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2019年最大のリスク「円高」が現実になる理由

文● 高田 創(ダイヤモンド・オンライン

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円とドル
Photo:PIXTA

 2019年初から円高が進み、100円飛び台水準に突入した。

 2018年は1973年の変動相場制になってから最も変動レンジの狭い年だったが、今年は違うのだろうか。

今年はなぜ円高を予想するか
「米国次第」の円ドルレート

 円・ドル相場の動向を予測する際に、為替市場の専門家のなかで、よく「円高派」や「円安派」と派閥のごとく、一定方向のバイアスを持った見方をする人もいるが、筆者にはそうしたものはない。

 筆者が円ドル為替について長らく「ストーリーライン」としてきたのは、「だるまさんが転んだ」という考え方だ。

 つまり、円ドル為替のトレンド転換は、歴史的に見ていつも「鬼」である米国サイドにあるということだ。

 そのことから、今年はドル安円高を予想する。

 これまでもこの考え方に沿って、2017年はドル高を一貫して主張し、2018年は、ドル高のバイアスとドル安のバイアスの「綱引き状態」だと予測した。

 まず、トランプ政権が始まった2017年以降の為替相場を振り返ろう。

 2016年11月の大統領選でのトランプ氏当選に伴う米国の財政・金融のポリシーミックスの転換で、2017年は、ドル高政策に転じる「だるまさんが転んだ」が生じたと、考えた。

 トランプ大統領の「米国第一主義」に伴う通商問題からドル安バイアスはあるものの、図表1の(9)を見るように、マクロ政策からドル高に転じたとの判断をした。

 その後、2018年は、2017年同様に財政金融政策はドル高バイアスの政策だったが、トランプ政権が明確に通商政策重視にかじを切ったことで、ドル安圧力が強まり、ドル高・ドル安の綱引きとなった。

 その結果、2018年は最も為替相場が変動のない年になった。

 今年を展望すると、財政金融政策からのバイアスは一転し、これまでのドル高政策が弱まり、一方で通商重視のドル安バイアスがさらに加わるので、ドル安(円高)を予測している。

米国は金利低下局面に
マクロ政策のドル高バイアス転換

 このことを詳しく説明すると、次のようになる。

 図表2はマクロ経済学の標準的理論、いわゆる「マンデル・フレミング理論」による為替への影響をまとめたものだ。

 教科書的にマンデル・フレミング理論から解釈すれば、2017年にトランプ政権が誕生して以来、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが続くことによる金融引き締めと、大幅減税を中心とした財政拡大のポリシーミックスは、典型的な自国通貨高(ドル高)になる。

 すなわち、少なくとも2018年までのトランプ政権の経済政策は理論上ドル高政策だった。

 それが、2019年に転換する可能性も生じていることが、ポイントである。

 金融政策では、今年1月30日のFOMC(連邦公開市場委員会)でのパウエルFRB議長のコメントからみて、FRBの利上げスタンス転換の可能性が高まっている。こうした動きはこれまでのドル高バイアスに決定的な転換を生じさせる。

 一方、財政政策面でも、政府閉鎖も含めたプラス要因はなく、さらに議会における民主党と共和党のねじれ状況からも追加的な財政拡大の可能性も乏しい。

 こうしたことから、明らかに従来のドル高は転換に向かい始めた。

2019年通商政策重視強まる
「ドル不安」惹起させやすく

 一方、トランプ政権の政治的なバイアスを考えれば、2019年は日米2国間のTAG(物品貿易協定)交渉で、米国側が「為替条項」を盛り込むことを求めてくるという観測も含め、通商問題は引き続き、ドル安圧力が強く、場合によっては「ドル不安」を惹起させやすい。

 先述の「だるまさんが転んだ」で示した図表1が示すように、1970年代以降の円ドル為替は、通商問題に焦点があたることで、何度となくドル安に振れた歴史が繰り返されてきた。

 1970年代の繊維交渉、80年代の電気製品や自動車、その後は、半導体などのハイテク分野へと、摩擦が激しくなるたびに、ドル不安が高まった。

 今年の環境も、昨年同様、トランプ政権が通商問題をばねに米国第一主義を主張し、さらに、来年の大統領選を前に、好況を維持したいと考え、マクロ政策の面からも、ドル安へのバイアスが一層強まる可能性を持つ。

 図表3は、第1の財政金融政策の要因と第2の政治的な側面を持つ通商政策の要因からの為替へのバイアスと最終的な方向をまとめたものだ。

日米の金利差縮小
「出口戦略」からの発想転換が必要

 最終的なポイントは、日米の金利差がどうなるかだ。

 図表4は日米金利差とドル/円相場の推移である。

 米国10年金利は年初来大幅に低下し、一時は2.5%台にまで低下し、短期ゾーンの金利はFRBの次の一手は利下げを織り込むまでになっていた。

 昨年来、米国長期金利が低下し、日米の金利差縮小から円高リスクが高まることが、日本経済のリスクとされてきたが、そのことがいよいよ現実のものとなってきた。

 問題は、円高になった時に、日本に政策的な対応余地がきわめて少ないことだ。

 仮に、米国は景気減速になればいくらでも利下げのカードを切れるが、日本は金利下げ余地を残していない。日本は円高に追い込まれた中でどうしのぐか。

 2019年は、世界的な金利低下局面に転じたとの認識が必要であり、日銀は、これまでの世界的な利上げ局面を前提にした「出口戦略」から発想を転換する必要がある。

(みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト 高田 創)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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