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鹿島に1000億円請求、アルジェリア高速道めぐるJV内バトルの裏側

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鹿島を代表とする共同企業体(JV)が2006年に受注した総工費5400億円のアルジェリア高速道路工事は、代金の未払いをめぐって同国政府と対立し、16年に和解、決着したかに見えた。ところがこの11月、JVに参加した大成建設など3社が鹿島に賠償金約1000億円を請求。JV内バトルが始まった。
アルジェリアの高速道路工事現場
3工区あるアルジェリア高速道路工事のうち、鹿島JVはチュニジア国境に至る東工区を受注。トンネル14本などが含まれていた 写真提供:鹿島
鹿島を代表とする共同企業体(JV)が2006年に受注した総工費5400億円のアルジェリア高速道路工事は、代金の未払いをめぐって同国政府と対立し、16年に和解、決着したかに見えた。ところがこの11月、JVに参加した大成建設など3社が鹿島に賠償金約1000億円を請求。JV内バトルが始まった。

 1000億円に上る“授業料”をめぐる決着はまだついていなかった。ゼネコン大手の大成建設と準大手の西松建設、安藤ハザマは11月、アルジェリア高速道路工事における損害賠償金1062億円相当の支払いを、大手の鹿島に求める仲裁を一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)に申し立てた。

 鹿島と仲裁申立人の3社、伊藤忠商事から成る共同企業体(JV)「COJAAL」は2006年、アフリカでアルジェリア公共事業・交通省高速道路公団(ANA)から大型工事を受注。東西約2000キロメートルを横断する道路のうち、東工区(約400キロメートル)を総工費5400億円で受注した。その規模は日系ゼネコンの受注としては過去最大級の海外案件だった。

 工事は06年に着工し、10年2月に完成する予定だったが、治安の悪化や、資材調達の遅滞に加え、トンネル崩落事故も発生。設計変更に伴う追加工事代金の回収もできないまま、約8割まで完成した状態で工事がストップした。

 COJAALはANAと交渉を続けたが進展が見られず、14年6月に工事済み部分の代金の支払いを求めてフランスの国際仲裁裁判所に仲裁の申し立てを起こした。その結果、16年7月に和解契約を結び、未払い金の一部を受け取るとともに残り約2割の工事は解約することで合意。受注から10年を経て“大出血”を止めたが、代償に約800億円もの損失を抱えた。

 損失分はすでに出資比率に合わせてJVに参加した各社が補填。ゼネコン各社は、17年度までに損失の会計処理を完了した。

 鹿島、大成建設の17年度業績は好調な国内需要に引っ張られて最高益を更新。海外で被った損失が埋められて問題は一件落着したかに思われたが、仲裁申し立てにより第2ラウンドのゴングが鳴った。

「アルジェリアの案件はその実、鹿島の現場だった。大成建設など3社は社員を貸し出す立場だった」とゼネコン業界幹部。一般に、スポンサーが出資金額の差配や発注者との契約の交渉を担い、協力会社を選ぶ権利までを持つことが多い。入札時に「準備委員会」、工事進捗の区切りで「JV委員会」が複数回開催されるなど、民主主義的な仕組みはあるが、申し立て側はスポンサーに出資比率以上の損害負担を求めたのである。

 第2ラウンドは、JV内の対立だ。JVの代表者である鹿島における「代表者(スポンサー)としての義務違反」が争点である。

 対する鹿島の押味至一社長は、「仲裁の申し立てに対応するのみ」と多くを語らないが、鹿島側は「16年の和解はJVの総意」であるとし、出資比率に合わせて各社で損失を補填するのが筋と譲らない。申し立て側の主張が通れば、損失が上乗せされてしまう。

JV内バトルは
株主へのポーズとの見立てあり

 もっとも、鹿島が損害賠償を要求されたと公表した11月19日の翌日以降の同社株価に大きな影響はなかった。業界関係者の中には「(申し立て側は賠償金を)取れないと分かっているが、自社株主へのポーズとして仲裁を申し立てているのではないか」という“出来レース”の見立てがあるのだ。

 大成建設の首脳、西松建設、安藤ハザマは株主対策と賠償金の内訳について「係争中のためコメントは控える」と回答している。仲裁の過程は非公開だが、効力は裁判と同じ。控訴の仕組みはなく、一発勝負となる。1年以内には決着すると想定される。

 仮に18年度内に決着し、鹿島が賠償金を一部でも支払うことになれば、鹿島の19年度の株主配当金の原資に影響しよう。長引いて19年度に決着すれば20年度の配当に響く。鹿島側が仲裁によって巨額の損失を被れば、今度は同社の株主が黙っていないだろう。まさに“泥仕合”となる。

 幕引きがなお長引くほどに高い“授業料”となった原因の一つに、国内ゼネコンの海外での経験値不足がある。

 過去の海外大型案件は、戦後賠償の一環やODA(政府開発援助)が多くを占めてきた。長期的には国内の新築案件の先細りが確実視される中でODAに頼らない独自受注を海外に求める流れが生まれるも、それをこなし切れる経験が足りなかったのである。

 海外売上高比率を見ると、大手エンジニアリング会社に比べてゼネコン大手の数字は軒並み低い(下図参照)。エンジ関係者は「海外では分厚い契約書を作り、リスク管理を徹底するのが常識。ゼネコンは失敗のたびに担当者が飛ばされ、経験が引き継がれない」とゼネコンの甘さを指摘する。

 損害負担をめぐる争いが出来レースなのか泥仕合なのか以上に重要なのは、高い“授業料”をただの失敗による損失で終わらせないことである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松野友美)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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