このページの本文へ

寝屋川市中1男女殺害に死刑判決、不可解だった被告側の弁護方針

2018年12月19日 16時25分更新

文● 戸田一法(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
判決のあった大阪地裁
判決のあった大阪地裁 Photo:PIXTA

2015年8月に大阪府寝屋川市の中学1年生の男女2人を殺害したとして、殺人罪に問われた山田浩二被告(48歳)の裁判員裁判で大阪地裁(浅香竜太裁判長)は19日、「急所の首を数分間、強い力で締め続けた」と殺意を認定。求刑通り死刑を言い渡した。犯行を示す直接証拠がなく、検察側は近年多く採用されるようになった「状況証拠の積み重ね」で立証を試み、弁護側は殺意を否認。主張は真っ向から対立したが、裁判員らは山田被告の公判での主張を「嘘」と判断した。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

被告は初公判まで黙秘

 まず、事件の経過をたどっておこう。

 被害者は寝屋川市立中1年の平田奈津美さん(当時13歳)と星野凌斗さん(同12歳)だ。

 2015年8月12日夜、2人が外出し、13日早朝には商店街を歩く2人の姿が京阪電車寝屋川市駅付近の防犯カメラに写っていた。また別のカメラに山田被告のものとみられるグレーの軽ワゴン車が写っていた。

 そして13日深夜、大阪府高槻市の駐車場で顔などに粘着テープが何重にも巻かれた平田さんの遺体が発見される。さらに21日夜には、大阪府柏原市の山中で同様に粘着テープが巻かれた星野さんの一部白骨化した遺体が見つかった。

 大阪府警は同日、平田さんに対する死体遺棄容疑で山田被告を逮捕、9月12日には殺人容疑で再逮捕した。大阪地検は10月2日、殺人罪で起訴した。

 12月1日には星野さんへの殺人容疑で3回目の逮捕、22日には追起訴された。平田さんへの死体遺棄罪は結局、不起訴となった。山田被告は捜査当初から星野さんの追起訴まで、黙秘を貫いたとされる。

 そして判決まで、公判は計11回を数えた。

 判決によると、山田被告は2015年8月13日ごろ、大阪府内かその周辺で、平田さんと星野さんの首を圧迫し窒息死させた。

土下座に冷ややかな視線

 11月1日の初公判は、いきなりの土下座から始まった。

 罪状認否のため、ゆっくりと証言台に向かい「3年前からずうっと伝えたかった」と発言すると、土下座して泣き始めた。検察側に向かい「本来ならご遺族の顔を見て謝罪するべきだが遮蔽されてできない。声なら届く」と述べた。裁判長が「やめなさい」と注意し、弁護士が肩を叩くが、傍聴した記者らは「芝居がかっていた」と一様に冷ややかだった。

 検察側冒頭陳述などによると、山田被告は8月13日朝、2人と出会い、車で柏原市に移動する途中、コンビニで粘着テープを購入。同日夜、星野さんの遺体を同市の山中に遺棄し、高槻市の駐車場で平田さんの遺体に刃物で切り付けたと主張した。

 また山田被告の服や車内には2人の皮膚片や血痕が残っていたほか、2人の遺体からは催眠導入剤が検出され、山田被告の携帯電話には「ハルシオン、子ども、効き目」「DNA鑑定、汗、死体」という検索履歴があったとした。

 山田被告は罪状認否で「(2人を)殺すつもりはなかった」と殺意を否認。平田さんの死亡については「気が付いたら首に触れていた。その時には亡くなっていたように思う」、星野さんについては「殺意は全くなかった」と述べた。

 弁護側は、平田さんが「帰りたくない」と騒いだため口をふさぐと、動かなくなったと説明。結果として頸部(けいぶ)圧迫で死亡させたことは争わないが、殺意はなく傷害致死罪にとどまると主張した。

 星野さんについては車内で体調が悪くなり、気が付いたら息をしておらず、何らかの体調不良で死亡したとし、保護責任者遺棄致死罪が相当とした。

 また、山田被告は精神障害で心神耗弱だったと主張した。

 お互いの主張が交わされたことで、殺人罪が成立するか否か、また責任能力の有無が争点となった。

法医学者の鑑定が“隠し玉”

 2日の公判には平田さんと星野さんの母親に対する証人尋問が行われた。

 平田さんの母親は「優しい子だった。(山田被告は)最低。人間じゃない」と憤り、星野さんの母親は「(遺体と対面し)やっと帰ってきたと安心したが、望んだ結果じゃない」と肩を落とした。

 そして、星野さんの母親は、星野さんは学校を欠席したことがなく、健康そのものだったと証言。弁護側が主張する「体調不良で死亡」に疑問が呈された。

 6日の公判では、2人の死因を鑑定した法医学者が証人尋問で「(星野さんは)首を絞められた窒息死の可能性が高い」と証言した。根拠として「首を絞められた時にみられる歯の変色があった」と説明。さらに「頭蓋底のうっ血もあった」と側頭部に殴られた時にできるような内出血もあったことを示唆した。

 平田さんについては顔にうっ血や頸部内出血の痕跡があり、手で首を強く圧迫され30分以内に窒息死した可能性が高いと指摘。左半身にあった約50ヵ所の傷は、死後に付けられたと説明した。

 この法医学者の見立てが、検察側の“隠し玉”だったとみられる。当初、起訴状では星野さんの殺害方法や死因を特定していなかったが、初公判前に訴因変更していた。この鑑定結果が、検察側の強い裏付けとの見方が広がった。

 14日は山田被告の被告人質問が行われた。捜査当初から黙秘していたとされ、検察側による供述調書の読み上げもなかったが、事件について本人が初めて言及する機会となった。

 山田被告は2人を車に乗せた後、平田さんの「京都に行きたい」という依頼を断ると「警察に言う」などと騒がれ、そのまま運転したと説明。途中、星野さんが車内で汗をかいて震え出したが、平田さんが「寝たら治る」と話したため催眠導入剤を渡したが、しばらくすると「(星野さんが)息をしていない」と言われたという。

 平田さんの切り傷については「ショックを与えればよみがえると思った」、星野さんに粘着テープを巻きつけたのは「透明になって消えちゃうイメージがあった」と意味不明の説明をした。

 15日の公判では精神鑑定をした医師の鑑定人尋問で「病気ではなく性格の偏りと判断した」などと証言。統合失調症など精神障害の所見は認められないとした。

「生命軽視」と死刑求刑

 20日の被告人質問では、取り調べで捜査員から死刑をほのめかされ「怖かった」と述べ、黙秘は弁護人の指示だったと発言。「葛藤があった。遺族に謝罪したかった」などとも述べた。

 同日午後には被害者参加制度を利用して2人の母親が意見陳述。

 平田さんの母親は「本当のことを知りたいとの思いはかなわなかった」と悔しさをにじませ、「死刑を強く望む」と求めた。星野さんの母親は「妹思いの優しいお兄ちゃんだった。生きている方がつらい」と心情を吐露した。

 初公判での土下座について平田さんの母親は「罪を軽くするためのパフォーマンス」と述べ、星野さんの母親も「全く心に届かなかった」と非難した。

 そして21日の論告求刑公判。

 検察側は山田被告が星野さんと何らかのトラブルが発生して殺害、口封じのため平田さんも殺害したと合理的に推認できると主張。弁護側が主張する星野さんの病死の可能性は「ほぼゼロ」と断定した。心神耗弱についても、事件当日の行動から認められないとした。

 その上で「面識のない12歳と13歳の子どもを1日で殺害し、生命軽視の度合いが強い」として死刑を求刑。遺族側の弁護士も弁論で「心からの反省がない」と死刑を求めた。 

 判決では、山田被告の完全責任能力を認め、2人に対する明確な殺意を認定。弁護側の平田さんに対する「結果として死亡させてしまった」という傷害致死、星野さんの「病死」という保護責任者遺棄致死の主張も「健康面に全く問題がないのにその日のうちに死亡する可能性は極めて低く、急死する持病も認められない」とし、いずれも退けた。

 判決は裁判員による判断で、おそらく山田被告は控訴するだろう。

 それにしても不可解というか、理解できなかったのは弁護人による弁護方針だ。

 初公判では情状狙いなのか、山田被告は土下座して逆に遺族らの反感を招いた。捜査当初から黙秘させていたにもかかわらず、公判での供述では星野さんの「病死」を主張したり、平田さんは「気づいたら死んでいた」と言い逃れのような主張をさせたり…。

 結局、検察側に法医学者の証言という決定的な証拠を突き付けられ、つじつまの合わない「嘘」が露呈する結果になってしまった。法廷戦術として「殺意」を回避するつもりなら、最後まで黙秘させるのが正解だったはずだ。

 結局、弁護人は何をしたかったのか、筆者には理解に苦しむ。

 今回の判決は確定したわけではない。山田被告が死刑を受け入れても控訴しても、若くして失われた2人の命は戻らない。こうした事件が二度と起きないことを心から願い、2人の冥福を祈るばかりだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ