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金融庁で生保への「嫌悪感」高まる、外貨建て・節税保険めぐる攻防で

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金融庁の沸点が下がり続けていることに、生命保険業界としてどう向き合っていくのか
金融庁の沸点が下がり続けていることに、生命保険業界としてどう向き合っていくのか Photo by Masaki Nakamura

外貨建てと節税保険という生命保険会社の食い扶持にメスを入れ始めた金融庁。昨年から続く規制強化に向けた取り組みの裏側で、庁内では生保への嫌悪感が否応なく高まっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

 生命保険会社とその経営を監督する金融庁の攻防が年明け以降、本格化している。

 舞台となっているのは、一時払い(一括払い)の外貨建て貯蓄性保険と、中小企業経営者を主なターゲットにした「節税保険」の2つ。特に、外貨建て保険については主要な販路となっているメガバンクや地域銀行も巻き込んで、攻防が激しくなっているのだ。

 発端となったのは、2018年2月。生保役員との意見交換会で金融庁は、「投信と類似の貯蓄性保険商品は(中略)各種のリスクや費用を除いた後の実質的なリターンについて、投信と同じレベルの情報提供・説明が求められる」との見解を伝えている。

 低金利による運用難で、米ドルや豪ドルといった外貨建ての貯蓄性保険の販売に生保各社が傾注する中で、運用利回りや元本割れ、為替リスクなどの情報提供が、分かりやすく行われていないという実態が散見されたためだ。

 その後、生保が対応を渋るような様子をみせる中で、金融庁は同年9月、金融行政方針の中で改めてこの問題を取り上げ、募集(販売)ガイドラインを改定し、各種費用を除いた「実質的な利回り」など、顧客本位に向けた情報を表示するよう求めた。

 そこには金融庁首脳の強い意向もあったが、業界サイドの動きはなおも鈍かった。

 昨年末に予定していた募集資料に関する指針の改定では、実質利回りなどに言及することを見送ろうとしたことで、金融庁が激怒。急きょ年の瀬に生保の役員を集め、幹部が問題意識を改めて伝える事態になったわけだ。

 その9日後には、一時払いの外貨建て保険に関して、顧客に資する分かりやすい情報が載った募集資料とはこういうものだというひな形まで、金融庁はわざわざ示してみせている。

 圧力をかわしきれなくなった業界サイドは今年1月中旬、指針とは別に「積立利率、予定利率及び実質的な利回りの分かりやすい表示について」という資料を作成し各社に配布。実質利回りなどを表示する際の定義について統一を図ったが、文面に「拘束力を有するものではない」と明記することも忘れなかった。

 当局対応が稚拙で反抗することが多い外資系生保や、銀行における窓口販売への影響に一定の配慮をしたとみられるが、いつまで経っても後ろ向きの姿勢が抜け切れない状況に、金融庁内でため息が広がったのは言うまでもない。

規制当局の監視の
目を盗む生保の「品格」

 節税保険の販売を巡っても、金融庁のため息は深い。

 17年春以降、各社が保険料を全額損金算入できる新商品を投入し、販売競争が一気に過熱する中で、金融庁は節税効果を過度にアピールする販売手法を問題視。調査票を配り、実態調査に着手したのが昨年6月のことだ。

 調べを進める中で、保険会社の経費の上乗せ分となる「付加保険料」で合理性が欠けていることが分かると、各社を呼びつけて速やかな見直しを迫ってきた。

 年が明けると、複数の生保が4月に付加保険料を見直すことを金融庁に伝えているが、それまでの間商品を販売停止にするところまでは至っていない。

 3月期決算の企業が多く、この3ヵ月間が節税保険の一番の売り時のため、生保としては当局の意向を汲んで、バカ正直に販売停止するわけにはいかないわけだ。

 金融庁内では当初、「2月までに販売停止に追い込むべき」という強硬論も出ていた。だが、そうなると付加保険料の調整をしていない一部生保だけが、大手を振って販売できることになる。

 結果として一部の生保に利益誘導したことにもなり兼ねないことから、今のところそこまでは踏み込んでいない。

 現在は、節税手法について「将来に向けて保証されているものではない」などとした注意喚起文書を、顧客企業に配布するよう促している最中だ。

 ここで問題なのは、金融庁内で強硬論が収まったことをこれ幸いとして、一部の生保が「加入するなら(4月の保険料改定前の)今がおすすめ」と煽るような募集を足元で始めていることだ。

 当然ながら、金融庁もそうした実情を把握しており、「金融機関としてのプライドはないのか」(幹部)と半ばあきれ顔だ。

 そうして庁内で生保への嫌悪感が高まり、沸点の低下が止まらないという状況に、業界サイドはどう向き合っていくのか。

 下手を打てばさらなる規制強化というリスクがある中で、生保各社の足並みが全くそろわない現状を危惧し、業界内からは金融庁との「折衝役」を途中交代させるべきという声が漏れ始めた。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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