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スバル「フォレスター」が毎年改良を繰り返す理由

2019年01月30日 06時00分更新

文● 雪岡直樹(ダイヤモンド・オンライン

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フォレスターはスバルの屋台骨を支える世界戦略車
フォレスターはスバルの屋台骨を支える世界戦略車 Photo by Naoki Yukioka

スバルは、毎年何かしら手を加え商品の魅力をアップさせる「年次改良」を頻繁に行うメーカーとして、クルマ好きには知られている。むろん、スバルの世界戦略車であり、屋台骨を支えているフォレスターも例外ではなく、フォレスターの歴史を調べると、実はスバルの革新技術がいち早く投入されている率が高いのが分かる。(取材・写真・文/ライター・フォトグラファー 雪岡直樹)

フォレスターは
スバルの屋台骨を支えている

 スバルは昨年、完成検査の問題などさまざまな不祥事を引き起こしてしまい、生産や販売などで苦戦する部分も見られた。それでも年間生産台数はおおよそ100万台弱の規模で推移している。フォレスターやXVのSUVが好調で全体の数字を引き上げており、中でもフォレスターはスバルの屋台骨を支えている車種と言っても過言ではない。

 2018年6月に現行型でもある新型フォレスターを発表し、1ヵ月遅れて2.5Lエンジン、約3ヵ月遅れて9月に2.0Lエンジンとモーターアシストが加わる「e-BOXER」を搭載する「Advance」グレードを発売した。

 このAdvanceグレードはフォレスターの中でも上位グレードとして位置付けられており、先進の「ドライバーモニタリングシステム」を搭載している。実際の販売台数でもAdvanceグレードの販売が4割近くを占めており、これはエンジン排気量が2.0Lという税制面と、モーターアシストというハイブリッドへの関心の高さからくるのではないかと推察できる。

 このドライバーモニタリングシステムとは、運転中にカメラでドライバーをモニタリングし、居眠りや脇見などが起きた際に、警告表示と警報音でドライバーに注意喚起を行うシステムだ。センターコンソール上部に設置されるマルチファンクションディスプレイのバイザー部分に専用カメラを設置し、ドライバーを5人まで登録することが可能である。

 実際に試してみると、最初に顔を登録して、シートポジションや空調、ミラーの位置などを登録すれば、乗り込んだときにその人専用にセットアップしてくれる。家族でドライバーの交代などを行う際に、いちいちシートやミラーを自分で調整しなくても自動で調整してくれる便利機能だ。

ドライバーモニタリングシステムとアイサイト
ドライバーモニタリングシステムとアイサイト Photo:N.Y.

 長距離運転や深夜運転、高速道路の渋滞での漫然運転など、スバルお得意のアイサイトとツーリングアシストを駆使すれば、だいぶ事故も軽減してくれるかもしれないが、さらにこのドライバーモニタリングシステムがあれば、ゆらゆらとした居眠りなどへの注意喚起を行ってくれるので、より事故などが防げるかもしれない。

 とはいえ、このシステムを使えば事故を完全に防げるわけではないので、ドライバー自身の注意が必要なのは言うまでもないだろう。

スバル好きには“常識”
毎年何かしらの改良を行っている

 さて、そんな先進技術を盛り込んだフォレスターも、販売が好調だからといってそのままでいいわけがない。スバルは代々どのモデルでも、他メーカーでいうところのマイナーチェンジをほぼ毎年行っている。

 車好きやスバル好きなら聞いたことがあるだろう、「年次改良(アプライド)」というものだ。毎年何かしら手を加え商品の魅力をアップさせる改良を行っている。

 少し話しが逸れるが、この年次改良がいつから行われているのか、スバル関係者や周辺の製造に関わる関係者などに聞き取りを行ったが、いつから行われているのかはっきりしなかった。

 スバルの乗用車の始まりとなるスバル360の頃から毎年変わっていた。という噂も聞くほどだ。確かにスバル360の時にも細かな改良が施されさまざまなバリエーションが生まれていたのは事実だ。

 またスバルの名前を世に知らしめた初代レガシィの時には、この年次改良が定着しており、初期型がA型、次がB型という、今に通じる年次改良の呼び名が始まっていたようだ。スバル車を乗り続けている人ならばある程度通じる、その車種の何型かによって製造年や車の特徴などが分かる便利なシステムでもある。

 今年行われるフォレスターのB型への年次改良はどのようなものになるのか気になるところだが、自動車の開発スケジュールについて考えると、今は約5年前からスタートしているというのが大方の見方だろう。自動車の根本となる骨格やエンジンの開発、デザイン画からスタートしモックアップを何度も作り直して最終デザインへ落とし込んでいく。これらの作業に5年程度掛かっている。

フォレスターの歴史を調べると、実はスバルの革新技術がいち早く投入されている率が高いのが分かる。
フォレスターの歴史を調べると、実はスバルの革新技術がいち早く投入されている率が高いのが分かる Photo:N.Y,

 つまり新型車が発売になるときには、4~5年前から先の状況を考えて設計開発していることになる。さらにそれに続く年次改良の部分も併せて開発していると見るのが妥当だろう。しかしこの辺の部分を開発者に聞いてみると、「今やれる部分の大体は盛り込んでいる」というのだ。

 つまり新型フォレスターが発売になったときには、やりたいことはおおまかにやったということだ。これは先代フォレスターから機能の部分やスタイリングなどガラッと変えたわけでなく、先代フォレスターから引き継げるものは引き継いだことが功を奏しているのかもしれない。

 フォレスターの歴史を調べると、実はスバルの革新技術がいち早く投入されている率が高いのが分かる。先先代の、いわゆるSUVとして全高の高いスタイリングになったSH型ではエンジンの種類は4種類にもなり、後期型へとマイナーチェンジを行うタイミングで、エンジンを今までのEJ型から、今のスバルのエンジンの核となるFB型へと大転換している。通常ならばフルモデルチェンジで行うようなエンジンの変更もマイナーチェンジで行っているのだ。また先代のSJ型でも後期型になるタイミングで、アイサイトのステレオカメラを使って対向車や先行車を検知し、ヘッドランプに内蔵されたシェードによってハイビーム照射範囲を無段階で調整する、スバル車初のダプティブドライビングビームをパッケージ化した「アドバンスドセイフティパッケージ」をメーカーオプションとして新設定した。

 また、1灯でハイビームとロービームを切り替えできるバイファンクションプロジェクターを備えたLEDハイ&ロービームランプや、ステアリング操作に合わせてヘッドランプ光軸を左右に動かすステアリング連動ヘッドランプもスバル車で初めて採用した。今日では水平展開して同じ装備を各車種へ展開している。そして今回の新型フォレスターでは、先代XVハイブリッドがあったとはいえ、より進化したハイブリッドシステムのe-BOXERやドライバーモニタリングシステムなど常に新しい装備を搭載している。

すでに次のフォレスターかその後継車の
基礎開発は行われている

 このへんを開発者にぶつけてみると、「出し惜しみはしていない。今できることは全力でやっている」という。確かに新型フォレスターを何度も試乗していると、今までにない装備やエンジンフィーリング、アイサイトやe-BOXERのモーターアシストのあんばいなど、進化している部分は感じられる。

 年次改良は開発陣の中で、新型の発売までにどうしても盛り込むことのできなかった技術や、コストの面などで次へ回した部分もあるだろう。お客さまの声をフィードバックして改良を加えた物が搭載されるには数年掛かってしまう部分もある。これらが集約されたのが後期型と呼ばれるマイナーチェンジのタイミングかもしれない。

次の一手はどのようなものになるのか非常に興味深い
次の一手はどのようなものになるのか非常に興味深い Photo:N.Y.

 しかしマイナーチェンジのタイミングは得てしてコストカットの煽りを受ける場面でもある。新型車は最初のクルマということもあり、いろいろなコストを掛けて開発している。しかし熟成が進むにつれて要らない部分やお客さまからの声で削除される項目も出てくる。この辺が毎年改良されるスバル車ならではの、買い時はいつなのかを見極めるのが難しくなる部分だ。開発陣のどうしてもやりたかったこととやれなかったこと、どのタイミングで導入できるか市場の反応や世界的潮流を見極めての搭載となるだろう。

 今のスバル車の中で堅調に売れているのがフォレスターだ、国際的に輸出されている世界戦略車でもある。全世界の顧客の声を拾い上げながら進化をする開発を進めているはずだ。今年の6月前後には発売1周年ということで年次改良が加えられることは間違いないだろう。そして2年後くらいにはマイナーチェンジをして後期型になるに違いない。そうした年次改良に余念がない一方で、すでに次のフォレスターかその後継となるクルマの基礎開発は行われていると思われる。

 現在は世界的にSUVブームが起こっているのでフォレスターは好調だ。アメリカではフォレスターの兄貴的存在の、一回り大きく、7人乗りのアセントも好調だという。SUVが好調なスバルと新型フォレスター、次の一手はどのようなものになるのか非常に興味深い。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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