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ユーザーが自ら語るSlack活用 第1回

実際にSlackを活用している生の声をお届け!

ナビタイムジャパン、カオナビ、シンプレクスのSlack活用法とは?

2018年12月13日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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セキュリティにこだわったSlack環境を構築した「シンプレクス」

 シンプレクスは「創業以来20年にわたり、金融機関に向けたフロントソリューションを提供している。メガバンクなどの機関投資家向けディーリング&リスク管理システムや、個人投資家向けのオンライントレーディングシステムを提供。案件をコンサルティングするところから、開発、運用、保守まで一気通貫で支援している。

シンプレクス 金融フロンティアディビジョン プロフェッショナル 盛田崇弘氏

 ミッションクリティカルなシステムを扱っており、24時間365日、安定したシステム運用がマスト。その中で、いかに業務を効率化するかというところにも携わっているそう。

「われわれが抱えていた課題は大きく3つありました。1つ目が、複数のサテライトオフィスに従業員が点在していたという状況です。1200人いるのですが、そのメンバー間でかなり密にコミュニケーションを取らなければいけません。しかし、その時はメールや電話しかなかったのです」(盛田氏)

 2つ目が、昨今の金融システムの成長に伴い、難易度の高いプロジェクトが増加してきたこと。そして、3つ目が高いセキュリティ要件を求められるという金融系IT企業ゆえの苦悩があった。

 Slackの導入を検討し始めた時に、公募による有志チームを立ち上げた。監査検証も行ない、クリアしてから部門単位での本運用を開始した。Slackを使いたいという人が多かったので、立候補が多かったそう。とはいえ、ユーザー・監査検証の段階でいくつか課題は出た。

 まずはコンプライアンス課題。セキュアな監査ログが必要になるが、内部監査指摘でひっかかったそう。ログの閲覧ビューがSlackにないので、自作もしくはサードパーティ製のツールが必要になったのだ。そのためのセキュアなインフラも必要になる。そこで、有志チーム3人が3週間でAWS上に監査ログ基盤を構築したという。

AWS上にSlackの監査ログ基盤を構築し、社内のファイアウォールを超えて、監査ユーザーが閲覧できるようにした

 次に、技術課題。アプリ連携をしたいので、CI/CD環境を構成する各ツールからの通知をSlackに集約させたいというニーズがあった。ネットワーク制約により各ツールを構築しているサーバーに対して、プロキシ設定が必要になってくる。しかし、同社の社内ネットワークでは、CI/CD環境が多岐にわたって構築されており、個別にプロキシを設定することができなかった。そこで、中継サーバーを立て、それに対してプロキシを使って連携するようにした。

社内ツールと連携させるために、プロキシを設定した中継サーバーを用意した

 最後で、さらに一番重い課題だったのが、ユーザー対応におけるアプローチ。

「当初、使いたい人が使えばいいというスタンスで始めたのですが、ワークスペースが乱立してしまい、ピーク時には20以上にもなってしまいました。アプリ連携や社外ユーザー招聘のフローも不明瞭。それによって、問い合わせが膨大に発生したのです」(盛田氏)

 そこで盛田氏は、運営整備の一環として、Slackの設定とガイドの整備に着手した。まずは、ワークスペースを20個から3つに絞った。これで、ユーザーが参加すべきところが一目瞭然になった。Slack上で意見収集とディスカッションをできるようにした。そこで精査された内容をユーザー利用ガイドに反映した。

「Slackを全社導入できた理由としては、社内外で協力体制を整備できたことです。一人でやっていたら、おそらく監査ログ基盤を構築することはできませんでした。各ステークホルダーに根気よく説明して、協力を仰いだことで、導入推進モードに切り替わったということは実感しています」(盛田氏)

 今後は、全社統一されたワークスペースの整備や、SlackからSaaSや社内ツールを操作できる環境を整備していきく予定だそう。「全社導入からが本当のスタートだと思います」と盛田氏。より付加価値のある環境整備を進めていくとのことだ。

セキュリティは? 優位性は? 過去のデータはどうした?

 最後に登壇したユーザー企業の3社によるQ&Aが行なわれた。

Q:セキュリティは大丈夫?

「認証周りはSSOでHDE Oneを使っています。情報のやりとりでは、パブリックで話せないものはプライベートにしています。メールと比べるとSlackの方が安全ということもあります。間違った添付ファイルを送ったときも、メールだと消せないので、その分安全だと思います」(和賀氏)

Q:ITにあまり強くない社員でも使えるのか?

「非エンジニアは9割がチャットで、1割が業務でボットを使っています。このBotはエンジニア用意しています」(天野氏)

「カオナビでは在籍150名のうち100名がバックオフィスの人間です。いろんなことを試させるということをやっています。もし、間違っていても、おおらかに見ています。そこで、変に叱ったりすると萎縮したりするので、みんなと盛り上げるばと考えています(和賀氏)

Q:他社ツールと比較した場合のSlack優位性は?

「Slack使っている会社がとても多いと感じていて、え、シンプレクスさん使ってないんですかと言われます。その市民権も優位性かなと考えています。外部ユーザーを招聘したときに、シンプレクスさんSlack使っているならということで、導入されることも増えてきました」(盛田氏)

Q:以前使ったチャットツールからの移行時に過去のデータはどうしましたか?

「前のツールのログを取ってほしいという話はありました。ダイレクトメッセージとグループチャットによって機能が異なり、ダイレクトメッセージは各個人にお願いしました。グループチャットの利用度の高いモノに関しては情報システム部で取得しました」(天野氏)

「カオナビでも同じようなことがありました。ログは移行できないという啓蒙をしていました。もし、前のチャットのログが欲しいのであれば、ログはあるので参照するというルールを設けました」(和賀氏)

「弊社の場合は、移行しませんと宣言して、捨てました」(盛田氏)

 今回は、既存のチャットサービスからSlackへの移行検討、導入、活用といったステージを具体例と共に紹介してくれ、参加者にとってもとても参考になる内容だった。3社とも、導入に大成功し、業務の課題を解消できている。似たような課題を抱えている企業は、Slackの無償版を利用し、まずは検証することをお勧めする。

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