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大阪万博、建設受注争奪戦にゼネコンが「全力投球」できない理由

2019年01月29日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部,松野友美(ダイヤモンド・オンライン

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大阪湾に浮かぶ人工島の一つである夢洲。市街地ではないため、工事の制約が少なく、作業は進めやすい。マンション建設に強いディベロッパーは早速、夢洲周辺の用地取得に向けて情報収集を始めている Photo:PIXTA

 ゼネコン各社で「大阪万博」案件の受注争奪戦が繰り広げられている。昨年11月に2025年の国際博覧会(万博)開催地が大阪に決定、「まだ先の話だから」(ゼネコン幹部)と言いながら、水面下での戦いのゴングは決定前から鳴っていた。

 大阪府と市は、万博開催地となる夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を創るべく誘致を進めてきた。ゼネコン各社は一昨年から万博・IR施設等の受注獲得に向けて、専門組織を立ち上げていたのである。

 大手5社の中でも特に動きが早かったのが、関西地盤の竹中工務店だ。17年10月に万博推進室を設置し、翌年には夢洲MICE/IR推進室を設けた。大林組は昨年5月にプロジェクトチームを新設後、同12月に組織を拡大し、「大阪万博・IR室」を設置した。鹿島も7月に開発推進チームを設け、大成建設は今年1月に、大手では唯一、東京に「まちづくり・IRプロジェクト推進部」を置いた。

 夢洲は大阪中心部の梅田から約10km離れた埋め立て地。08年の夏季五輪の際の選手村を目指し、01年から誘致活動が行われていたが、その開催地は中国の北京に持っていかれた。このため夢洲は活用が進まず、「負の遺産」として残った。今はコンテナ埠頭や物流施設、太陽光発電パネルなどがあるのみで、約200ヘクタールの広大な空き地が広がっている。

 一度は散った“夢”を万博によって咲かそうといわけだ。

鉄道入札で火花散らす
水面下で「鉄道」受注に向けた営業開始

 万博関連の建設は、大まかに鉄道・道路の工事、埋め立て未了部分の造成、電気やガスなどエネルギーインフラ整備、パビリオン建設の順に進む。

 大阪府によると、19年度中には鉄道工事を着工する予定だ。大阪湾には夢洲に加えて咲洲、舞洲と、3つの人工島が浮かぶ。夢洲と咲洲を繋ぐ夢咲トンネルは、09年に道路が開通し、トンネル内の鉄道用のスペースは完成している。残すはレールの敷設と、夢洲内の駅舎を含む鉄道工事である。これによって大阪メトロ中央線の西端、咲洲に位置するコスモスクエア駅から夢洲駅(仮称)に続く線路が延伸される。

 この入札公告はまだ出ていないが、ゼネコンは情報収集に動き、火花を散らす。鉄道建設に強い関西地盤の中堅ゼネコンの社員は、「技術では大手に勝てないが、地元企業だから入札時に点数がつく。これで勝ちたい」と息巻いている。

 なお、JR西日本の桜島線や、京阪電気鉄道の中之島線は夢洲北部に位置する舞洲から夢洲方面への延伸を計画している。新たなトンネルや橋の建設が必要になるため、万博前の完成には間に合わない。予算も課題で、「京阪は建設費用を大阪市に出してもらうため、駆け引きをしている」(関西系財界人)。

 鉄道のほかには、IRの事業者の公募も今年に行われると予想される。米国や香港の外資IR企業は首脳が来日し、松井一郎大阪府知事に面会したり、構想発表会を行ったりしてPRを続けている。事業者決定は、今年夏頃と見られ、遅くとも23年までには夢洲の街づくり計画が具体化する。

万博に“全身全霊”とはならない理由

 経済産業省の試算によると、大阪万博関連の全国への経済波及効果は1兆9000億円。会場建設費は約1250億円にのぼる。IRでは、開業までに累計1兆5000億円、開業後は毎年7596億円の経済効果と試算(関西経済同友会)される。

 巨額の予算を前に、ゼネコン各社はしのぎを削っている。しかし、全身全霊をささげていると表現するには違和感がある。

「昔ならば、万博のパビリオンの建設はぜひ手掛けたかった。しかし今は、万博そのものが流行るのか疑問」と中堅ゼネコン幹部。パビリオンなど“半年で潰される”ものづくりは、地図に残らないため建設の醍醐味が薄れてしまうのだ。

 加えて、首都圏を中心に再開発案件が多発し、大阪以外でも稼ぐチャンスが広がっている。チャンスは広がるも、「全国から資材・人材を確保する必要がある」(鹿島建設社員)と言うように、人手不足が深刻化している。2020年の東京五輪後も、東京圏では大規模開発が控えており、万博・IR関連と人材需要の時期は重なると予想される。

 故に、夢洲周辺の“お祭り”で終わらない、首都圏再開発ラッシュに重ならない、長期的かつ広範囲な関西再開発ラッシュの兆しがあればそこに飛びつきたい――。建設業界は「ポスト万博」に目を光らせている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松野友美)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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