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日本卓球が中国に勝てる!?急成長の秘密は「人間力トレーニング」

2019年01月04日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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男子では、張本智和(15歳)、女子では、伊藤美誠(18歳)、平野美宇(18歳)など、これまで圧倒的な強さを誇っていた中国人選手を破り、世界大会で優勝する若手有望株の選手が増えている。2020年の東京五輪では、日本初の金メダルが期待できるが、この強さの秘密はどこにあるのか。著書『日本卓球は中国に打ち勝つ』(祥伝社新書)があり、現在、日本卓球協会強化本部長である宮崎義仁氏に詳しい話を聞いた。(清談社 福田晃広)

最強の中国を圧倒する
成長著しい日本人選手たち

ワールドツアー・グランドファイナルで史上最年少優勝を遂げた張本智和選手
12月16日、ワールドツアー・グランドファイナルで史上最年少優勝を遂げた張本智和選手。成長著しい15歳の若手である 写真:森田直樹/アフロスポーツ

 日本選手が世界の卓球界を席巻している。2017年4月には、卓球王国・中国で開催されたアジア選手権女子シングルスで、当時17歳の平野美宇選手が優勝。この21年間、ほぼ中国人選手が優勝を独占するなか、しかも完全アウェーの状況で中国のトップ選手3人を打ち破った平野選手に世界が驚愕した。

 平野選手の勢いに続くかのように、男子シングルスでも、驚異的な成長を遂げている14歳(大会当時)の張本智和選手が、今年6月の荻村杯(ジャパンオープン)において、準々決勝と決勝で中国人の世界チャンピオンを破って優勝。同大会の女子シングルスでは、伊藤美誠選手も優勝している。

伊藤選手はさらに今年11月に行われた卓球のワールドツアー、スウェーデン・オープン女子シングルス決勝でも、世界ランキング1位の中国人選手を圧倒して優勝を果たしている。

 これらの日本人選手たちの成長ぶりについて、宮崎氏は以下のように語る。

「平野、張本、伊藤は全員年齢が若く、3ヵ月単位でグングン成長しています。当然、中国に研究されてはいますが、それ以上に成長率が高い。一方、中国人選手は、ベテランなので、これ以上能力が伸びる可能性は低い。そのことを考えると、日本の若手選手が中国人選手を倒すケースは、これからも増えてくるでしょう」(宮崎氏、以下同)

技術だけでなく、“人間力”を高める
指導が日本卓球の強さの秘密

 宮崎氏は、卓球の世界でこれまで日本が中国の後塵を拝していた原因をこう指摘する。

「長い間、中国に歯が立たなかったのは、日本が国ぐるみで選手の強化を怠ってきたから。2001年、日本卓球協会関係者から日本男子代表の監督就任依頼があり、私は『小学生ナショナルチームの新設』を条件に引き受けました。それだけ、日本卓球界の将来に危機感を抱いていたからです」

 2001年まで、日本代表監督は実業団やクラブチームの監督が世界選手権のときのみ、兼任で務めることが慣例となっていた。これでは、国としてまったく力を注いでこなかったといわれても仕方がないだろう。

 その宮崎氏が小学生の選手にまず真っ先に指導するのは礼儀作法だという。

「スポーツをよく知らない人から、よく質問されるのは、『日本人選手はどの技術が優れているんですか?』、『張本選手の何がすごいんですか?』といった技術面のことばかり。しかし、指導者の立場から言えば、幼いころから、メンタル、人間性を鍛えることのほうが技術よりも重要なんです。たとえば、対戦相手に失礼のないような態度、挨拶の仕方を教えることによって、真剣勝負が繰り広げられる。そのような試合をいくつも経て、総合的な“人間力”が育まれ、自発性も身に付き、技術もスポンジのように吸収する選手が生まれるのです」

 宮崎氏によれば、昨年の5月から6月にかけて、ドイツ・デュッセルドルフで行われた世界選手権において、男子シングルスで張本選手がベスト8となり、この結果にメディアは大騒ぎした。しかし張本選手は、準々決勝で世界1位の中国選手に負けたことが悔しく、帰国後の翌日も朝6時から練習していたという。

 世間は「世界1位に負けて当然」と思っていても、本人は「もっと練習しなければ勝てない」と感じているがために、自ら練習をする。張本選手のように、自発的に一生懸命練習するような子に育てることが、結果的に世界のトップ層に名を連ねる選手を生み出すことに繋がっているのだ。

 2008年からは、日本オリンピック委員会(JOC)が主体となって、中学1年生から高校3年生のトップエリートを集中的に育成する「JOCエリートアカデミー」がスタートしている。最初にこの対象となった競技がレスリングと卓球で、前述の平野選手、張本選手もこのエリートアカデミー出身だ。

 日本卓球界の躍進は、才能ある選手を若いうちからしっかり指導するという王道の強化によって支えられているわけだ。

2020年東京五輪は
中国ベテラン選手との争い

 平野選手、張本選手、伊藤選手の活躍ぶりを見ると、やはり期待してしまうのが2020年の東京五輪での、日本勢初の金メダルだろう。素人目から見ると、中国との差は着実に縮まっているように見えるが、宮崎氏は「まだまだ1対9で、中国のほうに分がある」と語る。

 とはいえ、日本選手にも大いにチャンスはあるという。

「中国の、五輪に出場する選手の選考基準は、日本のように最新の世界ランキングではなく、過去の実績を大きく考慮に入れます。このシステムだと、若くて強い選手でも、五輪に出られるとは限らない。そこに隙があります。先ほど述べたように、中国はベテラン選手ですが、日本選手は若く、まだまだ成長が期待できます。特に、男女シングルスの張本、伊藤には金メダルを期待したいですね」

 2017年の平野美字選手の快進撃を契機に、中国人選手の目の色が変わってきたと宮崎氏は語る。

 たとえば中国の卓球プロリーグ「超級リーグ」は、今シーズンから外国人選手が参加できないというルールに変更された。あくまでも推測の域を出ないが、中国が日本を警戒し、できるだけ手の内を明かしたくないという考えがあるのかもしれない。

 今年10月には、日本初の卓球プロリーグ「Tリーグ」も開幕し、卓球の人気が今まで以上に高まることも予想される。開幕まであと2年を切った東京五輪では、日本初の金メダルの期待が高まってきた。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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