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サイバーセキュリティ小説コンテスト 大賞および各スポンサー賞発表!最終選考会レポート

2018年12月20日 17時00分更新

文● 西牧/ASCII

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サイバーセキュリティがテーマになっているかどうか

 冒頭、角川スニーカー⽂庫編集部が最終選考候補作品として残った6作品個別に選んだ経緯を説明。続いて、各作品を最終選考委員がそれぞれ講評していく流れになった。

 講評では「おもしろい」「この作品が好き」「個人的には読みづらい」などのストレートな感想も出ていたが、一番のポイントはサイバーセキュリティがテーマになっているかどうかだった。サイバーセキュリティの解説がしっかりされているか、理解して書かれているか、あるいはネタとして拾っただけなのか。協賛でもある各企業の選考委員がしっかり吟味していた。

講評しつつ議論する場面も

 一方で小説としての読みどころは赤野氏や笹尾氏が分析。作品のどういった部分がテクニックとして際立っているか、読みどころはどこか、課題はなにかなどを丁寧に講評した。

 それぞれの意見を聞いたうえで、大賞の決定には投票を採用。持ち点はひとり3点で、最も良かった作品が2点、次に良かった作品が1点という形で挙手していった。

 投票後に点数を数えると最も良かった作品が真っ二つに割れ、決選投票に。

指で2点、1点を表した投票

 2回目の投票の結果、大賞を受賞したのは『目つきの悪い女が眼鏡をかけたら美少女だった件』に決まった。

 選考会後にまとめた講評は以下のとおり。

大賞:『目つきの悪い女が眼鏡をかけたら美少女だった件』
学園ラブコメとしてはベタでありながら、詳しくない人でもサイバーセキュリティの世界に連れて行ってくれる作品に仕上がっていたことが、大きなポイントでした。ヒロインの可愛さや、ストーリー展開の良さも高評価。サイバーセキュリティのキーワードも正しく使われており、さらに深い世界観が書けるのではという期待感も込めて、大賞となりました。

マイクロソフト賞:『ハクスタジア』
完成度が非常に高い作品。会話を織り交ぜながらサイバーセキュリティを説明するなど、著者さんがわかりやすく解説することに意識していた点が高い評価につながりました。キャラクターものとしてしっかり読ませる力があり、さらにストーリーのおもしろさを推す声も多数。ライトノベルとサイバーセキュリティが高次元で調和されていました。

サイボウズ賞:『電脳剣客カプリッチオ』
ラノベとして読ませてあげようという勢いを感じました。ネタはちりばめられているものの、全体的にサイバーセキュリティ要素は少なく、もう少し入れ込んでほしいという声も。一方でSF的な和の世界観が混ぜ込まれている点は魅力的。読みやすくもあり、エンターテインメントとしておもしろい作品という評価が集まりました。

日立システムズ賞:『電子の海のaLiCE』
読みやすいという声が最も多かったのが本作。安易に使いやすい違法サイトにアクセスすると事件が起こってしまうという「ピンと来る」展開と、AIを軸にしたサイバーセキュリティのコアな部分がよく描かれていました。ストーリーの受け入れやすさから、サイバーセキュリティに関心を持ってもらう作品としては最も良い、という評価もありました。

『呼吸する町』
設定や舞台の世界観で読ませる「これぞハードSF」といえる作品でした。サイエンスフィクションとしてはよくできており、読み進めていくうちにのめりこんでいけるストーリーの上手さもあります。作品のおもしろさは高い評価でしたが、惜しむべくはサイバーセキュリティ要素の弱さ。「もう少し触れていたら」という声が多く出ました。

『ケルムの電子海は、今日も空が青い。』
サイバーセキュリティのネタがまとまりきっていない点はもう一歩ではあるものの、キャラクターをどうやって可愛く、そして感傷的に見せるかという意図はうまく伝わりました。女性の探偵と男性の助手という、昔から愛されるタイプの設定や、トロイの木馬などのわかりやすいワードから、雰囲気が楽しめる作品に仕上がっています。

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