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「バイトテロ」は雇用する企業が強欲を捨てなければ今後も必ず起きる

文● 井出留美(ダイヤモンド・オンライン

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バイトテロの大半が「食の問題」
写真はイメージです Photo:PIXTA

コンビニや飲食店のアルバイト店員らによるSNSなどへの動画投稿で炎上騒動を引き起こす「バイトテロ」。これらの多くが「食べ物」に関する問題だ。根底にあるのは「食べ物への敬意のなさ」だが、これは雇用者側である企業側にも責任があるのではないだろうか。(食品ロス問題専門家、消費生活アドバイザー 井出留美)

「バイトテロ」の大半は
「食」の問題

 主にアルバイトなどが、勤務先で食品を不適切に扱う動画をインターネット上にアップする「バイトテロ」の問題が世間を騒がせている。全国の出店数が数百から数万という大企業で、コンビニや飲食店、カラオケなどがほとんどだ。

 この問題で不思議なのは、ほぼ全てが食べ物を不適切に扱う「食」の問題であるにもかかわらず、「食の専門家」が誰も出てこないということだ。インターネット上に載せたからこそこれだけ大きな騒ぎになったわけで、ITリテラシーが問われているが、載せる載せない以前に、「食べ物をおもちゃにする」、その行為自体が稚拙であり、常軌を逸しているだろう。

 この問題を語るのは、総じてインターネットの専門家やコンサルタント、労働問題に取り組む人などがほとんどである。「食の専門家」は自ら発言することもしていないし、メディア側からも有識者として声がかからないといえる。あまりに問題のレベルが低すぎて、食の専門家もコメントのしようもないともいえるが……。

 筆者が考える要因の1つは「食べ物への敬意のなさ」だ。

 これはアルバイト側だけではない。雇用者側も同じだ。

 そう言うと、「ちゃんと雇ってから社員教育してますよ」と言われるかもしれない。実際、雇用されてから、過去に発生した不適切動画を見せるなどして、これらが「許されない行為」であることを強調し、禁じていたと報道されている。

 だが、心から食べ物に敬意を払っての教育だっただろうか。

雇用者側にも
欠けている「緊張感」

 食べ物のもととなる肉も魚も鶏の卵も、全て彼らの命を捧げてできたものだ。食べ物が命であること、それらを食として提供するのに生産者がどれほどの苦心を重ねているかということを胎(はら)の底から感じ、理解していれば、そもそもそのような行為はできないだろう。

 食べ物を大事にするということは、生き物の命や生産者への敬意を持つということである。ただマニュアルで「禁止です」と言っても、言われる側が心から納得していなければ、面白がってやるだろう。

 食べ物を“おもちゃ”にして遊ぶ行為は、しばしば乳幼児で見られる。「成年」の定義が変わり、18歳から成人とみなされることになったが、実際には18歳前後でも“幼児並み”の精神状態の人が存在するということだろう。

 アルバイト側の責任も大きいが、食べ物は一歩間違えると、食中毒を引き起こし命に関わる大問題につながるという危機意識を、雇用者側が持っていたかどうかも疑問である。

 アルバイトだけに調理を任せたり、重要な作業を任せたりというのは、雇用者側の人間も、食が命から生まれ、われわれの命に関わるという“緊張感”を持っていない証拠ともいえる。

 かつて筆者が勤めていた食品メーカーでは、2000年代に発生した食中毒事件以来、食品の製造工場での品質管理は、製薬工場並みのレベルが求められるようになった。何しろ一歩間違えたら大勢の人の命を奪うことになるのだ。

 企業としても、長年かけて積み上げたブランドや信頼を一瞬にして失う。売り上げも、売り場(商品の棚)も。良心的な食品製造業者は、それだけの緊張感とプライドと責任感を持って仕事に当たっている。

そもそも
出店が過剰である

 もう1つ、この問題を語るに当たって不思議なのは、「そもそも出店が過剰である」ことに誰も触れないということだ。コンビニしかり、飲食店しかり。「買い物難民」が社会的課題となっている過疎部の話ではなく、人口が密集している都市部の話だ。

「慢性的な人手不足」が要因という説もある。

 でもそれを作り出したのは、過剰なほど出店を繰り返してきた、当の企業自身ではないだろうか。

 アルバイトではなく正社員を雇用することや、アルバイトの時給を上げることなども、解決策として挙げられている。

 だが、人材採用において「質より量」の事態を作り出したのも、当の企業自身と言える。「出店過剰をやめましょう」とは、誰も言わない。今の事業規模を保つこと、では不足で、必ず「対前年比何%増」を唱える。

 2019年1月、恵方巻きの大量廃棄を防ぐために、農林水産省が小売業界に対し「需要に見合う数を販売するように」と通知を出した。

「お手本に」と挙げたのは、「前年実績で作る」と宣言して実行した、兵庫県のヤマダストアーである。彼らは2019年も2018年も「前年と同じ実績で」恵方巻きを作り、過半数の店で完売した。恵方巻きが「モノ」ではなく、海洋資源などが詰まっており、それらを廃棄するのは心が痛むから、としている。

 だが、マスメディアの報道を見れば、農林水産省の通知に反し、大手小売はどこも「前年実績を上回る目標」を立てた。

雇用者自身が
食への敬意を取り戻すべき

 筆者が大学生とともに2月3日夜の閉店前の百貨店やコンビニ、スーパーを回ったところ、多い店では500本近くの恵方巻きが残っていた。つまり、一部の企業では、国(農林水産省)の通知などスルーしたということだろう。

 3月24日締め切りで国(経済産業省)が行っているコンビニ加盟店調査も、大手コンビニ加盟店オーナー複数名に取材したところ「本部から案内が来ていなかった」と答えた。加盟店の実態と個別事例を収集する調査であるが、各コンビニチェーンの本部は、どうやらあまり積極的に協力したいとは思っていないようだ。

 こんな調子では、バイトテロは今後も必ず起きるだろう。

 アルバイトだけでなく、雇用者自身が「もっともっと」という強欲さを捨て、食べ物への敬意を取り戻さない限り。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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