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医学部入試における女性差別

2018年12月25日 09時00分更新

文● 池内 了 編集● 盛田 諒(Ryo Morita)

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●順天堂大学の場合

 文科省が「不適切」と指摘した大学にはいろいろあって、神戸大学のような医師や病床数が少ない地域の出身者を優遇するという不正に関しては、きちんとその旨を受験の際に明らかにすべきだろう。

 私は、そのように地域医療の充実のためという目的を言明し、期間を限定して特別の措置を採る(ポジティブアクション、積極的改善措置)のなら、許容できると考えている。そのままでは解決できない課題に対し、特別措置を採用して解決をはかるという方式である。アメリカでは、マイノリティの大学入学の優遇措置がなされていた。

 同じように、さまざまな点で差別を受けている女性のためにポジティブアクションとして女子受験生優遇措置を採る可能性だってある。しかしながら、おそらく男性から「逆差別」だとして抗議が殺到して潰されてしまうだろう。男性は自分たちがさまざまに優遇され(女性が差別され)ていることを知りながら、それを是正するための女性優遇策を講じようとすれば断固反対するのである。さらに悪質な差別で女子受験生をいっそう不利な状態に追い込んでいるのが実情と言える。

 その典型が、順天堂大学の「女子の方がコミュニケーション能力が高く、男子を救うため補正して女子を低く採点する」というものだろう。

 私は初め「インフォームドコンセントが必要とされる時代だから医師には患者との意思疎通能力が不可欠で、コミュニケーション能力が優れている女性を優遇する」と思ったのだが、状況は真逆であった。この措置を正当化するために、大学側はわざわざ外国人の論文を用意していたそうだ。ところが、この論文はコミュニケーション能力云々のことに関係がないもので、その著者はなぜ自分の論文が参照されているのかわからないと言っている。

 そもそも、大学側は自分たちの言い分に理がないことを知っており、なんとか言い抜けられないかとの苦肉の策で、関連しそうな論文を引っ張り出したのであろう。はからずも、自分たちの方針に自信がなかったことを露呈している。なんと大学として見識に欠ける行為であろうか、と言うしかない。

 結果として、順天堂大学では過去6年の間の平均合格率は男子で9.2%(10.8人に1人合格)、女子で5.5%(18.2人に1人合格)となっていたそうだ。3.7%の差があって、かなり大きいことがわかるが、さらにわざわざ人数で合格数を書いたのは、人数にするとその大きな差がくっきりと見える。

 一般には、現在では女子の実力の方が高い場合が多く、他大学を見てもこんなに格差がつくのは人為的な操作が入っているためと判断できる。その原因が面接試験であるとするなら、面接点のつけ方が大きな問題になりそうである。

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