「第二言語習得研究」による英語学習
英語を効率よく、科学的に習得する方法とは?
2019年02月06日 07時00分更新
意識して習得しないと英語力は伸びない
続いて、母語を覚える過程が解説された。妊娠中の子どもは6ヵ月で聴力ができ、音が聞こえるようになるという。そして生まれて1歳を境にして初めて単語を発声する。周りも赤ちゃん言葉のような易しい単語で話しかけることでだんだんと理解していき、5歳くらいになると習っていないのに文法ができるようになる。
そして小学校へ入学するとマッピングが行なわれる。それまで耳だけで覚えてきたことに対して、音と文字を結びつける作業だ。耳で聞いて誤っていたことが正確にわかるようになる。つまり第一言語となる母語は、初めは読み書きをせず、リスニングから話せるようになり、学校教育を通して読み書きすることで脳の中にインプットされて忘れなくなる。
5歳までにネイティブスピーカーに出会わなければ、その言語のネイティブスピーキング、発音はできないと言われている。今後小学校で英語の授業が始まるが、週に1度くらいの英語の授業でうまくなるわけがない。英語を自然習得することは無理であり、意識して習得しないと絶対に伸びないという。
たとえばスポーツ、あるいは音楽。テニスをしたり、楽器を使ったりするとき、かなりの練習をしないとうまくならない。英語もそれと同じであり、聞いてるだけで話せるわけがない。リスニングができるようになるには、自分で言えるようになることが必要。話せることは耳でキャッチできる。
ここで大学生に映画のDVDを使ったリスニング授業を行なった事例が解説された。英語音声で英語字幕を表示して見る、英語音声で日本語字幕で見る、さらにTOEIC400とTOEIC500のグループに分け、4つのグループでリスニング授業を行なった結果、TOEIC500で英語字幕のグループはリスニング力がかなり伸び、文法力も高まった。TOEIC400で英語字幕のグループはリスニング力は伸びたが文法力は変わらなかった。日本語字幕の2つのグループは変化がなかった。
同じDVDを繰り返し見ることでトレーニングになるが、英語字幕があることが重要だとわかる。視覚からの情報は脳内でワンクッション置かれて、ビジュアルとして認識されてから頭の中で音声化されて脳に信号が送られる。つまり耳からの信号と目からの信号が合致しない日本語字幕では効果がなく、英語字幕を英語音声として理解できないと意味がない。ぼんやりと英語のシャワーを浴びても何の力にもならず、寝ている間に英語を聞くだけで話せるようになるわけがないと田浦教授は断言した。
さらに帰国子女の英語力についての調査をもとに、その英語力の差について解説された。海外へ行った年齢、行っていた期間、帰国してから経過した時間による英語力の差は、やはり小さな頃に外国へ行き、長く在住していた人のほうが英語力は高い。小さな頃にネイティブランゲージに触れることによって、脳にしっかりと残るのだといい、帰国後の期間はあまり関係がないという結果が示された。
トレーニングは感情とともに覚えるのがいい
人の記憶は脳内の海馬にメモリーされるが、翌日になると7割は忘れてしまう。メモなどを取ることで少し長く保たせることはでき、復習することでさらにさらに長く保つことができる。これが長期記憶に入ればしっかりと記憶として残る。先ほどの映画DVDによるトレーニングでは、映画に対する感情とともに覚えることが海馬への記憶につながり、繰り返すことで長期記憶に入れることにつながっていくと解説された。
まとめとして、英語を第二言語ではなく外国語として認識し、それを踏まえた上で勉強することが重要だと述べた。さらに、文法は関係ない、コミュニケーションが取れればいいという考え方は愚の骨頂だと田浦教授は強調。文法と語彙力がないのにどうして外国語を話すことができるのか? 地道に素振りをしないでどうしてテニスがうまくなるのかということと同じで、文法ができなくて英語が話せるわけがないという。
田浦教授は最後に、リスニングとスピーキングは、自分はこれがわからない、聞き取れない、意味がわからないということに気づくことから始め、スポーツや楽器のように地道に練習する必要があると締めくくった。
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