの「iPhone」を筆頭とする、指先によるタッチ操作を軸とするスマートフォンの潮流に乗り遅れて失速。そして今、アマゾンと米グーグルが、AIスピーカー市場を舞台に音声操作の覇権争いを繰り広げている。

 ジェスチャーと視線による操作の世界で、王座に返り咲く。未来のデジタル空間の覇権は渡さない。ポストスマホ時代を見据えたマイクロソフトの大胆な一手は、新たな市場を切り開けるか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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