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二酸化炭素排出量は再び増加傾向に、GCPが報告

2018年12月07日 13時54分更新

文● James Temple

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世界経済が成長を続けているという良いニュースは、一方で「気候汚染」という悪いニュースを意味する。

グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project:GCP)の新たな報告書によると、世界の二酸化炭素排出量は、2018年には3%近く上昇する見込みだ。比較的横ばいだった3年が続いた後、2年連続の上昇となる。

これらの内容は国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)が12月4日に発表した別の分析結果 とも一致する。発表によると、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域の豊かな国々の二酸化炭素排出量は5年間減少していたものの、今年は全体で0.5%の増加に転じる見通しだ。

12月5日のエンバイロンメンタル・リサーチ・レターズ(Environmental Research Letters)誌で発表された見解は、今週ポーランドのカトヴィツェで開催中の、政府職員や気候専門家が集まる第24回気候変動枠組条約締約国会議(COP24)に見て取れるように、危機が大きくなりつつあることを強調している。同会議の主要目標は、各国がどのようにパリ協定の目標値未満に気候汚染を抑えるかのルールを完成させることだ。

10月には、国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)はこう警告した。各国の誓約を実現するだけでは、パリ協定で掲げられた理想的な目標である、地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるのに十分でないというのだ。国連や関連機関は、この基準値に2030年にも到達してしまう可能性があるとしており、極度の暑さや洪水、干ばつのリスクが容赦なくもたらされることになる。最近の傾向では、今世紀末までに3℃から5℃気温が上昇する可能性がある

グローバル・カーボン・プロジェクトの報告書によると、世界中で経済が拡大するのに伴い、より多くのエネルギーが消費されている。化石燃料による二酸化炭素排出量は、2017年の上昇率1.6%を上回り、今年は2.7%上昇すると見られている。これらの経済の傾向から、2019年にも気候汚染のさらなる悪化が想定されている。

「我々は二酸化炭素排出量が数年前にピークに達したと考えていました。いや、おそらくそう望んでいたのです」と、報告書の共著者であるスタンフォード大学のロブ・ジャクソン教授(地球システム科学)は述べている。「2年間の新たな成長の後では、それは希望的観測にすぎなかったということです」。

世界三大気候汚染国である中国、米国、インドは、二酸化炭素排出量の上昇を中期想定でそれぞれ4.7%、2.5%、6.3%とした。欧州連合はかろうじで0.7%の減少としている。

米国では、比較的寒い冬と暑い夏の影響で暖房や冷房の使用が促進され、二酸化炭素排出量が増加した。電気自動車への高まる関心と期待もむなしく、原油価格の低下に促された軽トラックとガソリン購入の増加もまたその一因となった。

中国での二酸化炭素排出量の増加は、世界的経済成長に後押しされた鉄や鋼、セメント製造などの重工業ブームを反映している。一方で、「何億もの人々がいまだに安定した電気を入手できていない」途上国であるインドでは需要が急激に高まっており、もっとも汚染を招く物質の1つである石炭の使用が増え続けている。

少しだけ良いニュースが1つある。石炭の消費がおそらくピークを迎えたということだ。2013年以来、石炭の使用量はゆっくりと減少している。二酸化炭素排出量を増やさずに経済成長を続けるには、風力や太陽光、原子力などのカーボンフリー・テクノロジーや電気自動車が、シェアを拡大する天然ガスや石油に取って代わる必要がある。

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