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5分でわかる「ネット動画配信サービス」外資と国内勢の違い

文● 沼澤典史(ダイヤモンド・オンライン

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世界中でネット配信サービスがしのぎを削る戦国時代になっている。業界の勢力図としては、日本に進出してくるグローバル企業勢に対して、日本企業勢が奮闘しているという構図だが、さらに細分化して見ると、各社には放送番組の傾向や、経営戦略の違いもある。各サービスを比較しながら、業界の勢力図の未来を占ってみた。(清談社 沼澤典史)

どのサービスを選ぶべき?
群雄割拠のネット配信サービス

動画のネット配信サービス、会社ごとの強みを分析しました。
AmazonとNetflixが資金力とブランド力で2大巨頭と言えますが、dtvやHulu、U-NEXTといった日本勢は作品数の多さがウリです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 インターネット回線などを活用した、動画コンテンツを定額制で利用できる「ネット配信サービス」市場は拡大し続けている。

 ICT総研の調べによれば、2017年末にはネット配信サービスの日本国内利用者は1440万人を突破し、2020年には2010万人を超えるという(1本あたり数百円程度で視聴できるペイパービュー方式も含める)。

 現在の主なネット配信サービスは、世界的に会員を拡大するNetflixとアマゾンが2大巨頭として君臨し、日本企業のdtv、Hulu、U-NEXTなどが後を追う構図になっている。

 人気の理由は、そのコスパの良さ。スマホが1台あれば、好きな場所、時間に映画やドラマ、スポーツ、バラエティーなどを視聴することができ、ほとんどのサービスが1000円以下の月額制となっている。

 もっとも、初心者にはそれぞれの違いはなかなかピンとこないかもしれない。どのサービスを選べばいいのか悩んでいる人のために、代表的なネット配信サービスの特色を比較してみた。

ネットを制覇した「アマゾン」は
スポーツ中継とオリジナル作品が売り

 まず筆頭に来るのは「アマゾンプライムビデオ」。会員数は世界で1億人以上、日本でも800万人いると言われている。

 放送番組数は公表しておらず、カスタマーセンターに電話しても「非公開であるため言うことができない」とかたくなだったが、推定2万〜3万作品といったところだろう。月額325円(年会費3900円)で動画や音楽のサービスが利用可能で、同社が手掛ける配送サービスでは送料無料などの特典も付いてくる。

 追加料金の専門チャンネル(アメリカで人気のドラマチャンネル「HBO」、ドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリー」など)もあり、ケーブルテレビよりも安く見られる。スポーツ中継にも注力しており、アメリカンフットボールNFLや、サッカー・イングランドプレミアリーグの放映権も獲得(年間20試合)するなど、独自路線をとっている。

 また、オリジナル作品の制作やコンテンツ購入にも力を入れており、2017年にはおよそ45億ドルを投資。アマゾンスタジオが手掛けた映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は2017年アカデミー賞脚本賞、主演を務めた俳優ケイシー・アフレックは主演男優賞を獲得した。手掛けた話題作品をアマゾンプライムビデオで配信し、集客を狙っている。

 ダウンタウンの松本人志と組んだ「ドキュメンタル」などオリジナル・バラエティーが話題となったのは記憶に新しく、さらに、今夏には映画「シン・ゴジラ」「寄生獣」など東宝の話題作を多く配信するなど、日本国内での会員獲得にも余念がない。

 世界的には今後も独自スタジオによる映画、ドラマ製作で賞レースに出品し、プロモーションする戦略だという。スポーツ中継や専門チャンネルの追加でライバルと差別化をはかり、さらなる会員獲得を狙っていく。

1億人以上が見るNetflix
アニメやドラマで覇権を狙う

 世界中で最も会員数が多いネット配信サービスといえばNetflixだ。2018年第2四半期(4~6月)の決算によれば、前年同期比25%増の1億3014万人が加入している。

 こちらも、カスタマーセンターに放送作品数を尋ねたところ、「弊社でも把握し切れていないため答えられないが、数千本」という回答だった。

 月額800円から利用できるNetflixの特徴は、なんと言ってもオリジナル作品の質の高さだ。2018年にはコンテンツ投資額を80億ドルにすると発表し、他社をしのぐ高品質の独自コンテンツで加入者を取り込む算段である。

 その最たる例が、巨匠デビット・フィンチャー監督と名優ケビン・スペイシーが参加した、Netflixオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」。この作品は、プライムタイム・エミー賞の3部門(監督、脚本、キャスティング賞)を受賞した。

 ドラマ部門で受賞による効果が大きいと見込んだのか、アカデミー賞獲得にも乗り出している。最近は映画館買収の動きも報道されている。

 日本においては、特にアニメ制作に注力し、すでにアニメ制作会社50社と提携、20作品をオリジナルで製作中だという。アニメの需要は約9割が海外とのことで、ビッグデータを元にした分析で会員のニーズに最大限応えている。

日本企業による
ネット配信サービスの戦略

 日本企業による定額制動画配信サービスはdtv、Hulu、ユーネクスト。アマゾンプライムビデオやNetflixとは異なり、こちらは作品本数などもしっかり公表している。

 国内最大のシェアを誇るdtvは、12万本以上にのぼる作品を放送しており、会員数は2018年6月時点で400万人。実写映画製作に参入し、2018年公開の「パンク侍、斬られて候」を手掛けるなど、オリジナルコンテンツの製作に意欲を見せている。

 日テレ系列のHuluは、放送作品数が5万本以上。有料会員は約172万人で今年度の目標180万人が視野に入ってきた。オリジナル番組制作、映画配信、地上波見逃し配信で人気を得ている。また、オートバイレース「MotoGP」中継で独自アングルに切り替えができる機能を追加するなど、より細かいニーズを持つ顧客層の獲得を目指す。

 U-NEXTの作品数は約13万本とされており、そのうち見放題の作品は約8本。宝島社が主催する『このミステリーがすごい!』大賞では、関西テレビと共同で「U-NEXT・カンテレ賞」を新設。受賞作品はドラマ化され、関西テレビで地上波放送もされる予定だ。

 さらにMリーグ(プロ麻雀リーグ)参戦で同リーグの中継をするなど既成コンテンツの配信だけではなく、オリジナルコンテンツやサービスで差別化をはかる。

 ネット動画配信サービス業界では、他にもFacebook、Apple、ディズニーといった巨大資本による新興勢力の台頭も目立つ。放送作品数でいえば、日本企業によるサービスのほうがお得感はあるが、今後の勢力図は、オリジナルコンテンツの制作力と、既存メディア(ケーブルTV、専門チャンネル、スポーツ中継など)の取り込みが鍵になっていくだろう。

 そうなると、資金力とブランド力が強力なNetflixやアマゾンが、今後も市場を牽引していくことになりそうだが、このまま2大巨頭の拮抗状態で推移していくのか、新興勢力が風穴を開けるのか、大いに注目したい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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