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麻雀はギャンブルから五輪競技へ!?Mリーグの果敢なる挑戦

2019年01月29日 06時00分更新

文● 岡林敬太,清談社(ダイヤモンド・オンライン

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麻雀のプロスポーツ化とゼロギャンブル宣言を掲げて創設された麻雀のプロリーグ「Mリーグ」。開幕から3ヵ月がたったが、その反響はどうなのか?一般には「麻雀はギャンブル」というイメージがまだ根強くあり、参加人口も減りつつあるといわれる今、いかにしてファンを獲得していくつもりなのか?麻雀業界の現状と今後の見通しをMリーグ機構に聞いた。(フリーライター 岡林敬太、編集/清談社)

順調な船出をしたMリーグ
視聴数は1.5倍に

Mリーグ開幕戦の様子
賭博とは一線を画し、「スポーツ」としての公正さを前面に出したMリーグ。オリンピックの室内競技の正式種目にも申請されており、麻雀のイメージは今後、大きく変わっていくかもしれない

「麻雀のプロリーグを国民の娯楽として定着させ、視聴習慣を根付かせたい」

 麻雀好きとしても知られるサイバーエージェント社長の藤田晋チェアマンが、そんな願いを込めて立ち上げたMリーグ。JリーグやBリーグの創設にかかわった川淵三郎氏を最高顧問に迎え、2018年10月1日に開幕した。

 Mリーグの仕組みは、プロ野球やJリーグに近い。有名企業7社が抱える7チーム(1チーム3名構成)が、10月から翌2月までの間にそれぞれ80戦のリーグ戦を行う。上位4チームが3月に行われるファイナルシリーズ(24戦)に進出して優勝を争う。優勝賞金は5000万円。

 ドラフト会議で選抜され、最低年俸400万円を保証されたプロ選手たちが現在、リーグ戦中盤でしのぎを削っているが、その中には、プロ資格を取得したばかりの俳優・萩原聖人の姿もある。試合の模様は、月・火・木・金の19時からAbemaTVの麻雀チャンネルで生中継されるほか、一部試合は東京・港区にあるパブリックビューイング会場での生観戦も可能だ。

 開幕から3ヵ月がたったが、その盛り上がりはいかほどなのか?Mリーグ機構の塚本泰隆氏が語る。

「AbemaTVのMリーグ中継の視聴数は、30万~40万程度。Mリーグが始まる前の麻雀チャンネルと比較すると約1.5倍の伸び率で、およそ15万人の方が毎試合熱心に視聴してくださっています。意外なのは、女性の視聴者が多いこと。全体の20~25%程度を女性が占めており、新たな取り込みも少しずつできているという実感があります」

麻雀人口は回復中?
ギャンブルでなくても楽しめる!

 約200人収容のパブリックビューイングも毎回満席。専門誌以外のメディアの取材も相次ぐなど、Mリーグの滑り出しは快調なようだが、果たしてこれが麻雀業界全体の盛り上がりに、どの程度つながるのだろうか。

パブリックビューイングの様子。リーチが入るとどよめいたり、応援している選手が危険牌をつかむと悲鳴が漏れたり。まるでサッカー観戦のような盛り上がりを見せるという

 娯楽の多様化やネットの普及などを背景に、麻雀荘で遊ぶ人口は年々減りつつある。全国防犯協会連合会の調べによると、ピーク時の1977年には全国に3万4953店あった麻雀荘が、昨年は8736店に。また、日本生産性本部のレジャー白書によると、1982年には2140万人いた麻雀の参加人口は、昨年は500万人まで減少しているという。

 しかし、Mリーグでは、こうした数字をあまり悲観的にはとらえていないようだ。

「若者の麻雀離れが叫ばれて久しいですが、底を打ったのはおそらく10年ほど前で、そこからは徐々に回復傾向にあると感じています。30~50代の方は麻雀との関わりが希薄になりつつありますが、10代や20代、そして改めて趣味としてやろうという60代以上の麻雀人口はここ数年、増えつつあるという実感があります。特に若い世代の活発化が顕著で、それは3年前に始まったAbemaTVの麻雀チャンネルの視聴者の声などからも明らかです」

 人気回復の要因となったのが、オンライン麻雀の普及だ。「麻雀格闘倶楽部」「MJ」「天鳳」などが有名どころで、それぞれ数百万から1000万人ほどの会員数を抱えているという。

「麻雀を始めるにあたっての最大の障壁は、『役と点数計算』を覚えることです。ところがオンライン麻雀だと、その2つを知らなくても、機械がナビゲーションしてくれるので、ビギナーでもゲームを進めることができる。オンラインで、実際の麻雀牌を触らずして学習する若者が大勢いるようです」

 40代の記者は、学生時代に麻雀荘に入り浸っていたクチだが、最近はオンラインの対戦麻雀にハマっている。相手の顔は見えないし、勝っても負けてもお金は一銭も動かないのに、「ランキングや段位を落としたくない」という思いがあるため、一局一局が真剣勝負だ。テンパイすると鼓動が高鳴るし、逆転負けを食らうと泣くほど悔しい。

「そうなんです(笑)。麻雀って、お金を賭けなくても面白いんですよ。しかもオンライン麻雀の多くは、スマホのアプリでも楽しめますから、待ち時間の数分を使ってひとりでも手軽にできてしまうあたりが、雀荘麻雀にはない魅力ですよね」

ゼロギャンブル宣言と
五輪競技への道

 しかし、古くからの麻雀好きの多くは「お金を賭けないと真剣になれない」と考えており、違法であることを承知の上、今もフリー雀荘などで「賭け麻雀」を行っているのが現実だ。「ゼロギャンブル宣言」をしているMリーグは今後、麻雀のギャンブルとしての側面と、どう折り合いをつけていくつもりなのか。

「Mリーグ立ち上げの際の最大のネックは、昭和の賭け麻雀のイメージでした。タバコの煙が漂う中、徹夜してお金を賭ける。そうした不健康なイメージを払拭するのはなかなか難しいのですが、その一方で、今はオンライン麻雀のほか、高齢者の健康麻雀や、子ども向けもしくは女性向けの麻雀教室のムーブメントも広がりを見せています。だからこそなおさら、スポーツ化や健康化に活路があると考え、Mリーグでは賭博行為とは一切関わらないことを宣言したのです」

 Mリーグの選手は、スポーツ選手のようなユニフォーム姿で試合を行い、賭博行為への関与が発覚したら解雇などの厳重処分を下される。リーグとして、麻雀荘の利用までは制限していないそうだが、たとえノーレートで打っていたとしても誤解を招くため、麻雀荘への出入りを自粛している選手が多いという。

「ただ、われわれは『麻雀をギャンブルから遠ざけよう』という啓蒙活動をするつもりはなく、どちらかというと『麻雀はスポーツとしても楽しいんですよ』というPRに注力する構えです。その結果、今後は一般社会における健康麻雀の普及が加速したり、Mリーガーが子どもの憧れの職業になったりする日が来るかもしれません」

 なお麻雀は、2022年の北京冬季オリンピックに向け、国際麻雀連盟がIOCへ室内競技の正式種目として申請している。

「麻雀は現状、地域や団体によってルールがまちまちですが、『Mリーグのルールが統一ルール』だと打ち出していけば、オリンピックの正式種目化に向けて大きく前進するのではないかと考えています」

子どもが憧れる
Mリーガーは誕生するか?

 子どもが憧れる職業になるには、スター選手の登場が不可欠と思われるが、そのあたりはどう考えているのだろう?

「麻雀の難しいところは、わかりやすい偉業を競技の中ではなかなか残せない点です。将棋の藤井聡太さんみたいにデビューから無敗の29連勝を飾ったり、羽生善治さんみたいに七冠独占を達成したりということは、ゲームの特性上、なかなか為し得ない。そうしたことを踏まえますと、スター選手は『競技+α』で現れるのではないかと思います。+αとは、選手の個性。『愛されるキャラクターで、なおかつ、こういう技術がすごい』みたいな形でのスター誕生は十分にありえるでしょう」

Mリーグの試合会場。時間短縮を目的として全自動麻雀卓の自動配牌機能を使用している

 Mリーグ開幕2日目の対局中のこと。イケメン雀士として知られる滝沢和典選手が、「少牌でアガリ放棄」というプロらしからぬミスを犯した。

「広くて暗い会場にポツンと一卓だけあるため、緊張感がすごいんです。プロさえもミスを犯してしまう舞台なんです。でも、滝沢選手はその直後、役満のチャンスを迎えます。そうした人間くささや人間ドラマもまた、選手のキャラ付けにつながるのではないでしょうか」

 お気に入りの選手を見つけると、継続して応援したくなるもの。そして、人が牌を触っている姿を見ると、自分も卓を囲みたくなるのが麻雀だ。Mリーグの発足は、麻雀の新しい可能性を切り開く試みであると同時に、久しく麻雀から離れていた層を呼び戻すカンフル剤にもなるかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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