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最強クラスのCPUクーラーを「2990WX」「2950X」で徹底テスト

果たして簡易水冷を超えられるのか? 「Wraith Ripper」でThreadripperを空冷運用する

2018年12月28日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU)

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ヒートスプレッダフルカバーは効果絶大

 今回のテストはシンプルに「OCCT Perestroika v4.5.1」の“CPU Linpack(AVX/64bit/全論理コア使用)”を15分動かし、その間の温度変動を「HWiNFO」で監視するというものである。CPU温度はHWiNFO上でズバリ“CPU”という項目があり、これはROG ZENITH EXTREMEのOLED表示とほぼ同値を示すので一見便利だが、温度の刻みが1℃単位と少々粗い。そこで0.1℃単位で細かく計測できるノード0(IOダイ)の温度を示す“Tdie”を採用した。また、計測時の室温は25℃近辺になるよう、エアコンを設定している。

 まずは2950Xの値から見てみよう。CPU定格の状態、続いてPrecision Boost Overdrive有効時のグラフとなる。

↑Threadripper 2950X、定格時におけるTdie(ノード0)の温度推移

↑Threadripper 2950X、Precision Boost Overdrive有効時におけるTdie(ノード0)の温度推移

 定格時の温度推移グラフにWraith Ripperの特性の全てが詰め込まれているといってよいだろう。LIQTECH TR4よりわずかに高い温度を示しているが、同じ240mmラジエーターを備えたA40よりも3℃程度低い。ヒートスプレッダをフルカバーする超大型空冷だけあって、かなりの冷却力といえるだろう。

 ただPrecision Boost Overdriveを有効にすると、どのクーラーも差がなくなる。序盤に少しだけWraith Ripperが70℃以上の値を付けたが、その後はA40やLIQTECH TR4とほぼ同じ温度レベルに落ち着いている。

 続いては2990WXの温度推移をチェックする。発熱量は2950Xより増えることは確実なだけに、どこまで空冷で頑張れるのだろうか?

↑Threadripper 2990WX、定格時におけるTdie(ノード0)の温度推移

↑Threadripper 2990WX、Precision Boost Overdrive有効時におけるTdie(ノード0)の温度推移

 発熱量増加に伴い、温度推移のグラフの上下動が2950Xより激しい。定格時の温度推移はヒートスプレッダのカバー率が低く、ラジエーターも薄めのA40が一番冷えないという点は2950Xと同じだが、Wraith RipperはLIQTECH TR4より微妙に温度が高くなることが観測された。さすがにTDP250Wともなると、簡易水冷の方がガッツリ冷やしやすいという事なのだが、OCCTの負荷をかけて60℃台前半(クロックは最大3.4GHz弱で安定)というのは驚きだ。

 Precision Boost Overdriveを有効にすると、どのクーラーも差がなくなる点は同じ。2秒程度温度がスパイクのように高くなることが観測されたが、どのクーラーもTdieが68℃で安定する。Tdieが68℃だとCPUクーラーのファン回転数調整などに使われるTctlが95℃(68℃にオフセット27℃を足す)ということになるので、第2世代ThreadripperはTctlが95℃以上にならないように調整されているということだろう。

 CPUクロック定格時に、高負荷時のファンノイズも簡単に測定してみた。騒音計は「AR815」を利用し、マザーのATXメインパワーコネクタから20cmの位置で、CPUソケットにマイクを向けて測定した。ただ水冷ラジエーターはマザーのチップセット側に固定してあるため、あくまで参考値としてご覧頂きたい。暗騒音は33.9dBAである。

↑OCCT実行中のファンノイズ

 今回試した中で一番ファンが回るのがA40。冷やすCPUが別のCPUであっても、CPUが高温になってくると爆音になるのでこれは順当な結果。Threadripperに最適化されたLIQTECH TR4はぐっと静かなのは当然だが、Wraith Ripperの静音性も負けていない。静音性といってもしっかりファンの音は聞こえてくるので、無音とまでは言えないが、かなり快適に使えるといってよいだろう。

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