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新たなイノベーションを生み出す共創の場「NEC Future Creation Hub/Lab」、その狙いをキーマンに聞く

欲しいのは顧客の「共感」、NECが新たな共創空間にかける熱い想い

2019年03月07日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 「新たな事業領域においてもNECが“お客様のパートナー”たりうることを示し、一緒にアクションを起こしていきましょうと促すこと。それが『NEC Future Creation Hub』と『NEC Future Creation Lab』に求められている役割だと考えています」(Future Creation Hubセンター長の野口圭氏)

 NECでは2019年2月、東京都港区の本社ビル地区に「NEC Future Creation Hub」と「NEC Future Creation Lab」という2つの施設を新設した。それぞれ品川、秋葉原で運営してきたショールームの後継となるが、移転を機に中期経営計画ともリンクした新たなコンセプトを打ち立て、両施設を連携して運営していくという。

 今回は新施設のキーマンであるNEC Future Creation Hubセンター長の野口圭氏と、NEC Future Creation Labの杉本雅之氏、中島泰宏氏に、両施設の開設に至った背景やビジネス上の戦略、そしてそこにかける熱い想いなどを詳しく聞いた。

NEC Future Creation Labの中島泰宏氏(左)、杉本雅之氏(右)、NEC Future Creation Hubセンター長の野口圭氏(中央)

ひとつのコンセプトに基づく、2つの新しい共創の場

――まず、今回オープンした2つの施設に共通する“狙い”、コンセプトは何でしょうか。

野口:背景からお話させてください。NECでは、昨年(2018年)発表した「2020中期経営計画」において、「安全・安心で豊かなSafer Citiesの構築」「持続可能なスマートサプライチェーンの形成」「安全・快適なコネクテッドカーの実現」という3つの注力領域を掲げ、これらの領域で成長を実現していくという方針を打ち出しています。

 これは、NECが従来から手がけてきたITビジネスだけではなく、よりお客様の事業の根幹にかかわる部分までビジネスを拡大していくという宣言です。

NEC Future Creation Hubセンター長の野口圭氏

 しかし、お客様の中ではまだまだ“NEC=ITソリューションやSIビジネス”というイメージが強いのが実情でしょう。そこで、新たな事業領域においてもNECが“お客様のパートナー”たりうることを示し、一緒にアクションを起こしていきましょうと促すこと。それが新しい「NEC Future Creation Hub/Lab」に求められている役割だと考えています。

 もちろん、NECにとって従来からのITビジネスは大変重要なものですし、そこを守っていく方針に変わりはありません。ただ、われわれマーケティング部門はNECの中で“新しい世界を切り拓く”ことがミッションです。そのため今回の施設では、ご来場いただくお客様に「新しいビジネスをNECと一緒にやりたい」と感じていただけるような施設デザインを行い、その方向性でコンテンツを拡充していく方針です。

――2つの施設はひとつのコンセプトを掲げる一方で、それぞれ違う役割を担うわけですよね。

中島:そうです。NEC Future Creation Hubは品川にあった「NEC Innovation World」が、NEC Future Creation Labは秋葉原にあった「クラサバ市場」が、それぞれ前身の施設となります。

 わたしは長年クラサバ市場のほうに携わってきましたが、昨年2月に本社そばのビル(住友不動産芝三丁目ビル)に移転した段階でコンセプトを統一する話が持ち上がり、4月には組織も統合されました。その後、2つの施設をそれぞれどういうかたちで運用していくべきなのか、ずいぶんディスカッションを重ねて今のかたちにたどり着きました。

NEC Future Creation Labの中島泰宏氏

杉本:NEC Future Creation Hubのほうは、お客様企業の事業部門や経営層の方へのアプローチを図り、NECとビジネスを展開することで双方にメリットがあることをご理解いただく場です。まずは経営課題や未来ビジョン、そこに至るストーリーをさまざまなかたちで体感していただき、双方向の議論を通じて視点を共有し、NECと「共感」していただくことを目的としています。

 そのため、こちらの施設ではNECのソリューション展示が主役ではありません。主役はあくまでもご来場いただくお客様であり、NECが考えるビジョンをご理解いただくだけでなく、お客様のビジョンをわれわれが理解するという相互理解の場と位置づけています。

NEC Future Creation Labの杉本雅之氏
NEC Future Creation Hubは「体感と対話」をキーワードに掲げ、課題意識やビジョンの共有を図る

中島:他方でNEC Future Creation Labでは、実際に今すぐご提供できるNECの製品やソリューション群をご紹介しています。ソリューションデモの実演展示だけでなく、ハンズオンセミナーや実機検証のための施設も備えていますから、初期の検討からPOCまで、導入決定に至るまでのあらゆる段階を包括的にご支援できるのが特徴です。

 2施設の役割分担で言えば、NEC Future Creation Hubのほうで課題認識や少し未来のビジョンをNECと共有していただいたのちに、NEC Future Creation Labにお越しいただいてその実現性を体感していただく。2つの施設を通じて相乗効果が生まれる、そうしたひとつの流れを作っていきたいと考えています。

NEC Future Creation Labでは顔認証を始めとしたさまざまなソリューションデモが体験できるほか、実機検証やハンズオンセミナーのスペースも用意されている

「NECの自慢話を聞きに来たんじゃない!」失敗と改善を繰り返した3年間

――一般的なショールームとは考え方がまるで違うんですね。なぜそのようなコンセプトに行き着いたのでしょうか。

野口:わたしは3年前、品川ショールームに配属されたのですが、そこでの経験が今回の施設コンセプトに大きく影響しています。

 配属された当初、品川ショールームにはソリューションの常設展示があり、お客様にそれをお見せして、決まった内容のご説明をする――ということをやっていました。ごく普通のショールームと言えばそうなのですが、来場されたお客様が本当にそれで満足されているのか自信がありませんでした。実際、仲の良い営業担当に率直な意見を聞いてみると「ここにしかショールームがないからだ」と厳しい評価で、その言葉は相当にこたえました。

 わたしは強い危機感を感じる一方で、「本来の価値、チャンスを生かせていない」とも考えました。ショールームには顧客企業の経営層の方がお越しになることもあります。「トップアプローチ」ができる貴重なチャンスがあるわけですが、そのチャンスをまったく生かせていない。ならばこれを改善しようと1年がかりで改革に取り組みました。

 具体的には、トップアプローチのできるチャンスがあれば、あらかじめそのお客様に“刺さる”内容のストーリーを考え抜き、お話しする内容を個別にアレンジするということを実践しました。事前にお客様企業についての情報を担当営業から聞き出して分析し、一方でNEC社内からはあらゆる製品やソリューション、最新技術の情報を収集して、そのお客様に合ったご提案ができるよう準備したのです。

――記者発表会では「NEC Future Creation Hubでは1社あたり数時間をかけて、お互いに議論を深めていく」という方針説明がありました。そうしたカスタマイズはすでに品川で実践されていたのですね。

野口:はい。ただし、まったくの手探りで始めた取り組みでしたし、品川では失敗も数多く経験しました。そこで気付いたこと、学んだことはたくさんあります。

 たとえば「ストーリーはお客様視点で組み立てなければならない」ということ。最初の頃は、NECがご提供する製品やソリューションをうまくつなぎ合わせた“きれいなストーリー”を作ってお話ししていました。自分ではそれで「うまく説明できている」と満足していたんです。

 ところがある日、あるお客様の経営者の方から「NECの自慢話を聞きに来たんじゃない!」と厳しいお叱りを受けてしまいました。ソリューションの説明としては十分でも、それがお客様のビジネスにどんなインパクトや価値を与えるものなのか、という視点が抜け落ちていたからです。振り返ってみると、それまでお会いしたほかのお客様も内心ではそう思われていたに違いありません。大きな失敗でした。

 そこで担当営業と共に、個々のお客様が置かれた現状をもう一度しっかりと勉強して、お客様の視点を理解することに努めました。具体的には、あらかじめお客様の中期経営計画や財務諸表などを詳細に分析し、お客様のビジネス成長のためには何が必要か、そこにNECはどんな貢献ができるのか、といったストーリーを組み立てるようにしたのです。

 また「“上から”ではなく共感」というのもポイントでした。“上から目線”で「お客様にはこういう経営課題がありますね。NECならばこう解決して差し上げます」とお話ししても、お客様の反感を買うだけで良い印象は与えません。ここで「NECはお客様のビジョンをこう理解し、共感しています。だから一緒に取り組みませんか」というストーリーテリングをすることで、NECがお客様をよく理解していること、そして一緒に取り組むパートナーたりうることが示せます。

 こうして失敗から学び、改善を重ね続けた結果、品川ショールームでの取り組みが徐々にビジネスへとつながるようになっていきました。そのことが社内でも評価されて、次は本社ビルでやってみろ、ということになったわけです。

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