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日本マイクロソフトがIoT事例を多数披露

DMG森精機、工作機械の稼働状況をAzureでリアルタイムモニタリング

2019年01月31日 13時00分更新

文● 阿久津良和 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは2019年1月22日、IoTにフォーカスしたイベント「IoT in Action」を都内で開催。DMG森精機とのIoT領域での協業を発表した

 マイクロソフトは2018年7月に、IoT領域の研究開発やプロダクト開発、事業体制の強化、パートナーエコシステムの拡充に50億ドル(約5300億円)の投資をすることを表明した。日本のIoT市場に目を向けると、市場全体のIoT投資額は2022年までに12.5兆円規模(2017年の約2倍)に拡大すると予測されている。現時点での日本企業のIoT利用率は6.4%、産業分野別にみると、製造/資源分野で9%と利用率が高くなっている。

 このような背景から、今回日本マイクロソフトは製造分野でのIoT事業を強化するために、DMG森精機との協業を発表した。

DMG森精機との協業を発表した日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏

 両社は2016年9月9日に「工作機械を中心とする制御システムのセキュリティ、スマートファクトリーの実現に向けた技術協力」を公表済み。当時のDMG森精機担当者は「国内を中心に1万台前後のデバイスをリモート管理し、工場内ネットワークに接続する事例が増えていることから、セキュリティ強化が重要」と述べている。このような2年間の取り組みで協力体制を築き、今回の協業に到った。

 DMG森精機は、金属加工用途の工作機械を製造するグローバル企業であり、製造業を取り巻く環境変化へ対応するには、工場の生産性・品質向上やエネルギー利用効率化などへの対応が急務だとする。「今は工作機械を単独で購入する顧客は減っている」とDMG森精機 専務執行役員 川島昭彦氏はいう。

 同社は工作機械設備の稼働状況の把握や生産性の向上を可能とする「DMG MORI Messenger」を2400社600台で稼働させているが、将来的な保守費用などを踏まえ、2019年前半に自社サーバーからMicrosoft Azureへ移行させる。AzureのセキュリティソリューションであるApplication GatewayやAzure Security Center、Network Security Groupなどを活用する予定だ。

 日本マイクロソフトとの協業についてDMG森精機は、「まだ始まったばかり。これからデータ収集が進み、時代の先端を日本マイクロソフトと共に歩んでいきたい。ただし、社会環境の変化を踏まえると(日本マイクロソフトには)社会の社会基盤として各種サービスの提供を期待する」(DMG森精機 専務執行役員 川島昭彦氏)と語った。

工場のIoT化における中心的役割を担う「CELOS」と、ソフトウェアやサービスを継続的にサポートする「CELOS Club」の概要を紹介するDMG森精機 専務執行役員 川島昭彦氏

社会のあちこちにIoTが加わる:日本MSのIoT事例

 ここからは、IoT in Actionの基調講演およびプレスセミナーで披露された日本マイクロソフトのIoT関連事例を紹介する。

 まずは基調講演でも大々的に紹介された北菱電興の「スノプロアイ」。除雪機に車載GPS端末を搭載し、4G-LTE閉域網経由で監視員が除雪機の位置を把握できるようにしたものだ。これにより、監視員が正しい除雪対象路線を指示できるようになる。LTE閉域網はコスト問題が派生するものの、実際の除雪現場で一般的なスマートフォンがつながりにくくなる問題が発生したこともあり、自治体サービスに求められる安定動作を実現するために選択したという。2018年12月から本格稼働を始めたスノプロアイだが、今後は5年分の蓄積データや作業実績、気象データ、Cognitive Servicesを活用して降雪強度の判断など効率化を目指す。

北菱電興の「スノプロアイ」

 東京電力の送配電事業を担当する東京電力パワーグリッドは、山間部や僻地に設置した送電線の保守管理に多くの課題を抱えてきたという。そこで、テクノスデータサイエンス・エンジニアリングが送電線を撮影した動画を解析する深層学習モデルを構築し、報告書を自動作成するシステムを構築した。これまで保守担当者が目視確認で行ってきた保守管理を自動化することで、作業負担を大きく軽減した。深層学習モデルの作成にあたっては、東京電力パワーグリッドが蓄積していた送電線の保守データを活用したが、そのままでは利用できず、データのクレンジングに時間を要したという。本システムは2018年10月から試験稼働しており、本格稼働は2019年4月を予定している。

東京電力パワーグリッドで稼働する点検・監視設備保全AI/IoTソリューション

 ナレッジコミュニケーションはエムティーアイと共同で、タンパク質解析システムとMicrosoft HoloLensを連携させて国内外の研究者が情報共有できるソリューションを開発した。また、同システムを立教大学に導入し、教授と生徒で3D分子構造を音声と視覚を共有して学習するPoC(概念実証)を行った。同システムは2018年夏に完成済みだ。

ナレッジコミュニケーションのHoloLens事例

 これらの事例は、日本マイクロソフトや東京エレクトロン デバイスが2016年2月に設立した業界コミュニティ「IoTビジネス共創ラボ」から生まれたものだ。IoTビジネス共創ラボのメンバーは、正式発足から3年で556社/775名(2019年1月17日時点)まで拡大した。地域版の同ラボも発足しており、2018年6月に柏の葉IoTビジネス共創ラボ、同年9月に石川・金沢IoTビジネス共創ラボ、みやぎIoTビジネス共創ラボができた。

 IoTビジネス共創ラボの幹事企業である東京エレクトロン デバイスは、4年目の活動について、「Microsoft HoloLens×IoTなど、クロステックな広がりを目指していく」(東京エレクトロン デバイス クラウドIoTカンパニー エンベデッドソリューション部 福田良平氏)と意気込みを語った。

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