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スポーツエンターテイメントの未来

「スポーツは楽しい」を再認識させる仕掛けが産業化のカギ

2019年01月28日 06時00分更新

文● 本田雅一 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真● 曽根田元

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「スポーツ観戦を楽しい」と思えるための気付き

 卓球に場合、テニスよりもスピーディで、ボールの回転による変化の大きさ、攻守の入れ替わりや精神面でのゲーム展開への影響など、ドラマチックさやダイナミズムを持つ要素が多数あり、それをネット中継やまるで総合格闘技大会のような演出を組み合わせることでエンターテインメント性を高めた。とはいえ、どんな競技であれ従来の枠組みでは伝わりにくかったが、ネット社会を前提として再構築することで新たな人気スポーツに成長させられる要素、魅力はあるのではないだろうか。

 テレビ放送前提の事業スタイルでは「放送枠」という不動産的価値のある場所を確保せねばならないが、ネット配信であればグローバルに特定ファンに向けた中継システムを比較的容易に作ることができ、既存の配信事業者と手を取り合うこともできる。

 T2APACに関しても、さらに小型固定カメラを増やし、高速カメラによるスローを効果的に挿入。あるいは異なるアングルのカメラを同時にストリーミング配信するなどの工夫をすることで、トップ選手がどれほどのテクニックで回転をかけ、魔法のように変化するボールを操っているかを感じられるよう、今後も娯楽性を高める可能性は残っているだろう。

 その競技の専門家、競技者が、現代のテクノロジーや通信環境を前提に頭を捻れば、スポーツのエンターテインメント化を行う余地は大きいのではないだろうか。

 ただし、既存のメジャースポーツに関しても変化の余地はある。

 たとえばプロ野球は全国規模の試合中継こそ、以前ほど多くはなくなったが、地域ごとの放送、スタジアムへの集客などの面では好調な球団が多く、また福岡ソフトバンクホークスのようにスタジアムを買収することで、球団としてのビジネスを拡大している例もある。

 日本の場合、プロ球団であってもスタジアムを所有していないケースが多いが、昨今はスタジアム建設とスポーツチーム経営を一体化させる事例も増加してきた。そこにネット配信を組み合わせることで、市場性をさらに拡大することも可能だろう。

 2020年になれば、東京オリンピック開催とともに携帯電話ネットワークが第五世代の「5G」時代となる。5G時代はこれまでのように携帯電話事業者だけがネットワークを構築して提供するのではなく、スタジアムなど人が集まる場所など特定の施設に、施設の管理会社が基地局を配置し、そこで回線提供のビジネスを開始するようになる。

 「スポーツエンターテイメントを核にして、観戦客とビジネスに参加する企業による複数のプレイヤーがビジネスをするマルチサイド・プラットフォーム化がデジタル技術で可能になれば、リアルなスポーツ空間をも組み込んだ新たな市場が誕生する可能性も考えられる」と高橋氏は言う。

 スタジアムのエンターテインメントシステムと観戦を一体化させた新しい事業の可能性がそこにはある。「スポーツの観戦は楽しいものだ」という原体験を提供し、さらに拡大することで広げられる領域はまだまだ多い。

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