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ローソン銀行が「銀行冬の時代」にセブンの後発で参入する理由

2018年12月18日 06時00分更新

文● 末吉陽子(ダイヤモンド・オンライン

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10月15日、コンビニ銀行「ローソン銀行」が営業を開始した。7年ぶりとなる銀行新規参入であり、流通系金融機関としてはセブン銀行、イオン銀行に続く3行目となる。近い将来には、キャッシュレス決済に対応した新サービスも手掛けるという。超低金利が続く昨今、“銀行冬の時代”の到来が叫ばれて久しいが、このタイミングでの参入に勝算はあるのだろうか。決済サービスに詳しい野村総合研究所・田中大輔氏に聞いた。(取材・執筆/末吉陽子、編集/清談社)

当初のビジネスモデルは
セブン銀行とほぼ同じ

10月15日に営業開始したローソン銀行
流通系金融機関としては後発だが、ローソンの店舗ネットワークの多さと便利さは大きなポテンシャル。キャッシュレス決済にも取り組んでいくという Photo:Akiko Onodera

 ローソン銀行は、全国に1万3000以上設置されているローソンATMの事業を引き継ぎつつ、普通預金と定期預金の新規口座獲得という新領域への挑戦がメインになる。

 ローソン銀行の利用状況に応じて、Pontaポイントがたまり、年中無休で7時から19時はATM取扱手数料が無料、さらにスマートフォンアプリでも簡単に口座開設ができるなど、コンビニ銀行ならではの顧客サービスも提供していく。

 これらのサービスは、コンビニ銀行としては特段、目新しいわけではないが、ローソンATMの台数規模にはポテンシャルがある。

「コンビニに行けばATMがあるというのは、日本人の共通認識ですから、新規参入に際しては優位といえるでしょう。ローソン銀行以外の口座を保有する人もローソンATMでお金を引き出せるので、手数料も入ってきます。また、事業者サイドのメリットとしては、グループの規模が大きくなってくると、回るお金の量も増えてくるので、金融を内部化していく発想は自然なものです。銀行を持つことで、資金調達やグループ内の資金の移動などにまつわるコストを抑えられます。いずれにしても、開業時点のビジネスモデルはセブン銀行とほとんど変わりません」(田中大輔氏、以下同)

 流通系金融機関としては後発ではあるが、全国で24時間営業しているコンビニATMならではのネットワークの多さと便利さは、リテール向けサービス進出に有利である。ひとまず、ローソン銀行設立記念の「ATM利用でからあげクンが半額クーポン」は好評だったというが、今後の戦略はどのようなものなのだろうか。

キャッシュレス決済は
メリットとともにデメリットもある

 ローソン銀行が今後、チャレンジしていく事業の1つに、キャッシュレス決済がある。90を超える金融機関と連携して仕組みをつくっていきたいというが、現時点ではその全貌は明らかになっていない。

「ローソン銀行はATM銀行の業態になるので、現金の出し入れが当面の収益を支えることになります。それを踏まえると、キャッシュレス決済の推進は矛盾する戦略です。ただ、預金されているお金を動かすという意味では、キャッシュレス決済は有効だと思います」

 時代の要請に鑑みても、キャッシュレス化は進むことが予想されるが、そもそもコンビニがキャッシュレス化を推進するメリットとは?

「キャッシュレス化自体は、現金を扱うコストの削減につながります。たとえば、コンビニでも顕著ですが、毎日おつりのための小銭をたくさん用意して、『1万円入ります』と現金の確認、さらに1日のお金の出入りの計算結果とレジ内の現金が合っているのか、確認が必要です。また、レジにお金がたまったら銀行に持っていくなど、現金ゆえの工数がかかります」

「現金のハンドリングには、こまごまとしたコストが発生しているので、それを削減することができるという点でキャッシュレス化のメリットがあるといえるでしょう。また、キャッシュレスにすることで、決済のデータが、現金の時よりも蓄積しやすくなりますから、それをベースにCRM(顧客関係管理)の効率化や、新しい金融サービスの開発につながることも予想されます」

 こう聞くとキャッシュレス化はいいことずくめだが、同じくコストの観点からはデメリットもある。

「キャッシュレス決済に置き換えていくコストがそれなりにかかります。キャッシュレス率がいきなり100%になるわけではないですから、現金の取り扱いコストは継続してかかる。その上に、キャッシュレスに移行する初期コストが別途、かかるのです。また、決済サービスの多様化にどこまで対応するのかによって、かかるコストも変わるでしょう。また、災害で停電すると使えないといった懸念もあるので、そうした対策も万全にしていく必要があります」

 そもそも現金好きだといわれる日本人。その文化的な背景を乗り越えて、どうキャッシュレスの魅力を打ち出していくのか。統合が進むコンビニ業界で勝ち組に数えられるローソンだが、Eコマース市場の台頭も目覚ましく、ネット銀行の利用者も増える中、どのような戦略を描いていくのか。今後の動向に注目だ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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