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ブリヂストンが畑違いの「データ会社」を1000億円超で買収する理由

文● 週刊ダイヤモンド編集部,新井美江子(ダイヤモンド・オンライン

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ブリヂストン
ブリヂストンは、米自動車用品小売り大手の買収を著名投資家のカール・アイカーン氏との争奪戦で2015年に取りやめるなど、しばらく大型買収から遠のいていた Photo:REUTERS/アフロ

 ブリヂストンにとっては、久方ぶりの大型買収である。1月22日、同社は約1138億円を投じ、オランダのトム トム テレマティクスを買収すると発表した。1000億円を超える投資は、2007年に再生タイヤ大手の米バンダグを買収して以来、実に12年ぶりのことだ。

 トム トム テレマティクスは、膨大な車両関連情報を抱えるデータ会社である。車両の運行ルートや運転スピード、メンテナンス状況などの情報をデジタル化して蓄積・分析し、トラックやバスなどの運送業者に最適な車両オペレーションを提案している。

 車両の蓄積データは欧州最大で、現在、約86万台の車両にサービスを提供中だ。

 しかし、タイヤではなく車両情報の活用という、ブリヂストンにとっては“畑違い”の事業を展開する会社である。

 確かに、ブリヂストンの手元資金は潤沢であり、その使い道は、市場関係者から事有るごとに突き付けられる悩ましい課題の一つだった。だとしてもなぜ、満を持して臨む大枚の投じ先が、トム トム テレマティクスなのか。

規模追求にうまみなし

「もはや、タイヤ単体の売り切り事業の規模だけを追求しても、さほど意味がない時代に突入しつつあるんですよ」。理由はブリヂストンの幹部の言にある。

 タイヤ業界は今、大変革期にある。近い将来には、カーシェアリングの浸透などにより、先進国を中心に自動車の販売台数が減少する予測がなされるようになった。

 かといって、タイヤの販売シェアを拡大しようにも、新興タイヤメーカーの台頭も著しく、競争激化は免れない。

 そこで、ブリヂストンはこの10年、タイヤの単体販売のみならず、関連商品やサービスまでまとめて売り込むソリューションビジネスの展開を加速させてきた。代表例が、タイヤの使用データを分析し、最適な交換時期などをトラックやバスの運送業者や鉱山の運営会社向けに提案するサービス事業だ。

 今回の買収には、こうしたソリューションビジネスを拡充し、変革期を乗り切る目的がある。ブリヂストンが持つタイヤデータに、トム トム テレマティクスの車両データを掛け合わせることで、ドライバーの人件費と燃料費、タイヤの交換費という運送業界の3大コスト全てに対応できるサービス網を築き上げようというわけだ。

 特に、これで欧州地域をてこ入れできるなら買収意義は大きい。欧州を中心とするブリヂストンの欧州・ロシア・中近東・アフリカ地域の昨年度の営業利益率は、日本や米州で10%を超す中、2.4%に沈んでいるからだ。

 ただ、世界のテック企業がモビリティーサービスに続々と参入する厳しい競争下で、ブリヂストンが存在感を示せるかどうかは未知数だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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